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【ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?(第2部 ヒューリスティクスとバイアス】なぜ、思い込みで判断してしまうか、を知る。

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〜ヒューリスティクスとバイアス〜

さて、まず、第二部のタイトルとなっているヒューリスティクスとバイアスとは何か。

ヒューリスティクスについては、本書の中で定義づけされている。

ヒューリスティクスの専門的な定義は、「困難な質問に対して、適切ではあるが往々にして不完全な答を見つけるための単純な手続き」である。

また、バイアスとは、一般的には「偏りを生じさせるもの」という意味があり、「先入観や偏見が影響して偏った評価がなされること」と定義される。

いわば、ヒューリスティクスもバイアスも、端的に言えば、よく考えずに直感で評価したり答を出してしまう思考の働き、と考える事が出来るだろう。

多くの人は、自分の意思決定や決断はよく考えられた上で行われているものだ、と思っているかもしれない。かくいう、僕もそうだ。
しかしながら、この章を読む事で、これまでの自分の普段の意思決定や決断に疑いを持つこととなった。

〜偏見、先入観、感情、根拠のない基準〜

例えば、これはよくある話だが、悲惨な飛行機事故が大きく報道された直後に、飛行機に乗りたがらなくなり、移動を列車や自動車にする人が出てくる。「事例が頭に思い浮かぶたやすさ」の頻度で「飛行機は危険だ」と判断してしまうためだ(利用可能性ヒューリスティクス)。実際には、飛行機の事故の確率は他の移動手段と比べても格段に低いというデータがあるにも関わらずだ。

また、新技術が発表されたとき(例えば手術を行う医療ロボット)、ある人がその技術を嫌う感情を持っていた(「手術は熟練された医師の手でやるものだ。自動ロボットなんかに任せられるか」とか)場合、その新しい技術に関してその人は、メリットよりもデメリットばかり評価する様になる(感情ヒューリスティクス)。

他にも、身なりがキチンとしていて礼儀正しくスーツも靴も時計も品のいいものをつけている営業マンを見たときには、何の根拠もないのに「この人は営業成績の良い人に違いない」と、見た目で判断して高く評価してしまう(代表性)、という事もありうる。

上記の例はあくまで簡易的に書いたものだが、これらの話を深く掘り下げた本書を読んでいると、自分の意思決定や判断に疑いを持たざるを得ない。何の疑いもなく根拠のない判断を多くの人々はしているのだ。しかも、厄介なことに、その根拠のない判断に対して、その人々は「自分が何も根拠のない判断をしている」事にすら気づかないのだ。

そして、本書によると、統計学の専門家でも同じ間違いをするという。
データや数字を基に判断する事を生業とする統計学者でも、時にこのヒューリスティックとバイアスに惑わされてしまうというのだ。

観察例が少ないにも関わらず、法則性を見出してしまう(少数の法則)。
根拠のない数字であっても、最初に提示された数字を基に結論を調整する(アンカリング効果)。
「もっともらしさ」と「確率」を結びつけてしまう(リンダの実験)。
因果関係を見出したときには、統計データを無視してしまう。

などなど。
データや数字のプロフェッショナルですら、ヒューリスティクスやバイアスに惑わされてしまう中で、一般人の僕らがそれらから逃れる事など出来るのだろうか?


〜事実に基づく、を意識する〜

さて、この第2章を読んでいるときに、僕は昨年読んだ「ファクトフルネス」の事を思い出した。
あの本は、「思い込みに惑わされず、事実に基づいて判断しよう」という話であった。

本書では、著者のダニエル・カーネマンは心理学を教えるのは「人間はある状況ではこういう行動をしがちだと、見方を変えて欲しいからだ」と書いている。

思い込みを避けるためには、人間はどういう時に思い込みで判断するのかを知らなければならない。
システム1は、僕らの無意識のうちに機能しているからだ。

思い込みを避けるというのは非常に困難だが、なぜ人はそのような意思決定をしてしまうのかという事を知る事は、大きな助けになるに違いないだろう。

(続く)

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