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【レトリックと詭弁】詭弁から身を守る

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆☆

〜詭弁から身を守る〜

以前読んだ「論より詭弁」という本の著者である香西秀信さんの著作。
「論より詭弁」は「何でもかんでも論理的に考えて楽しい?」と問うものであったが、現実には論理的思考がもてはやされ、詭弁ともいえる理屈で相手を打ち負かす事に快感を覚える輩というのはたくさんいる。

著者も本書の中で述べているが、そもそも人間は言葉で相手を打ち負かすことに快感を覚える生き物なのだ。
そんな人間たちの中で自分の身を守るには、議論(詭弁)に負けない術を持たなければいけない。
この一冊が大きな武器となるだろう。


〜「問い」を出す側が有利になる〜

さて、ではそんな議論(詭弁)から身を守るにはどうすれば良いのか?

本書で繰り返し書かれているのは「議論においては【問い】を出したものが優位になる」ということだ。
「問い」を出された側は(外形的には)その問いに答えなければいけない責任を負わされることとなる。そして、その問いにうまく答えられなかった場合には窮地に立たされる。
また、「問い」を出した側は、その「問い」の中で定義される言葉を自分で決めることができ、自分に優位な展開に持っていきやすい。
さらには、「問い」という形式を用いることで、他の狙いをうまく覆い隠してしまう効果もあるのだ。

議論の中では先に問いかけをした者が優位に立てる。議論に打ち負かされた人は、おそらく相手の問いに対してうまく答えられなかった、または、沈黙してしまった、または、回答の中でさらに自分の首を絞めるようなことを言ってしまった、などの状況に追い込まれた経験があるだろうと思う。

しかし、逆に言えば、相手の出した「問い」に対してうまく切り返すことが出来れば、自分が優位に立てるということだ。
実は、相手を追い詰める「問い」にはカラクリがある。そのカラクリは同時に「問い」に対する矛盾であり、そこを突けば、逆に相手を追い詰めることもできる。

本書では様々な卑怯な問い(詭弁)のカラクリを明らかにしてくれる。
この一冊を読むことで、多くの手強い「問い」に対する恐怖心が無くなるはずだ。


〜詭弁を極めると詭弁は使えなくなる〜

さて、日常の議論における詭弁は、主に相手を打ち負かす事を目的としている。
本書は様々な詭弁の手法を紹介しているが、当然それらを利用して誰かを打ち負かそうとすることを推奨してはいない。

というよりも、これだけ穴だらけの詭弁のカラクリを知ってしまったら、誰もが自分で使うことはためらうだろう。その弱点を突かれてしまえば、不利になるのは自分だとわかってしまうからだ。

なので、本書はあくまで「防御」の術として利用すべきだ。
そもそも、議論の目的は何なのか、を考えてみると、それは互いの合意形成、いわゆる落とし所を見つけることが目的となっていることがほとんどなのではないだろうか?テレビやYouTubeのような論破ゲームは、日常の中には必要ないはずだ。
相手を打ち負かす事は全く建設的ではない。
しかし、「議論=相手を打ち負かす」ゲームを日常に持ち込む輩はたくさんいる。
そんな輩を叩きのめすための知識として、本書は大いに役に立つ。

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