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【物理数学の直観的方法】理工系大学生必読の伝説の一冊

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆
(工学系の大学生には☆☆☆☆☆)

〜まずは僕自身の話から〜

この本を紹介する前に、先に僕自身の話をさせていただきたい。

僕は、とある大学の情報工学科に進学した。卒業後はそのまま大学院に進んだのだが、画像解析を専門とする研究室に入って、半年で中退している。
そして今は、プログラマやエンジニアなど情報工学とは関係のない仕事に就いている。

いわば、僕は理系をドロップアウトした人間である

ドロップアウトした原因は明らかで、理系大学生として1番やっちゃいけない失敗をしていたからだ。
それは、公式や理論を"理解"しようとせず、"丸暗記"していた事だ。
"丸暗記"すれば、試験などは割と難なく突破でき、単位は効率よく取れていた。しかし、いざ研究室に入り、自分で研究をするとなると、公式や理論を理解していないのがアダとなり、かなり苦労した(なんとか形にしたお粗末な卒論で卒業させてくれた教授には感謝しかない)。

そんなわけで、数学を"理解"することを怠り、形だけ理工系学部を卒業したものの、直後に壁にぶち当たり理工系を挫折した、という事だ。未だに大学生活に対して、後悔のようなしこりのようなものが僕の中にある。


〜素晴らしき「中間の本」〜

では、本書の話にうつろうと思う。
本書は、以前読んだ「現代経済学の直観的方法」の著者である長沼伸一郎氏の名を理系世界に轟かせた伝説的な一冊である。

理系大学生のための、難解な理論や数式を大胆なイメージにより直観的に理解出来ることを目指した一冊である。「現代経済学の直観的方法」と同じく、初学者と熟練者を繋ぐ「中間の本」としての役割を果たしている
なので、完全な物理数学初学者にとってはこの本は難しすぎるだろう。現に僕が読んだのは、自分が学生の時に大学で学んだ分野(微積分、テイラー展開、行列式と固有値、フーリエ級数・フーリエ変換)のみである。熱力学や電磁気学はやった事が無いので、とりあえず読んでみたもののさっぱりわからなかったので、読み飛ばしてしまった。

当時、あれだけ頭を悩ませたフーリエ級数・フーリエ変換が、本書を読む事で鮮やかに目の前にイメージとして現れた。その瞬間は雷に打たれたような感覚だ。
もし、大学生当時にこの本に出会っていたら、間違いなく今とは違う人生を送っていただろうと確信を持って言える。その人生が、今の生活より幸せかどうかは別の話だが笑


〜数学的直観化〜

さて、物理数学初学者にとってはなかなかハードルの高い本書だが、普及版最後の「やや長めの後記」は、全ての人が読むに値する章だ

数学的直観化が、歴史にとってどのような影響を与えて、どのような問題・課題を生み出したのかという著者のダイナミックな考察はかなり奥深いし、数学的直観という考え方を知る事で、世界の見え方が変わるはずだ。

「現代経済学の直観的方法」と本書を読む事で、著者・長沼伸一郎氏の直観力と才能にすっかり惚れてしまった。
他の著書もぜひ読んでみたいと思う。

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