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【数値化の鬼】数字から逃げちゃダメだ!

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆

〜数値化は自分にウソをつかないための方法〜

タイトルからして、「なんでも数字が全てだ!」という一昔前のモーレツ社員育成のようなイメージが浮かぶ本書だが、読んでみると納得することばかりで目から鱗の一冊であった。

著者曰く、「数値化する」ことは「客観的に自分を見る」ことである。すなわち、本書は数字の責任を他人に押し付けるための数値化ではなく、自分に対する数値化の鬼になれ、と述べているのである。

なぜ、数値化が必要なのか。
それは、自分の現状を正確に知ることができるからだ。
例えば、正月に一年の目標を立てたとして、「今年はたくさん本を読もう!」という目標と「今年は100冊本を読もう!」という目標では、具体性が全く違う。
半年後の6月ぐらいに、その目標を振り返った時にどうなるか。前者の目標設定であれば「この半年でまぁそれなり読めたかな…」と、ざっくりとした曖昧な評価しかできないが、後者であれば「今の時点で60冊読めているから、このままいけば目標達成だ」「30冊しか読めていない。今の倍以上のペースで読書をしなければ、目標達成はできないだろう」と、具体的な自分の位置を確認して評価することができる。
さらに言えば、後者であれば、1日にどれだけやればいいかという明確な指標ができる。「1年に100冊であれば、月に8〜9冊ぐらい。1日で0.3冊。ということは、毎日一冊の三分の一を読めば目標は達成出来る。自分のペースで一冊の三分の一を読むには、どれぐらいの読書時間を確保すれば良いか…」と、その日やるべきことも明確に見えてくる。

上記は単純な例だが、つまりは自分に対して数値化することは「もっと一生懸命になろう」とか「もっと丁寧にやろう」などという曖昧な言葉に逃げ出さないようにするための一歩なのである。


〜「分母」を増やす、「変数」を見つける〜

さて、本書において僕がキモだと感じたのは以下の二つである。

・「分母」に注目する
・「変数」を見つける


「分母」とは何を指すのかと言えば、確率における分母である。
例えば、営業成功率がAさんは80%、Bさんは50%と聞けば、Aさんの方が優秀そうに感じるが、Aさんは顧客へのアポを10件とり、そのうち契約締結したのは8件、Bさんは顧客へのアポを50件とり、そのうち契約締結したのは25件と聞けばどうだろう。Bさんの方が実際の契約件数は多くなる。どちらを評価するのが正しいだろうか?

確率、というのは統計などでは便利な指標である一方、何か後ろめたいことを隠すときに非常に便利な数字なのである。
逆に言えば、何かを評価するときには確率の分母に注目しなければ判断を誤るケースが多い。
「分母」とは、すなわち「行動量」と言い換えることもできる。
評価するにせよ、自分の成績をあげるにせよ、「行動量」こそが重要で、注目すべき数字なのである。

次に「変数」とは何か?
ざっくり言えば、「結果を良くするために、改善すべき点」である。
そして、その中で「変数」と「変数っぽいもの」を見分けられるようになるのが重要なのだ。
例えば、先ほどの例で「読書の量をもっと多くする」ためにどうすればいいのか?を考えるとき、その改善すべき「変数」を決める。
ダメな例としては、
・もっと読書を好きになるようにする
・読書の質を上げるようにする
など、心持ちだったり曖昧な要素を「変数」としてしまうケースだ。
良い例としては、
・寝る前に必ず30分の読書時間を作るようにする。
・通勤時間はスマホをカバンにしまい、読書時間とする
などである。二つ目の例は数値化していないようにも見えるが「やる・やらない」の二値として定義すれば、これも立派な変数として扱うことができる。
すなわち「変数」とは定量的かつ具体的に定義できる要素である。

他にも、周りの人間関係や環境など自分では変えられない「定数」との違いや、あまりにも「変数」が多いと処理しきれないため「真の変数」を見つける方法など、本書の1番重要な点はこの「変数」の話である。

本書を手にとるなら、じっくりと「変数」の考え方について読んでいただきたい。


〜数値化する意味を考える〜

さて、「数値化する」ということに対して、懐疑的・否定的な人は多いだろう。
「なんでも数字で考えるなんて、仕事がやりにくい!」
「数字がすべてではないだろう!」
もちろん、僕自身もそういう気持ちはあるし、そういう意見もよくわかる。
しかし、あえてそういう人にこそ、一度試しに本書を読んでみていただきたい。

著者も「数字がすべてではないだろう!」という意見を全否定しているわけではない。
だからといって、イコール「数字のことは考えなくていい」という話も間違っている。
著者は、それは順番の問題だと言う。
数字に隠れた部分は、先に数字を出さなければ見えてこないのだ。
数値化することを否定するのは、数字の裏に隠されたものを考える事すらしないのと同じなのである。

何事も、まず誰から見てもわかる数字で表す。特に仕事においては重要な行為だろう。

数字をただただ否定するのではなく、なぜ数値化するのか?という点についても、改めて考え直す機会となる一冊だと思う。

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