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【地球星人】純粋過ぎる世間への疑問が滑稽さを生み出す

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆☆

〜生と正と性を問う村田沙耶香さん〜

以前読んだ「コンビニ人間」があまりにも衝撃的過ぎて、僕の中でかなり気になる作家になってしまった村田沙耶香さん。

「コンビニ人間」と本作で共通するのは、「社会人として正しいのはこういうもの」「セックスとはこういうもの」「男女とはこういうもの」という価値観に正面から問いを投げかけているところだ。
その問いはあまりにも残酷で純粋すぎる。
普通に生きている僕たちはその問いに目を向けない。というよりも、そもそもその問いに気づいてすらいない。何よりも「普通に生きている僕たち」とは何なのか?

そんな「正」と「性」と「生」に対する問いに、気づくことすら出来ていない僕たちは、本作の主人公・奈月の視点から見れば「地球」の法則に洗脳された「地球星人」なのだ。


〜純粋が故に目を背ける問い〜

主人公・奈月は、小学校の頃、自らを宇宙から来た魔法少女だと信じていた。そして、いとこの由宇も自分を宇宙人だと信じており、2人は秘密の恋人同士だった。

34歳になった奈月は、世間に馴染めず、ネットで見つけた夫と性行為無しの婚姻生活を送っていた。そして、その夫も同じく世間に馴染めずにいた人物なのである。


奈月、由宇、夫、3人に共通するのは、恋愛や生殖や労働を強制してくる世間に馴染めないことだ。そんな地球を「工場」と表現し、そこに住む地球星人たちの「洗脳」から免れて生きている。

物語は終始奈月目線で描かれるのだが、現代社会の活動が彼女の「宇宙人の目」から見る事で非常に滑稽なものに見えてくる。
「なぜ人を殺してはいけないのか?」
「なぜ女しか妊娠出来ないのか?」
「なぜ男女は恋愛しなければいけないのか?」
「なぜ、子どもはセックスしてはダメだと言われ、大人はセックスしろと言われるのか?」
生物学的にそういうもんだ、なんていう説明はつけられるかもしれないけど、本質を突いた回答を持ち合わせている人はほとんどいないのではないだろうか。


〜僕は村田沙耶香さんのファンになった〜

「コンビニ人間」に引き続き、本作でもこれらの純粋過ぎる問いに真っ向から言葉で表現する村田沙耶香さん。
世間の常識や普通の価値観に弾き出されて生きづらい人々がいる、という事を改めて思い知らされる。


他の作品もあらすじだけ見ればなかなか骨のある物語のようだ。

今後も村田沙耶香さんの作品は積極的に読んでいきたいと思う。

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