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カルチャー(おもに映画)に関する随想録。 note別アカウント(映画解釈/考察ブログ)→https://note.com/takesky5

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【映画コラム/考察】『Tar/ター』「怪物リディア・ターを産んだのは何か/父権主義システムと女性とSNSの拡散」

『Tar/ター』(2022)トッド・フィールド監督 『Tar/ター』は、長時間作品にも関わらず、終始、観客の視線を釘付けにします。稀代の才能を余りなく発揮しているケイト・ブランシェットの演技に、惜しみない賛辞を送らなければならない作品です。 ただ、その怪演は、トッド・フィールド監督の、綱の上を渡るような、ギリギリのラインをフォーカスする綿密な脚本の上に成立していると言わざる得ないでしょう。 怪物リディア・ターの転落(キャンセルカルチャー)を執拗に描く キャリアの頂点に

    • 【文学コラム】『街とその不確かな壁』(文学と映画)

      『街と、その不確かな壁』と『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』と『街とその不確かな壁』の構図の相違 『街とその不確かな壁』は、『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』(1985)と同様に、書籍化されなかった中編『街と、その不確かな壁』を、「上書き」した作品。 中編『街と、その不確かな壁』は、「僕」は、「君」を虚空の世界(壁の内側)に残して、現実の世界に戻ります。そして、『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』では、「僕」は、「僕」の影を逃して、「

      • 【漫画考察】『ルックバック』『さよなら絵梨』「引きこもりとイマジナリーフレンドの物語として読む」①〈漫画と映画〉

        この記事は、加筆・修正して、別の記事に移動しました。

        • 【映画コラム/考察】『ベルイマン島にて』ミア・ハンセン・ラブ監督「母性の幻影によって残されたパターナリズム(父権主義)②」《2022年印象に残った映画》

          『ベルイマン島にて』ミア・ハンセンラブ監督 『ロスト・ドーター』マギー・ギレンホール監督 『仮面/ペルソナ』イングマール・ベルイマン監督 ※この記事は、『わたしは最悪。』と一部、関連させて考察しています。 『ベルイマン島にて』におけるパターナリズム(父権主義) 『ベルイマン島にて』は、イングマール・ベルイマン作品の撮影現場でもあり、ベルイマン自身が後半の人生を過ごした場所でもあった、フォーレ島を舞台にした作品です。 主人公のクリスは、新進気鋭の映画監督で、年上のパ

        【映画コラム/考察】『Tar/ター』「怪物リディア・ターを産んだのは何か/父権主義システムと女性とSNSの拡散」

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        • 【映画コラム/考察】
          12本
        • 【特選映画】
          10本
        • Amazon prime で楽しむ映画
          4本
        • 【映画監督の初期作品】
          4本
        • 【動画未配信の映画】
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          【映画コラム/考察】『わたしは最悪。』ヨキアム・トリアー監督「母性の幻影によって残されたパターナリズム(父権主義)①」《2022年印象に残った映画》

          『わたしは最悪。』ヨキアム・トリアー監督 『あのこと』オードレイ・ディヴァン監督 『テルマ』ヨキアム・トリアー監督 『ロスト・ドーター』マギー・ギレンホール監督 『テルマ』とパターナリズム(父権主義)からの解放 『わたしは最悪。』について語る前に、ヨキアム・トリアー監督の前作『テルマ』について触れておきたいと思います。  『テルマ』は、ジョーダン・ピール監督の『ゲット・アウト』がそうであるように、一見、だだのオカルト・ホラーテイスト作品のようで、本当は、テーマ性を持

          【映画コラム/考察】『わたしは最悪。』ヨキアム・トリアー監督「母性の幻影によって残されたパターナリズム(父権主義)①」《2022年印象に残った映画》

          【映画コラム/考察】『アネット』(2021)レオス・カラックス監督「他者の眼差しから逃れられない私たち」

          『ホーリー・モーターズ』と同一直線上にある『アネット』 レオス・カラックス監督の『アネット』は、相変わらず、少しやり過ぎなほど、野心的な作品に仕上がっています。 そのため、一見、ミュージカル、舞台、音楽、特殊効果などを多様し、過剰で、落ち着きがなく、また、『ホーリー・モーターズ』同様に、小間切れで、感情移入がしにくい、観客を翻弄するかのような作風になっています。 しかし、『ホーリー・モーターズ』と合わせて見れば、レオス・カラックス監督が、映画で表現したいことは、一貫して

          【映画コラム/考察】『アネット』(2021)レオス・カラックス監督「他者の眼差しから逃れられない私たち」

          【映画コラム/考察】映画『ブルーアワーにぶっ飛ばせ』

          箱田優子監督の半自伝的作品 映画『ブルーアワーをぶっ飛ばせ』は、Netflixドラマ『ヒヤマケンタロウの妊娠』でも、監督を努めているCMディレクターの箱田優子監督の半自伝的映画作品です。また、夏帆、シム・ウンギョンの演技が光る作品になっています。 この映画には、関連作品として、箱田監督自身によるコミック版『ブルーアワーにぶっ飛ばせ』が出版されています。 その本のあとがきで、箱田監督が、清浦が砂田のイマジナリーフレンドであることを明かしています。 イマジナリー・フレ

          【映画コラム/考察】映画『ブルーアワーにぶっ飛ばせ』

          【映画コラム/考察】映画オダギリジョー監督『ある船頭の話』「舟と橋をめぐる2つの世界」

          『ある船頭の話』(2019) 『ある船頭の話』は、オダギリジョー監督・脚本作品で、そして、オダギリジョー監督の長編映画デビュー作です。 しかし、想像している以上に、俳優オダギリジョーのイメージを覆すような、日本人の美的感覚や、老練な作風と諦念の境地を、感じさせる作品です。 その長編デビュー作を支えているスタッフたちが、また凄い。 撮影監督には、ウォン・カーウァイ監督作品などで有名なのクリストファー・ドイルが担当しています。近年は、アレハンドロ・ホドロフスキー監督

          【映画コラム/考察】映画オダギリジョー監督『ある船頭の話』「舟と橋をめぐる2つの世界」

          【映画コラム/考察】黒沢清監督『スパイの妻』「パラノイア的な正義とスキゾイドによる孤独」(『善き人のためのソナタ』)

          『スパイの妻』(2020) ※現在、Netflixで視聴できます。 『善き人のためのソナタ』(2006) 『ボラード病』(2014) 黒沢清・濱口竜介・野原位による脚本『スパイの妻』は、ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞(監督賞)を受賞した、黒沢清監督の歴史の闇を題材としたミステリードラマです。  一見、時代に翻弄された女性の悲劇を主題としたドラマのように見えますが、蒼井優が見せる演技は、悲劇のヒロインとして同情を集めるには、ほど遠く、むしろ、高橋一生演じる夫の優作と共に、滑

          【映画コラム/考察】黒沢清監督『スパイの妻』「パラノイア的な正義とスキゾイドによる孤独」(『善き人のためのソナタ』)

          【映画コラム/考察】『ペイン・アンド・グローリー』ペドロ・アルモドバル監督「痛みと愛情と映画(愛を伝えるシニフィアンとしての映画)」

          『ペイン・アンド・グローリー』(2019) 『セクシリア』(1982) 『神経衰弱ぎりぎりの女たち』(1988) ※現在、『ペイン・アンド・グローリー』は、Amazonプライム会員特典で視聴できます。 アルモドバル監督作品の対極にある半自伝的ストーリーとしての『ペイン・アンド・グローリー』 『ペイン・アンド・グローリー』(2019)は、これまでのペドロ・アルモドバル監督作品とくらべて、コメディ要素や極端な設定や劇的な展開がほとんどない作品です。 ペドロ・アルモドバル監督

          【映画コラム/考察】『ペイン・アンド・グローリー』ペドロ・アルモドバル監督「痛みと愛情と映画(愛を伝えるシニフィアンとしての映画)」

          【特選映画】Amazon Prime、 Netflix で楽しむイタリア映画①

          日本では例年ゴールデンウィークにイタリア映画祭が開催されています。 イタリアの有名監督と言えば、フェデリコ・フェリーニ、ルキノ・ヴィスコンティ、ロベルト・ロッセリーニ、ピエル・パオロ・パゾリーニ、ミケランジェロ・アントニオーニ、セルジオ・レオーネ、そしてジュゼッペ・トルナトーレ、ナンニ・モレッティ、マッテオ・ガローネ、ルカ・グァダニーノなど、挙げたら切りがありません。  しかも、凄いのは、2000年以降もイタリアから次々と世界的な新鋭監督が輩出されている点です。

          【特選映画】Amazon Prime、 Netflix で楽しむイタリア映画①

          【映画コラム/考察】『ロスト・ドーター』『パワー・オブ・ザ・ドッグ』などに見るジェンダーフリー映画の潮流「"男らしさ"による抑圧/母性社会の肯定から"母性"による抑圧へ」

          『荒野にて』(2018)アンドリュー・ヘイ監督/『ROMA/ローマ』(2019) アルフォンソ・キュアロン監督/『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(2021)ジェーン・カンピオン監督/『ロスト・ドーター』(2021)マギー・ギレンホール監督 【関連記事】 Netflix『パワー・オブ・ザ・ドッグ』『ロスト・ドーター』とジェンダーフリー映画の潮流 年末に近づくと、アカデミー賞を意識した作品が全米で公開ラッシュになりますが、ここ最近は、特にNetflixの年末の配信ラッシュが目を引

          【映画コラム/考察】『ロスト・ドーター』『パワー・オブ・ザ・ドッグ』などに見るジェンダーフリー映画の潮流「"男らしさ"による抑圧/母性社会の肯定から"母性"による抑圧へ」

          【特選映画】ジョン・グリシャム原作の大物映画監督作品

          ベストセラー作家 ジョン・グリシャム学生時代 、スティーヴン・キング作品の訳者として有名な白石朗さんが主に翻訳を担当していたジョン・グリシャムの本が大好きで、よく読んでいました。 ジョン・グリシャムと言えば、特に90年代から2000年にかけて、連続で毎年全米1位の売り上げを記録していて、こちらも大好きだった、『ジュラシック・パーク』のマイクル・クライトンと、当時は、映画化権料の記録を争っていました。 ジョン・グリシャム自身の弁護士や州議会議員の経験を生かした、リーガ

          【特選映画】ジョン・グリシャム原作の大物映画監督作品

          【映画解釈/考察】『アンダー・ザ・シルバーレイク』 /『裏窓』「複製されたハイパーリアルで愛を待つ地上の人々」

          この記事は、加筆・修正して、他のサイトに移転しました。 ◆wordpress◆ ◆note◆

          【映画解釈/考察】『アンダー・ザ・シルバーレイク』 /『裏窓』「複製されたハイパーリアルで愛を待つ地上の人々」

          【映画コラム/考察】アンドリュー・ヘイ監督の脱"男らしさ"の眼差し 『WEEKEND ウィークエンド』/『荒野にて』

          『荒野にて』(2017)/ 『WEEKEND ウィークエンド』(2011) 11月19日は、"国際男性デー"で、男性の心身の健康やジェンダーフリーの価値観を推進するために設立されたものです。その中には、保守的"男性らしさ"を強制しない社会の実現が含まれます。この国際男性デーに関連して実施された各種調査やアンケートから、多数の男性が、"男らしさ"に対して、何らかのストレスを感じていることが明らかになっています。 そんな"男らしさ"に、焦点が当たっている、国際男性デーにおすすめ

          【映画コラム/考察】アンドリュー・ヘイ監督の脱"男らしさ"の眼差し 『WEEKEND ウィークエンド』/『荒野にて』

          【特選映画】監督たちの"半自伝的"青春映画

          "半自伝的"青春映画 映画や小説の説明に、"半自伝的"という表現がよく出てきますが、結構、都合のよい、曖昧な言葉の遣われ方がされています。 ノンフィクションではないけど、監督や作者の体験が大きく影響している作品がこのジャンルとして分類されているのかと思いますが、監督たちの、故郷へのただならぬ思いが、共通して、強く感じられます。 今回は、有名実力派監督たちの"半自伝的"な青春映画の傑作・良作を何本か挙げたいと思います。 『夏をゆく人々』(2014) アリーチェ・

          【特選映画】監督たちの"半自伝的"青春映画