見出し画像

国産紅茶グランプリ3年連続受賞!紅茶が広げる狭山茶の可能性 | 埼玉県入間市

古くから日本で飲まれてきたお茶。日本にはいくつものお茶の生産地があり、それぞれブランド化され販売されています。そんなブランドのひとつであり、私の地元のお茶でもある『狭山茶』。私自身、幼い頃からよく飲んでおり、馴染みのあるお茶です。市内を歩けば、茶畑が目に飛び込んでくるような場所。そんな狭山茶の魅力とこれからのチャレンジをお伝えします。

「お茶を飲んでいる時間を心温まる時間に」という想いを持ちながら、狭山茶を生産している農家「清水園製茶工場」後継ぎの清水夫婦にお話を聞いてきました。

古くからの歴史を持つ清水園製茶工場

清水園製茶工場が位置するのは埼玉県入間市藤沢。地元ということもあり、これまで何度となく歩いた道を通り、清水園製茶工場に向かいます。店の目の前には茶畑があり、お茶の生産地だということが目からも感じられる場所です。

店に入ると、さまざまな種類のお茶が並んでおり、かわいいパッケージが目を引きます。
あいさつをさせていただくと、とても明るくフランクに対応してくださり、はじめましての感覚がなく一気に緊張が解けました。

「清水園製茶工場についてお伺いしてもいいですか?」と伝えると、とても丁寧に詳しく教えてくださいました。

「清水園製茶工場の歴史は古くて。江戸時代の中期からお茶など色々な農業を始めて、それが今まで続いています。私たちは10年前くらいから後継ぎとして茶業をやるようになったんです。それと同じくして、紅茶づくりも始めました。なので、今は煎茶と紅茶、あとティーバックの加工事業もやっています。」

紅茶への新しいチャレンジ

取材をさせていただく前から紅茶について気になっていたので、話題が出たところで、すかさず紅茶を始めた理由を確認します。

「紅茶づくりを始めた理由は、単純に人手が増えたからです。元々先代のときから紅茶づくりをやりたいと思っていたのですが、人手が足りなかったためできていなかったんです。私たちが後継ぎとして茶業に関わるようになったことで、紅茶づくりに着手できるようになりました。」

これまで狭山茶をずっと飲んできた一消費者として、紅茶の印象は全くなかったので、元々やりたいと思っていたという話を聞いて驚きました。そこでなぜ紅茶なのか聞くと、とても興味深い話をしてくれました。

「日本の紅茶の歴史って本当に古くて、九州を中心に広まったのが始まりです。だけど売れなくなった時期があり、九州も煎茶に切り替えたことがあるんですね。狭山茶も紅茶を作ってはいたけど、九州が中心でやってたから、こっちの方までは美味しい紅茶を作る技術がなかったんです、ここ最近まで。そういう背景があるから、埼玉の産地の中で紅茶に力を入れている農家って何件もなくて。だから、特徴を出して差別化していくためには強みになるんじゃないかなと思って紅茶を始めたんです。あとはここ10年くらいお茶の価格の相場が半分くらいになってきているので、付加価値を高め、お客さんに喜んでもらえるものを作りたいと考え、紅茶に力を入れ始めたという背景もありますね。」

賞の受賞

「紅茶でここ3年ぐらいは立て続けにポツポツ評価をされるお茶が出てくるようになりました。」
3、4年前から本格的に紅茶を勉強し始め、国産紅茶グランプリやプレミアムティコンテストに出品するようになり、現在3年連続賞を受賞。2023年は4つの商品で受賞しています。これにより、美味しい紅茶が作れているという自信につながっているそう。

今年受賞した商品は「埼玉夢紅茶むさしかおり628」、「埼玉夢紅茶つゆひかり627」、「埼玉夢紅茶ゆめわかば630」「埼玉夢紅茶つゆひかり619」の4つ。
むさしかおり、つゆひかり、ゆめわかばが品種名。末尾の数字は作った日付けになっています。茶葉の良し悪しは天候に大きく左右されることもあり、今年受賞した紅茶はほとんどが近い日に作ったものとなりました。

私自身、これまで狭山茶=煎茶のイメージを持っていて、紅茶を飲むことも多くはなかったので、紅茶がここまで奥が深いとは思っていませんでした。取材中に入れていただいた紅茶は飲み口がよく、ほんのり甘さを感じる味で、新しい狭山茶の魅力を感じました。


紅茶の特徴

話していく中で、狭山茶に対する想いがあるのはもちろんですが、清水さんの紅茶への熱い想いを感じました。紅茶の特徴についてさらに質問を続けると、紅茶の興味深い側面を教えてくれました。
「紅茶は作りたての時は売らない。半年くらい置かないと味が落ち着かないんです。むしろ1年とか置くと熟成されてバランスがよくなったりする。紅茶って面白いんですよ」

通常の煎茶は鮮度が大事なので、1年経つと品質が落ちてきます。これまで私はお茶と言えば煎茶と思っており、お茶は新茶のいい時期に飲まなきゃという感覚がありました。しかし、紅茶はお酒のように置いておくと美味しくなる可能性を秘めていると聞き、今まで考えていたお茶とは真逆で衝撃を受けました。

この話を受けて、「お話聞いて、もっと紅茶を飲もうと思いました」と伝えると、楽しそうに紅茶の話を続けてくれます。

「狭山茶の紅茶って生産量が少ないし、知名度もそんなに高くないから、興味のない人には伝わりづらいんですね。それでもコアなファンは全国的にいるので、賞を取ることでそのコアなファンの人たちが注目してくれてるんです」

狭山茶の幅を広げる紅茶

煎茶も紅茶も結局は同じ木、同じ茶葉からできるもので、製造方法が違うだけ。

「紅茶では品種の特徴を煎茶と比べて出しやすく、飲み比べしてもわかりやすいので、お客様にも伝えやすい。それにより、ちゃんと品種を押し出して販売できるようになったんです」

品種と狭山茶の違いが分からないでいる私に、「お米と同じと考えるとわかりやすいかもしれません。〇〇産のコシヒカリのイメージです」と教えてくれました。〇〇産のところが『狭山茶』になるということだそう。品種によって味の違いを出せるようになったことで、ただの狭山茶から、「狭山茶x品種」でより狭山茶の魅力を深く訴求できるようになります。


入間市における狭山茶

狭山茶は入間市、狭山市、所沢市と東京の一部地域で作られているお茶のことをさしています。その中でも入間市は狭山茶の主産地。入間市としても、狭山茶は地域の特産品なので、力を入れて取り組んでいる産業です。最近では「美味しい狭山茶大好き条例」を施行したり、茶畑テラス「茶の輪」という一面を茶畑に囲まれたテラスを作るなど、一段と狭山茶を広める活動に取り組んでいます。

入間市では小学校の食育の一環で、工場見学や手もみの実演をしています。 また、T-1グランプリという、お茶の歴史やお茶の入れ方をみんなで競い合って、お茶大使を決めるイベントも行われています。

私が中学生の時には毎年学校行事で茶摘みをしていましたが、現在の食育のような取り組みや、お茶に関したイベントなどはなかったはずです。このような取り組みが進み、地域で狭山茶を身近に感じるきっかけを作っていることは大きな一歩です。

また、入間市在住の漫画家さんがお茶をテーマにした漫画「この恋、茶番につき!?」を連載しています。その漫画家さんに協力してもらい、のぼりやコラボ商品作ったりと関わりを増やしていっているそうです。

狭山茶、そして清水園製茶工場の目指す先

食育や漫画家さんとのコラボなど、少しずつではあるが狭山茶を広める活動は前に進んでいます。

そんななか、清水園製茶工場はこだわりとして、埼玉県の品種で紅茶をつくることに取り組んでいるそう。

「埼玉県で作るわけだし、埼玉県の品種で作りたいという思いを持ってやっています」

続けて、これからのチャレンジについても話してくれました。
「まずはいい商品をつくること。煎茶でも紅茶でもそれが大事です。そのために自分の技術を上げて、時代にあったようなお茶をつくっていかなくちゃいけないと思っています。そして、たくさんの人にやっぱりお茶を飲んでもらう、買ってもらう努力もしなくてはなりません」

まずは何よりも自分たちに何ができるかがいちばん大事だという強い想い。これまでは待っていても売れていたというお茶業界も、ターニングポイントを迎えています。色んな場所に出ていって、買ってもらえるようにする必要があります。

「もちろん狭山茶ブランドを守っていく必要があります。そうしないとただのお茶屋になって、売れなくなってしまいますから」
この言葉には狭山茶を守り広げていくために、いいものを作り続けるという覚悟が滲んでいました。

私自身、地元を出てはじめて、狭山茶は思った以上に日本の中でも知られていないということに気づきました。そして今、10年以上前と比べると明らかに茶畑が減っています。そんな狭山茶の存在を守ることの重要性を考えさせられます。

狭山茶をお茶に見たてて販売している「ちゃばこ」 refer from chabacco.jp

先ほどのT-1グランプリなどの入間市での狭山茶に対する取り組みをはじめ、狭山茶の名前を広げて活動しているのは、若い生産家も頑張っています。

「それぞれのお茶屋さんの特徴を活かして個々がそれぞれ頑張ること。そうやって自分の店の底上げをすることで、結果的に狭山茶が広まっていくんだと思っています」

これからの清水園製茶工場として、そして狭山茶の産地として、あるべき姿を伝えてくれているようでした。

歴史をまとった狭山茶

今回、清水園製茶工場のご夫婦に取材をさせてもらって、狭山茶への想いと、文化や歴史への強い尊敬の念を感じることができました。また、若手の方々の活動をはじめ、入間市の狭山茶を広げようという取り組みのなかにも、狭山茶や茶文化を残したいという想いを見ることができました。

「色は静岡、香りは宇治よ、味は狭山でとどめさす」

これは日本で古くから歌われる茶摘みの歌の一節。静岡茶と宇治茶とともに、狭山茶は日本三大茶とも言われています。そんな歴史のある狭山茶は、これまでの歴史の積み重ねと、清水園をはじめとしたこれからの若手の方々のつくる未来によって再構築されていくはずです。

* * * * * * * * * * 
清水園製茶工場
埼玉県入間市にある狭山茶農家
HP: https://www.umaisayamacha-shimizuen.com/
オンラインショップ:https://shimizuen.thebase.in/
instagram: 清水園製茶工場instagram
* * * * * * * * * * 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?