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僕の家の話

TBSドラマ「俺の家の話」が面白い。クドカン×長瀬という鉄板コンビが外すわけないのだが、安定感とテンポの速さが相まって今まで見たことがないようなドラマになっている。テンポが速いから面白いというわけではないが、面白いドラマというのは大体テンポが良い。「これは最終回らへんで回収させる伏線かなー」と思っていた部分が10分後には回収されたりと、前へ前へ進む力がすごい。

能、介護、プロレス、学習障害といった交わることが想像できないようなテーマを扱っているのもいい。今週が第5話ですか。今から見始めたいという人はネタバレサイトかどこかで情報を集めて今週から見始めてください。必要であれば僕も解説します。

「俺の家の話」ついでに「僕の家の話」をしようか。

僕は兵庫県姫路市に生まれ、18歳まで実家に住んでいた。両親と5歳上の姉と4人暮らし。家の周りにある娯楽はコンビニくらい。最寄りの駅は徒歩1時間。とにかく田舎で、周りに何もない集合住宅地で育った。

姫路と聞くと、治安の悪い場所だとイメージする方が多いだろう。ヤクザも多い。出身者としても思うが最低最悪の場所だ。神戸には山口組の本部があるが、姫路には山口組系列のヤクザ組織があって、傘下である松本組の7代目組長が僕の父だ。毎日のように学校には黒い車に乗った黒い服の男が迎えに来てくれていたし、家に帰ると小指がない下っ端に宿題を代わりにやらせ、僕は友達と町民グランドで野球をしていた。

そんな生活環境の反動から、僕は両親の反対を押し切り、大阪芸術大学へと進み、ヤクザの町を離れて大阪で一人暮らしを始めた。ちなみに上の段落に書いていることはほとんど嘘だ。「治安の悪い場所」だということだけは事実である。中学生に土下座しないといけないほどなのだから。

本当のことをいうと、ウチの両親は福祉施設を自分で立ち上げ、自閉症の障害者を専門にデイケアサービスのようなことをしている。
朝になると、一軒家を改造した施設に自閉症の人たちが保護者と一緒にやってきて、その人たちに軽作業を昼過ぎまでしてもらい、時には仕事をせずにみんなで外へ散歩に行ったりして、夕方になると彼らを家に帰すというのが1日の流れだ。

言わば両親は、そういった障害のある方たちを預かって、ある程度までの自立支援を行うと同時に、その人たちの両親に休む時間を作ってもらう、ということを仕事にしている。

驚くべきことに、小学校1年生までは僕たち家族はその仕事場に住んでいた。作業所兼自宅というわけだ。

だから小学校から帰ると、家にはスタッフの方々や障害を持った方がたくさんいて、そんな中で友達を呼んでゲームをして遊ぶということをしていた。

家に来た友達はそんな僕の家庭環境を少し不気味に思っていたのではないだろうか。家の中はまさにジャングル状態。障害の重い人はろくに喋ることができないし、突然暴れ出したりする。その特殊さから、当時はいじめられてもおかしくなかったと思うのだが、いじめられたという経験はほとんどない。今思うと、そうならなかったのは僕の両親が突き抜けて明るい性格だったからだろう。

「あいつのお父さんむちゃくちゃ面白い」と思われるような、参観日や運動会になると保護者の中で存在感を出すおっさんが、学年に一人はいなかっただろうか。それがウチの父親だ。彼は、僕の友達を笑わせるためにケツを出すことも厭わないし、僕が学年から選抜されて姫路市の陸上競技大会に出ることになった日も、彼はなぜかランニングウェアに着替えて僕より先に現地入りし、一般男性部門で5000メートル走に出場し、入賞していた。

これは誰にも信じてもらえないが、大阪で飲んでいて終電をなくしたので、大阪から姫路まで走って帰ったというエピソードもある。信じられないだろうが、息子としての立場から言わせてもらうとあの親父なら全然あり得る話だ。

母親もぶっ飛んでいる。親父と違ってテンションが高いというわけではないが、「こうと決めたら絶対にこう」という頑固さがとにかくすごい。例えば15年ほど前に、体重が増えたことを理由に毎日ウォーキングを始めたのだが、それはなんと今もなお続いている。

今でこそミニマリストという生き方がトレンドになっているが、とんでもない。我が家には平成の初期から家に無駄なものが一つもない。母親はミステリー小説が好きなのだが、読み終わった本はもう彼女の中で邪魔になるのですぐに捨ててしまう。売りに出したり、僕にあげたりはしない。「無駄な物が家にある」という事実がストレスになるため、すぐにでも捨てたくなるのだ。
実家に帰るたびに物が減っているから、そのうち築20年の一軒家も売りに出すのではないかと睨んでいる。

姉とは5つも離れているということもあって、正直あまり仲は良くない。鎌倉女子になるという夢を捨てきれず、30歳目前にして宝塚市から鎌倉へと引越しを決めた時は我々家族を驚かしたが、今はのんびりと生活しているようだ。

そんな家族の下で育ったものだから、両親が特殊な仕事をしていても「普通の生活」ができたのかもしれない。序盤でヤクザを話題に出したが、障害者を扱う仕事をしている人ってある意味「反社」じゃないだろうか。結局、自分は健常者なものだから、「自分とは違う人」を僕たちは見て見ぬ振りしがちだ。偽善だとしても、そこから目を背けずに、その人たちやその人の家族のために働いている両親を、僕は少し尊敬していたりする。

ざっくりだが、僕の家族はこんな感じ。ちなみにヘッダーの画像は2017年に家族で北海道旅行をしたときのものだ。札幌のススキノ近くのホテルに泊まったのだが、ホテル近辺のどこにでもあるような居酒屋で適当に飯を食って、さあこれからだという時に他の3人は女子バレーをテレビ観戦するためにホテルに戻ってしまった。夜の札幌の街を家族で散策することもなく、まさかの18時50分ホテル帰還。僕は一人でラーメンを食べた。

【今週観た映画・読んだ本】

今年の目標は週に映画2本観ること、本を1冊読むことです。

映画。

「監督失格」

あるAV男優とAV女優のドキュメンタリー映画。生々しかったです。「死体の第一発見者の、発見した瞬間の顔」というのを初めて見ました。

「ザ・エレクトリカルパレーズ」

お笑いコンビ、ニューヨークのYouTubeチャンネル内で公開されているドキュメンタリー映画。東京NSC17期生の中で突如として生まれた「エレパレ」という団体。その集団をセックスサークルだと言う者もいれば、お笑いに人生を掛けた熱い奴らだと言う者もいる。エレパレとは一体なんだったのか、10年経ったいま真相を追求するという内容。
おもしろかった。ニューヨークが完全に聞き役に回っているところに本気度を感じた。

本。

「僕がコントや演劇のために考えていること」

お笑い界のみならずエンタメ界の生きる伝説とも言える、ラーメンズ小林賢太郎さんが書いた本。彼の作品に対する考え方が細かく書かれており、プロとしての心構えみたいなものはよく分かった。僕はラーメンズのコントが元々好きじゃなかったので、これを読んだ上でまた新たに何本かYouTubeで見てみた。。。ごめんなさい!あんまり笑えなかった!

サポートしていただいたお金を使って何かしら体験し、ここに書きたいと思います。