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【NETFLIXの最強人事戦略】部下が1人でもいる人は必読

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆

〜人事担当者以外の人も読むべき〜

総会員数1億人以上、映画のストリーミング配信やオリジナル・コンテンツの制作などで誰もが知っているNetflix。僕もNetflix会員だ。

Netflixは元々はDVD郵送レンタルというビジネスから始まったのだが、そこからわずか20年で驚異的な業態進化と成長を遂げた。
本書はその脅威的な成長の秘密は型破りな人事制度に支えられたカルチャーにあり、その真髄をNetflixで長年最高人事責任者を務めた著者が語るという内容である。

いわゆる人事論の本であるが、経営者や役員のような立場にある人にしか役に立たないというものではない。たしかに一部人事担当者にしかわからない内容であったり、労働者の横の流動性が低い日本ではあまりピンと来ない話もあるが、むしろ、部下が1人でもいる人であれば得られるものは必ずある。全てのリーダーが必読の組織論である。


〜チーム作りに大事なことはただ一つ〜

著者のいう優れたチームは、これからどこに向かおうとしているのかをメンバー全員が理解している事、その目標に向けてどんな事をしてても到達しようとする事を実践する事が出来るチームである。

本書では、そんな組織を作るための、優秀な人材の揃え方、慣習的な制度の廃止、自由な社内文化の構築方法など、様々な型破りな人事制度が紹介されるのだが、全てに一貫して言えることは、優れたチーム作りに大事な事はただ一つ「正直である」事だ。

例えば、全ての従業員が与えられた業務で最高のパフォーマンスを発揮するには経営陣と従業員の双方向で透明性の保たれたコミュニケーションが必要なのだ。
顧客に最も近い従業員は経営陣の気づかない斬新なアイデアを持っている可能性が高く、それを吸い上げるために経営陣は積極的に従業員から忌憚のない意見や反論を受け入れるような体制にすべきである。
そんな体制や文化を構築するためには経営陣は全ての従業員に対して、裏表なく全ての情報を提供する事が重要だ。経営陣が何かを隠していれば従業員はそれに気づき会社に対して不信感を持つし、噂話や時にはSNSのようなところから誤った情報を得て、会社にとって誤った決断をして不利益を与える事もある。
会社の良い情報だけでなく悪い情報も従業員に正直に広く伝える事で、双方向での信頼感が生まれ円滑なコミュニケーションが生まれるのである。

また、従業員同士の批判的なフィードバックを伝える制度を導入する場合にも、匿名性を廃止した。要するに、従業員同士の"仕事における相手の気になるところ"を実名で言い合う、という事だ。
いかにも揉め事が起きそうだが、社内で陰口を言う文化が無くなり、組織内のコミュニケーションが円滑になったという。
そして、実名で言われた批判に対しては誰もが真摯に受け入れた。誰から言われたかわからないような批判よりも、ハッキリと誰かに言われた批判の方が自分の中で受け入れやすいし批判が明確なので改善しやすい。日本の企業でこんなにうまくいくかは疑問だが(笑)、正直に意見を言い合える職場環境は誰でも望んでいる筈だ。

他にも、報酬の交渉をする時や従業員を解雇する時にも、その理由や根拠を明確にし正直に本人に伝える、ということもNetflixでは徹底されているそうだ。

斬新な人事制度改革に目が行きがちだが、全体をよく読めば「正直さ」「透明性」がNetflixの文化の根幹にある事がよくわかる。


〜人を信じる、人の力を信じる〜


さて、従業員に対して「正直でいる」という事は、口で言うのは簡単だが、実際に行動に移すのは難しい。

「正直でいる」事を行動に移すためには、考え方を変えなければいけないだろう。
著者は「正直である」ために、人と人の力を信じているのだろう。

人は力を必ず発揮できる。そして、その環境を作るのがリーダーやマネージャーの仕事だ、と著者は言う。

従業員が業務を理解していないのは、マネージャーやリーダーが理解できるように説明をしていないからだろう。
従業員がその業務で上手く結果を残せないのは、その種の業務に関する能力が無いだけだろう(他の種類の業務を与えれば抜群の成果を出す事が出来る)。
反対意見を持つ従業員でも、キチンと根拠のある説明をすれば納得出来るだろう。

「正直である」というのは、決して思った事をそのまま口に出すという事ではない。隠し事をせず、ちゃんと理屈の通った話を正確にする、という事だ。そして、これは人事制度にメスを入れられるような人事責任者や経営者でなくとも、部下がいる人にとっては必要な事だと思う。

僕にも何人か部下がいるが、チームを円滑に動かすためには意識すべき事柄がいくつもあった。
仕事をする姿勢を正された一冊だ。

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