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【殺人出産】非日常の日常を描く短編集

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆

〜村田沙耶香さんの描く非日常・4編〜

地球星人」「コンビニ人間」など、奇抜な作品が印象的な村田沙耶香さんの短編集。

「地球星人」と「コンビニ人間」が、現代の日常に潜む闇を描いた作品だとすれば、この短編集はややSF的な要素があり、非日常の日常が描かれた作品集、と言える。

では、それぞれの話ごとに感想を書きます。


〜殺人出産〜

表題作であるこの話は、「10人産んだら、1人殺せる」という「殺人出産システム」で人口を保つ近未来の日本が舞台となっている。

システムを使わずに殺人をした人間は死刑ではなく、機械に繋がれて一生子どもを産み続ける、という徹底した仕組みになっている。

人口を保つために「殺意」を用いている、というのがこのシステムの面白い仕掛けであり、
印象的なのが、このシステムにより人々が「いつでもこいつを殺せる」という意識を持つことで、自殺が減った、という点。
たしかに、自殺って人間関係が原因として挙げられるだろうから、目の前の嫌いな人間を「いつでも殺そうと思えば殺せるんだぞ」という保険を持つだけでいくらか自殺の意識をなくせるんだろうなぁと、妙に納得してしまった。


〜トリプル〜

こちらも少し未来のお話。
2人で恋人になるのが「カップル」であるのに対し、3人で恋人になるのが「トリプル」。そんな新しい恋愛の形が若者の間で流行り出した世界の話。

「トリプル」のセックスの仕方にはなんだか無理矢理感があるものの、新しい価値観というのは、元の価値観を持つ人からすれば理解できないものなのかなぁ?とか考えたりして、
「自分の娘(1歳半)が大きくなる頃には、その時の新しい価値観が生まれて、それに僕がついていけなくなるのだろうか」という謎の不安が生まれた(笑)

「殺人出産」と共通しているのが、描かれる世界がちょうど新しい価値観と古い価値観が切り替わる地点にある、というところ。
古い価値観と新しい価値観、どちらが正しいとも言えないのだが、価値観の違いってやっぱり争いを生むよなぁ…。


〜清潔な結婚〜

これはギャグか!?と思ってしまった。
性的なものを家庭に持ち込まないという条件で結婚した2人が、子を持つために最新医療の「クリーン・ブリード(清潔な繁殖)」を行うまでの話。

うん、この「クリーン・ブリード」の描写に思わず笑ってしまった(笑)


〜余命〜

なんとなく、星新一さんのショート・ショートを思わせるような一作。
寿命が無くなった世界ってこうなるだろうなぁ、と月並みな感想を持った。


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