Zoomについて(メモ)

昨日ロイター通信が報道したところによると、世界的パンデミック下において、米国の億万長者たちの資産が約10%増加したことが、米シンクタンクIPSの調査により明らかにされたという。

アマゾンのジェフ・ベゾスや、テスラのイーロン・マスク、新進のZoom Video Communicationsのエリック・ユアンらの名前が挙げられ、今年の1月1日から4月10日にかけて、彼らを含む8人のごく限られたトップの純資産が合計10億ドル増加したそうだ。
その一方で、アメリカでの新規失業保険申請は、過去5週間で約2650万件に上るらしく、専門家が格差について苦言を呈している。

ここで注目すべきは、やはりZoomだろう。
格差社会どうこう、アフターコロナどうこうという話には、あまり興味がない。
"超々"格差社会はもはや歯止めが効かず、必ず想像以上に(庶民にとって)悲惨な構造を呈すると確信しているし、アフターコロナにおいては、全人類が資本力とワクチンの摂取有無+マイクロチップで、人権から買い物の自由まで全て管理されるのではないかと懸念している。
だから、そういう暗いことは今は話さない。

Zoomが提供するサービスについては既に多くの人にとって明らかなことであるから、ことさら説明する必要はないだろう。
私が興味を持ったのは、Zoomがどのように今日の結果を立ち上げたか、だ。

Zoomはシリコンバレーのスタートアップから始まり、昨年末からのコロナウイルスの流行による急激な需要拡大に伴い、現在では時価総額5兆円に達した。
この会社のアイデアは、創業者であるエリック・ユアンの個人的な空想からはじまった。

それは非常にシンプルなストーリーだ。
1987年、中国の大学生だったユアンは、彼の恋人と会うために片道10時間かけなければならなかった。
その経験が、彼にビデオ会議に特化したビジネスの着想を与えた。

彼はいつか自分の手のひらのデバイスからワンクリックで彼女に会える(visit)ようになることを確信していて、そしてそれが個人の妄想を越えて、社会全体の利益に繋がると考えていた。
その後、日本で働いていた際にビル・ゲイツの講演(1994年)を聴いたユアンは、当時のマイクロソフトが目指すインターネットの新しい時代が、自分の夢と重なっていることを悟ると、すぐに渡米を決意する。

8度もビザの申請を拒否されたが、そんなことでは彼の野心は止められるはずもなく、1997年にアメリカへ渡る。
彼はまずカリフォルニアでWebexに参加し、最初のビデオ会議サービスの開発を始める。
その後、Webexは2007年にシスコ(現在Zoomも拠点を置くカリフォルニア州サンノゼの世界最大手のコンピューターネットワークシステムの開発販売会社)に買収される。
そこでユアンは確かな地位を手にする。
しかし、Webexのサービスは当時さまざまな問題を抱え、伸び悩む。

現状では顧客の求めるサービスに到達できないと考えたユアンは2011年にシスコを去り、もう一度原点に立ち返ったビデオコミュニケーションのアイデアの実現を目指す。
彼の信念を知る多くの仲間が出資したが、ベンチャーキャピタル(急速な成長の見込めるスタートアップなどに資金提供する投資会社のこと)は、懐疑的で、注目していなかった。
既にビデオ会議ツールはSkype(マイクロソフト)やGoogle、シスコの提供するサービスが市場を制しており、その他の有力なスタートアップも控えていたからだ。

しかし、Zoomは、さまざまなデバイスの識別・対応力とインターネット回線の強弱に左右されないパフォーマンス、低価格で、ライバルに差をつけ始める。
そして、ユアンの抜かりない戦略で、大企業への売り込みを徹底し、さらに多くの資金を獲得した。
ユアンは、Zoomの活用による新しいビジネスモデルが、どれだけの潜在市場を呼び覚ますかを、的確にプレゼンしていったのだろう。
テクノロジーとしては十分に発達していても、それを大々的に活かすことをZoom以外はあまり徹底していなかったのかもしれない。
それが、今回の世界規模の非常事態で、その可能性を最大限に発揮し、Zoomは一躍時代の寵児となったわけだ。

当然の展開として、Zoomは各方面から、そのセキュリティの脆弱性を指摘され、イーロン・マスク率いるSpaceXやNASAは3月中に使用を禁止したそうだ。
ハッカーに乱入される事例や、中国に情報が流れている可能性を否定できないからだ。
(現在のすべてのニュースからはアメリカ対中国の構図が連想ゲーム的に浮かび上がるようになっている。)
推測するに、多くの大企業は、自社も提供できる基本的なサービスにおいて、巨体ゆえの慎重さで、新鋭に出し抜かれたことを妬んでいるだろう。
しかし、Zoomの脆弱性や裏側の煩雑さも過小評価は出来ないと思う。
利用者はこの3ヶ月で、1000万人から2億人に増えたらしいから、隠していた諸々が噴出するのも仕方ない。

いろいろと書いたが、これらは今日なんとなくZoomに興味を持った私が、Eric Yuanに関するいくつかのインタビュー記事を読んで、"自分のため"にまとめただけだ。
信頼性はソースに劣り、想像も入っているので、あくまで参考資料による二次創作くらいに読んでいただきたい。
決して正しい情報として信用しないように。
閲覧した記事は文末に示す。

最後に、私がZoomについて個人的に思うことを書きたい。
それはユアンのアイデア着想まで遡る。
彼が恋人との遠距離恋愛を、デバイス上でのスムーズな訪問でさらに豊かにしようとしたのは、当時彼が学んでいたことからのバイアスや、彼の現実的行動力から非常に合理的に理解できる。
では、私ならどうするかというと、「どこでもドア欲しいー」くらいは言うかもしれないが、デバイスの中でビデオ通話によって会えばいいじゃん!とは考えない。
きっと私の頭に真っ先に思い浮かぶのは、手紙だ。
90年代生まれなのにひどく前時代的かもしれない。
しかし、ネオ・デジタルネイティブと、俗に言われる私らの世代では、意外と自然なことかもしれない。
いや、私個人の方向性を語るのに周囲まで巻き込んでは申し訳ないからやめておこう。

ていうか、私たちは、当たり前にユアンたちのアイデアが具現化され、普及しきった世界に育ってきたから、わざわざ自分で考える必要もなかったのだ。
むしろめずらしいのは手紙であり、手書きである。
Zoomは、顔の表情とボディランゲージが人間のコミュニケーションの70%を支配しているという根拠を強調する。
では、その70%を全く失った手紙は、その空白にどんな70%が入り込んでくるのだろう。

書く言葉の力、読む心の可能性は、私をZoomする。

以下、参考記事
https://www.forbes.com/sites/alexkonrad/2019/04/19/zoom-zoom-zoom-the-exclusive-inside-story-of-the-new-billionaire-behind-techs-hottest-ipo/#489e30d84af1

https://www.cnbc.com/2019/04/18/zoom-ipo-bill-gates-speech-inspired-founder-to-move-to-us.html

https://jp.mobile.reuters.com/article/amp/idJPKCN2252Y8?taid=5ea1fb3ae3c40700015e9a6f&utm_campaign=trueAnthem%3A%20Trending%20Content&utm_medium=trueAnthem&utm_source=twitter&__twitter_impression=true

https://medium.com/thrive-global/the-inspiring-backstory-of-eric-s-yuan-founder-and-ceo-of-zoom-98b7fab8cacc

https://www.businessinsider.com/meet-zoom-billionaire-eric-yuan-career-net-worth-life