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私の労働は私の価値を下げたのか


機能不全の中流家庭から幸せな貧困家庭へ


父は理科大大学院卒。
母は東京音大ピアノ科卒。
幼稚園から私立に通い、本を沢山読み塾に行く。
リーガルのローファーを履いて、習い事帰りにいつも母とよるスーパーは伊勢丹のデパ地下だ。
ずいぶん、お金に恵まれた子供だったと思う。
ずいぶん、豊かな素敵な家に生まれたと思う。

よく言われた。
「良いな」
「素敵ね」
「感謝しないと」
同級生からもママ友からも先生からも。

勉強も出来た。いつも笑顔で褒められた。グループには属さず、スクールカーストの下から上まで全員と平等に仲良くした。イジメはしないしされないしさせない。グループの輪の中心人物。部活は文武両道。生徒会に所属。学級委員もして帰りはプリクラを撮ってスタバで勉強。

誰が想像しただろう。
そんな子の家庭が、父親の異常な暴力性によって支配されていると。

両親が離婚したのは、中学2年の冬だった。


わたしがしっかりすれば良い

母は体が弱く、更に父からの肉体、精神的な暴力もあり、それはそれは弱々しかった。アトピーは酷く、痩せ細り、包帯でいつもぐるぐるで。

それでも私や弟を父から守り、勇気をだしてシングルとして生活しだした。母の変わりようは目覚しかった。体重は健康的に増え、ピアノの先生として快活で明るく、元気に働いていた。
本当に自慢の母だった。
愛情を持って子育てしてくれた。
大好きでたまらなかった。

だから、大きくなるにつれてどんどん思った。
私がお金を稼がなきゃ。
ママに楽をさせてあげたい。
私がしっかりしなきゃ。
今度は私が、ママを守るんだって。


女という体の価値

私は知っていた。
自分の体を触りたがる男という存在がいることを。それは小学生の頃から知っていた。幾度となく性犯罪にもあったし不審者にもあってきた。派手な見た目では無く人好きで警戒心の薄い私は、よくそういうターゲットにされた。

大人になってからジェンダーやフェミニズムを学んだ恩師に言われた。
「分かるのよ。性の歯車がどこか普通の人と違う子って。だからすぐに分かった、あなたの事も。なんかあるなって。纏う雰囲気や、人に嫌われたくないから強く出られない性格や、相手を信じて2人きりになりやすい所や、そういうものを、犯罪者たちは、それこそ私なんかよりよっぽど嗅ぎ付ける。」
言う通りだと思った。
それくらい私は、性に関しては子供の頃から狂っていた。何度も警察に行った。先生に言った。それでも、私の被害の全部ではなかった。

その代わり私は知った。
「私の体には価値があるんだ」と。
特別美人なわけじゃないけど愛嬌が男をくすぐるのだと。18歳。高校を卒業した大学1年生のピカピカの私は、吉原にいた。


危険で差別されるから高給なのか

別の記事で、私は夜職というものをしていた中で受けた差別について書いている。それはそれは、多くの人に傷つけられたと思う。その中には同性もいた。性病検査なんて一度もしたことのない奴から、汚い、病気の元だと罵られた。警察官からこんな仕事をしてるからと言われた。盗撮やレイプはAVを真似た輩がうじゃうじゃといた。綺麗に遊ぶお客さんだと思っていたらストーカーになった。刃物を出されたこともある。色恋営業なんてしなくても、親がガンだなんて嘘をつかなくても、危ない目や怖い目には死ぬほどあった。

でもその体験を吐き出すといつも言われた。
「その分楽して稼いでんだろ」
そうかじゃあやってみろよと返した所で、相手はネットの闇に笑いながら消えていった。


セックスワークは仕事です

本当に、当たり前のことがただ、当たり前になって欲しいと願う。私は、私たちは、働いているだけだ。セックスワークは、私にとってセーフティネットで、私にとって大切な思い出もある仕事の1つだった。でもだから現状の日本の風俗業界がクリーンで誰しもに勧められて、貧困のセーフティネットになり得る仕事なわけじゃない。

セックスワークisワークという言葉の誤用が広まって、だいぶインターネットでは叩かれた。現状を容認しキラキラした言葉にするんじゃないと。

そうじゃない。
少しはネットとSNSをやめて本を読め。
アムネスティ・インターナショナルを知ってから言ってくれ。キラキラした言葉になんて変えたくない変えてたまるかと思うから言うんだ。

「セックスワークは仕事です」と。
股を開けば寝てても稼げる、そんな仕事がある訳ないだろうと。暴力と差別に晒されるから高給なんじゃないと。風俗嬢はエイリアンじゃない。あなたのすぐ横で生きている、普通の1人の人間なのだと。

私がしてきた事は罪じゃない。
税金だって払ってた。
だから隠さない。
隠したくない。

隠させない、カミングアウトなんて必要ない、そんな社会を望みます。

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