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維新の志から生まれる信頼と行動の連鎖

挑戦を支える全国各地の皆様に光を当てるSupporter Interview。今回のインタビュー対象は山口県の萩市にてアイデアをカタチにする支援を手掛ける和田 大毅さん。コミュニティの価値と支援者の在り方について伺いました。


── 和田さんの現在の取り組みについてお聞かせください。

本業としては、山口県萩市役所の農林水産部林政課で働いています。


── 中々に聞かない課ですね。

具体的には山林の管理運営に関わるお仕事ですね。どうやって間伐していくべきなのか、どうやって植生すべきなのかといったことをお金を絡めて検討しています。


── 本業は、という枕詞があったということは、他に何かお取り組みをされていますか?

アイデアをカタチにする支援を萩を中心に手掛けています。もちろん、萩に住んでいる皆様だけでなく、萩を訪れてくださる皆様も対象に。


── 本業の取り組みとは全く関係がないように思えますが、どうしてその取り組みを始めらようと思いましたか?

実は市役所に入る前に周南で出会ったStartupWeeeknd(以下SW)の影響が大きいです。市役所に入ったのは2020年4月だったんですが、SW周南はその3月だったんです。


和田さんに大きな影響を与えたSW周南


── ゼロイチという市役所と対極にいるスタートアップの始まりにどうして興味を?

当時、公務員の試験勉強をするために周南市立徳山駅前図書館に毎日のように足を運んでいたんです。そして無事に試験に受かった後、3月の有休消化中にふと思ったんです。このエネルギーと時間に溢れているタイミングで何かやりたいと。そんな時に図書館でSW周南のチラシが目に留まって参加の意思を固めました。


── 何かやりたい、と思った時にビジネスに興味関心が向く人は中々に稀かと思います(笑)

実は母親が個人事業主で、5人ぐらいの小さな店舗を営んでいたんです。なので元々ビジネスには興味関心があって、それで飛び込みました(笑)


── 多くの人は、そういったスタートアップ体験の場に飛び込んで「楽しかった!」「気付き学びが多かった!」「新しい仲間が出来た!」とある一定の満足を得て、それで立ち止まる方も多いかと思います。どうして和田さんは、萩でも同じ取り組みを始めようと思われました?

人に惹かれたからです。


── どんな人が、その場には集っていましたか?

何歳になってもわくわくを忘れず、世の中をよくしよう、新しいものを生み出していこうという、情熱溢れる素敵な方たちばっかりだったんです。


SWを通じて情熱溢れる方々と出会った和田さん


── もう少し詳しく聞かせていただけますか?

市役所に行く前に勤めていた大きな会社や、それ以前の学校は、どんな社会の役に立っているのか、世の中に立っているのかが分かり辛かったんです。加えて、エネルギーが失われるようなルールや規則がたくさんあって、人からモチベーションを奪うような場所でした。三角形のピラミッドの中に押し込められているような、そんな空気を感じていたんです。


── けれども、この場所は違ったと。

スタートアップに興味がある!起業にチャレンジしたい!そんな想いを持った人たちは、例え60歳であったとしても、もしそこまでいかなくても年上であったとしても、上下ではなくて、横のフラットな関係性で接してくれる。持っている知識は惜しみもなく全て教えるよ!そんな姿勢だったんです。こんな人たちが世の中にいるんだというところに感動を覚えました。


── そして参加することで、和田さんは他に何を感じ取られましたか?

わくわくです(笑)


── 特に何に対してわくわくされました?

自分が伝えたアイデアを元にチームが出来上がったこともあり、この週末で何が生まれるんだろう。ここから何が幕を開けるんあろうと期待で胸がいっぱいでした。と同時に、自分はこれまで会社の中でプレイヤーとして上司から指示を受ける立場であったにも関わらず、自分がリーダーになってしまったことで恐怖も覚えていましたが。日曜日の夕方には審査員の皆様にビジネスプランを仕上げてピッチしなきゃいけない、と(笑)


指示を受ける立場から、リーダーとして前に立つ立場へ


── 挑戦を通じて数多のものを持ち帰られたこと、心から嬉しく思います。その感動からプレイヤーだけではなく支援側に回ろうと思われた、他の理由や想いはお持ちでしょうか?

やっぱり、恩返しという感覚です。こんなにもいい経験をさせてもらった。自分の人生の分岐点になるほどの、価値観が塗り替わるほどのインパクトを受けた。であるからこそ、自分と同じような興味関心を持っている方々の力になりたいし、何かお届けしたいという気持ちになったんです。


── 価値観が塗り替わる。

人生の選択肢の中に「就職」だけじゃなくて「起業」という選択肢が加わることとか、心の中に普段は押し込めている想いを前に出していいんだ、それをビジネスという形で実現できるんだ。そして自分が前に立つことで仲間が表れて、そしてアイデアをカタチにすることで自分も仲間を幸せになっていくんだ、という感覚が生まれたんです。


── 場の持つ「力」を感じられたというわけですね。実際に、場を取り持つ側に萩で回っていて、そんなインパクトは生まれましたか?

自分で言うのもなんですが、実際に人の人生にプラスの影響を与えることが出来たと感じています。例えば、萩で二度目に開催した際に一緒に運営をしてくれた女子大生の方がいらっしゃるんですが、ちょうど彼女が人生の諸々で落ち込んでいる時期に参加してくれたんですね。


── そして参加することで…?

彼女はこう伝えてくれたんです。信用できる大人が本当にいるんだ。仲間や味方になってくれる人がいるんだと。それからというもの、明るくなって落ち込みが消えて、元気になっていく姿を垣間見ました。そしてその証であるかのように、次は友達に経験を語って運営に誘ってくれたんです。こうやって人の想いや経験が連鎖することで、コミュニティが生まれてきたと感じています。


経験と想いの連鎖から生まれ始めたコミュニティ


── 想いの連鎖からコミュニティが育ってきた。とても素敵ですね。そんなコミュニティはどんな価値を持っていると和田さんは考えていますか?

前進させてくれる仲間が出来ることだと感じています。何か新しいことを始める時って、どうしても力が足りなくて、分からないことも多くて、一人で挑戦すると必ずつまづくじゃないですか。けれども、コミュニティを通じて仲間になっていれば、味方が増えていれば、お互いに支え合って、気軽に相談し合って、自然と前進できるような、そんな感覚があるんです。


── そんなコミュニティを萩で育むことにどんな意義があるとお考えでしょうか?

「志」に尽きると思います。


── 「志」を噛み砕いて表現していただけますか?

日本史を学ばれた方はご存じかと思うのですが、萩は明治維新の起点の場所なんです。三角州に挟まれて3×3kmの本当に本当に小さいところであるにも関わらず。そんな辺境から日本の革命が始まった歴史があるからこそ、その場所に集い、行動を起こすことで機運をより高められるんじゃないかと思っているんです。


── 「諸君、狂いたまえ」の吉田松陰ですね。

そうなんです。なので萩でアイデアをカタチにする時は松下村塾なんです。有名な場所で観光客の方々もたくさんいらっしゃる場所ではあるものの、その中に入ってピッチが出来るなんて機会は中々になくて、お越しくださった皆様から「感動した!」という声をたくさんいただいています。都市部に行かなくても、辺境の地であったとしても、変化変革が始まるんだよと多くの人に伝えられれば嬉しいです。


松下村塾でピッチが出来るSW萩


── 萩を起業の聖地に、というわけですね。そんな風にしてアイデアをカタチにする支援をされている和田さん自身は、今後にどんな挑戦をしたいと考えていますか?

実は、支援を通じて自分のやりたいことが見えてきたんです。今後は、本業を頑張りつつ、健康に関するサポートを進めたいなと思っています。


── 「健康」が和田さんにとってのキーワード。

市役所に勤める前に、生活習慣が悪くって不健康で体重が10kgも増えちゃったことがあったんです。その時の反省もあって、食事・睡眠・運動を常日頃から心掛けるようになったんです。その中でも特に食事を大事にしていて、日々のパフォーマンスや長期的な体の状態に多大に影響すると感じています。だからこそ、「食品」で何か出来ないかなと。


── 何か新しい健康食品の準備をされていらっしゃるのでしょうか?

実はレトルトの野菜スープを、それこそSWでご一緒した方と一緒に考案中なんです。今でこそ試験中なんですが、将来的には健康を気に掛ける方々に向けてお届けできればと思っています。


── 健康に対する食事を通じた価値提供というと様々なものがあるかと思うのですが、どうしてレトルトの野菜スープを選んだのですか?

やっぱり、萩野菜がある一定のブランドを築いていることと、レトルトにして保存食にすることで、より多くの課題感を持つ人に届けられるんじゃないかと考えたんです。


萩野菜を用いたレトルトの野菜スープ


── 確かに。レトルトの消費期限は一年以上のものが多いですからね。ちなみにそうやってアイデアを支援するだけでなく、実際にカタチにする側に回った和田さんは、事業開発を進める際に何に気を付けるべきと考えていらっしゃいますか?

仲間が大事だと考えています。


── その心は?

繰り返しの言葉になっちゃうかもですが、やっぱり何か新しいことを始めようと思うと、自分一人じゃ足りないんです。スキルも、時間も、何もかも。だからこそ、想いに共感してくれる人とチームを組んで進んでいくことが大切だと感じています。もちろん、人が増えれば増えるほど、トラブルの種も増えていきますが(笑)


── それでは、仲間が増えると起こりがちな衝突や調整は、どうやってクリアしていますか?

正解不正解を最初から自分の中で設けるんじゃなくて、まずは相手の言葉に耳を傾ける、ということが大切と感じています。相手はどうしてこの発言をしているんだろう?背景にはいったい何があるんだろう?それらを理解できるように聞き続けること。聞き続けて言葉を深掘りしていくこと。もし、背景も含めて納得できるものであれば受け入れて、筋が通らなければ相手に断りを入れて折れて貰う。お互いに良いものを世に届けたくてチームを組んでいるので、もしそれでちょっと不穏な空気を感じたとしても、すぐに元通りなので大丈夫です。


── 目指す未来が一緒の仲間だからこそ、ですね。それでは逆に、アイデアをカタチにすることを支える側は何を心掛けるべきでしょうか?

これを言ったら、実際に挑戦している人から顰蹙を買うかもしれませんが、「その気にさせる」ですね(笑)


── そそのかす、ということでしょうか?(笑)

当人が動き出す環境を支援者側も一緒に作り出す、という表現の方が近いかもしれません。それいいじゃん!面白いね!こんな人がいるから、紹介するよ!一緒にやろうよ!そんなイメージです。やっぱり、最初の一歩って重いじゃないですか。どれだけ面白いアイデアだと自分では思っていても、そのアイデア実現に向けて歩み出すことはとっても難しいじゃないですか。


── ダイエットをやるぞ!って決意しても、ダイエットが始まらのと同じですね(笑)

だからこそ、その最初の足取りを少しでも軽くするために、支援する側は一緒に動くことが欠かせないと思うんです。ちょっと脱線するかもしれませんが、自分は山本五十六の言葉が大好きなんです。 「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。 話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。」


── 確か続きは、「やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」

それです(笑)もちろん、支援する側は行動を起こされる皆様の管理職ではないので、ちょっとニュアンスは違うことは百も承知ですが、その最初の足取りがまだ動いていない皆様には「一緒にやろうよ!」と動いてその姿を見せることで、そしてそこから行動が始まることで、人は大きく大きく変わっていくと思うんです。少し話は戻ってしまうんですが、コミュニティの価値は「やってみせる人がいること、そして任せて信頼してくれる人がいること」と、言い換えることが出来るかもしれません。


── 人を動かし、そして未来を変えるエッセンスがコミュニティの中には詰め込まれていると感じずにはいられません。ちなみに和田さんは、そんなコミュニティの成長度合いを測る物差しを持っていらっしゃいますか?

続きは下記よりお読みください。


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