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罪と罰、ときどき少女漫画

罪と罰の上巻を読み終えた。後半、ラズミーヒンのかわいいうざめのお節介が炸裂したあたりから登場人物が一気に増え、その分話も展開していくのでおもしろくてするするするーと読み進めた。

本を読んでいると、その本の文章のリズムに自分の読むリズムが合ってくる瞬間がある。本が自分に馴染み、読むのがたのしくてどんどん読み進めてしまうみたいな状態で、罪と罰もそこに至ったようで、ラスコーリニコフのうるさい心の声にさえ同調してふんふんと読み、あー先が!読みたい!となっている。
それなのに、買っておいた下巻を、盆に帰った時に実家に置いてきてしまったことに気づく。はやく取りに行かねば……

そんな日に限って、打ち合わせでバスと電車の移動が多く、そういえばゆいなさんが言っていた漫画があったなぁと、「涙雨とセレナーデ」を読むことにする。3巻くらいまで一気に読み、孝明様のかっこいさにほくほくする、打ち合わせの合間。連休明けはどうしたって仕事モードにならないのでちょうどいい。

「涙雨とセレナーデ」の明治の風景で「昭和ファンファーレ」を思い出し(なぜ昭和)、タイムスリップで「アシガール」を思い出し、取り替えっこで「とりかえばや」を思い出すというように、次々に漫画を思い出し、どれも最新刊を読んでいないことに気づいてしまい、定期的に訪れる少女漫画沼にはまりそうな予感。

切り替えて、帰りのバスでは「アカシアは花咲く」を読む。
いつかの日本翻訳大賞に選ばれた作品なので、文章が美しいのだろうなとは思っていたけど、読んでいると想像以上で、言葉が温度や色を持っているような描写に、すぅと静かにわたしの心がうずく感覚がある。

モンタージュという、主人公や明確なストーリーのない小説のようなもので、人なのか群衆なのか植物なのか空なのか分からない誰かの視点を気づけば想像して読むという、新しい読書体験をしている。
作者のデボラ・フォーゲルはナチスのユダヤ人一掃作戦で家族と共に亡くなっている。
それを知ると、余計にいろいろなことを想像してしまうな。

その日、街路が空を映した。空は灰色で温かい。空が灰色のとき、街路はいつも疲弊しながら甘い。灰色の温かい海のように。
ー『アカシアは花咲く』アザレアの花屋  街路と空 抜粋

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