マガジンのカバー画像

The lost colors

18
創作物語「ロスト・カラーズ」 ※最新エピソード順に並んでいます
運営しているクリエイター

記事一覧

「僕のカラダから羽化したモノは少女の姿をしていた」 ロスト・カラーズ 第11話

「僕のカラダから羽化したモノは少女の姿をしていた」 ロスト・カラーズ 第11話

あの日 その手を離さなければよかった

あなたのその手を その指を、、、

そうすれば あなたはあたしの側で

あたしの腕の中で死を迎えたのに、、、

今こそ この手を離す時なんだ

あたしのこの手を この指を、、、

そうすれば あたしは旅立てる

何者にも囚われぬ世界に、、、

あたしの役目は終ったの

また あなたに逢えるその日まで、、、

* * *

エマさんは、涙を流していた。
その耳

もっとみる
「僕の心臓に棲むモノクロームの少女と母と」ロスト・カラーズ 第10話

「僕の心臓に棲むモノクロームの少女と母と」ロスト・カラーズ 第10話

PORTRAI ILLUSTRATIONS BY MARIO ALBA

冷たい月明かりが そこに蠢く者を照らす




「あ”ぁ、僕のケモノが啼いている。背骨をギチギチと云わせ、啼いている。」


冷たいコンクリートの上でマオはもがく。握り潰され捨てられた紙屑のように。




そこは冷たい月と白い街灯が辺りを照らす、公園のコンクリートの道の上だった。
周りに人影は無く、遠くに車が行き交う音だけ

もっとみる
「その少女たちの残酷なまでに青い痛みが僕の胸の中で」 ロスト・カラーズ 第9話

「その少女たちの残酷なまでに青い痛みが僕の胸の中で」 ロスト・カラーズ 第9話

眩しかったの、、、目の前が青くてさ、、、

「ドン」 と音をたててあの娘(こ)が飛んだわ

妹の手から取り上げた人形が飛んで壊れちゃった

なぜか眠ったみたいな顔は奇麗なままだったけど

人形の首と手がプランプランになっちゃって

動かないあの娘を見て笑っちゃったな嬉しくて

* * *

少女とは 可愛らしい生き物だ

そして

少女とは 残酷な生き物だ

「理由?あの娘の心臓が欲しかっ

もっとみる
「雪ウサギの人」 赤い目 2章 第1話

「雪ウサギの人」 赤い目 2章 第1話

赤いリボンの 雪うさぎ
お目々の無いのが 悲しいか 
長い髪の毛 震わせて
じっとしゃがんだ
いじらしさ

赤い宝石 指輪から
ふたぁつ取って 付けたなら
お目々ができて 嬉しいか 
ぴょんぴょん跳ねる
雪うさぎ

「小さなノート」の1ページより

僕は「雪ウサギ」が好きなんだ

「白くて、ふわふわしてて、目が赤いから」

だから、その日もお気に入りの雪原に行ったんだ
雪ウサギに逢いに

その日は

もっとみる
「赤いおぼんの雪うさぎ おめめのないのが かなしいか」 ロスト・カラーズ 第8話

「赤いおぼんの雪うさぎ おめめのないのが かなしいか」 ロスト・カラーズ 第8話

港の近くの公園に、ピエロの格好をした初老の大道芸人がいた。
リョウの隣で、メグミはその大道芸に拍手喝采を浴びせている。

大道芸が終わったピエロは、予め用意してあった風船を見ていた子供たちに配り始める。
全ての子供たちに風船が行き渡ったのを見計らい、メグミはそのピエロの所にかけだした。

「ピエロさん、私にも風船をちょうだいな」

最初ピエロは驚いていたが、メグミの顔を見てニコリと笑うと
「どの色

もっとみる
「美雪(ミユキ)」赤い目 第3話

「美雪(ミユキ)」赤い目 第3話

「雪ウサギになって、智に逢いに行くから」
「絶対に、逢いに行くから」
「それまで、待っててね」

加奈の残した言葉に誘われるかのように、僕は雪原にいた。

そういえば、加奈にはどうして僕が雪ウサギが好きになったのかを話してはいなかったね。

僕は小さい頃、赤と黒の色の違いが分からなかったんだ。色盲だったから。
でも、女の子達が「あかいチューリップ、かわいい」とか「あかいリボン、きれい」とか言ってる

もっとみる
「その色彩が見える君なら赤とはどんな色をしている」 ロスト・カラーズ 第7話

「その色彩が見える君なら赤とはどんな色をしている」 ロスト・カラーズ 第7話

そこは ただ しん と しずまり かえっていた 、、、

やはり、此処は外界と切り離された地だと思わされる、、、

どちら側から足を踏み入れるのにも橋を渡らねばならない、、、

流るる水が結界のごとく、、、

私は写真家の須藤大元(スドウタイゲン)
モノクロフィルムのみを使い「銀塩写真」の世界を追求している。
今は「空海」が開創したこの高野山の奥の院の杉の森に入り新しい作品を模索中だ。

その杉の

もっとみる
「智(サトシ)」 赤い目 第2話

「智(サトシ)」 赤い目 第2話

そこは真っ白な世界だった

サラサラと静かに雪が降っていた

青い服を着た男の子と白い服を着た女の子が

並んでうつ伏せになっていた

顔を向き合わせて仲良く眠るように

サラサラと静かに雪が降っていた

そこに近づいてくる小さな存在に

その気配に男の子が気がついた

そしてその身を起こして見つけた

その真っ白な世界に現れた

白い化身を

* * *

僕と加奈が7歳の冬。
一緒に父の故郷の

もっとみる
「その魂を持つ君は誰なのか」 ロスト・カラーズ 第6話

「その魂を持つ君は誰なのか」 ロスト・カラーズ 第6話

そこは暗い、、、グリム童話の森の奥のように暗い、、、もう夜が明けようとしているのに。

フライパンから抜け出た得体の知れない粘液を垂らす排気口、、、へしゃげたアルファベットまみれで派手なアルミ缶の飲み口、、、ちぎられても愛想とエロをふりまくピンクチラシのギザギザした切り口、、、その「口」たちから出てきた人間の「飢え」を満たそうとする欲望がその視界を歪めてくる繁華街の裏路地。

そこに血にまみれたリ

もっとみる
「加奈( カナ)」 赤い目 第1話

「加奈( カナ)」 赤い目 第1話

「うそつき」

あの子は そう言って

笑ったんだ

僕には なぜだか

それが とても

怖かったんだ

「赤い目」

「ねえ、さとしくん。どうしてウサギの目は赤いの?」

と、あの子は聞いたんだ

「ウサギの目が赤いのは、にんじんを食べてるからさ」

と、 僕はそう答えたんだ

子供の頃は僕は本当にそう思っていたんだ、、、

* * *

あの子の名前は「加奈」(かな)

真っ白

もっとみる
「誰に聴かせるでもない歌を」 ロスト・カラーズ 第5話

「誰に聴かせるでもない歌を」 ロスト・カラーズ 第5話

そのワンルームアパートは必要最小限に整えられたシンプルな部屋だった。
2人がけのローソファに座りリョウはギターを抱えながら、A4サイズのリングノートに書き込み済みの歌詞にコード進行を書き加えていた。そしてそのノートの横にはもう1つ「小さなノート」が置かれている。
表紙には色々なウサギのシールが張られているだけでそれ以外に文字は見当たらない、少し古ぼけた小さなノートだった。
リョウはコードに悩んだ時

もっとみる
「アルビノ」 ロスト・カラーズ第4話

「アルビノ」 ロスト・カラーズ第4話

アルビノ=先天性白皮症

先天的なメラニンの欠乏により体毛や皮膚は白くなり、瞳孔は毛細血管の透過により赤色を呈する遺伝子疾患

シロウサギやシロヘビなど、誰でも動物でなら見た事があるだろう。その症状は人間にもある。私も症例としては知っていたが、実際に目にするのは初めてだった。

ミユキちゃんの髪の毛は黒く染めているのだろう、だから違和感を感じるほど黒かったのだ。眉もメイクで描かれていたが睫毛は白い

もっとみる
「白い女の子」 ロスト・カラーズ第3話

「白い女の子」 ロスト・カラーズ第3話

その少女は真白な陶器のような肌をしていた

皮下の血の色がほのかに透けて見え柔らかだった

その少女はさらりと長い黒く美しい髪をしていた

それは人の手によって作り出されたかのような

それらを見る私の心の囚われに気付いたかのように

少女は目深に被った白い大きな帽子を取った

そうなんだ、その女の子はピンクのリボンの付いた大きな白い帽子を被っていたんだ。だから私は、その目深に被った帽子から見える

もっとみる
「追憶の少女」(後) ロスト・カラーズ第2話

「追憶の少女」(後) ロスト・カラーズ第2話

Jの「家」は木々の間の奥まった所にあり、他の家より少し大きめだった。壁は厚みのある合板で屋根はポリカーボネート製のトタンで出来ていて、見た目は同じようでも他の家より丈夫に出来ていて、雨対策に1段高く敷地を作りその上に建てられていた。

「マオです。失礼します。」とマオは自分なりに大きめの声で挨拶をした。
ドアは後付けできるような枠が取り付けられているが今は付いておらず、ブルーシートを中央合わせで垂

もっとみる