超ショート実話怪談集第10弾『瞬殺怪談 呪飢』(平山夢明ほか)冒頭試し読み3話
怖いが刺さる!
超ショート実話怪談集
大人気シリーズ第10弾!
あらすじ・内容
ページを開けばすぐ怖い!超短怪談で人気のシリーズ第10弾!
・幼い娘が近所の交差点に花を供えて…「新鮮な花」(つくね乱蔵)
・ホームで突然背中を押された!「翻弄」(我妻俊樹)
・いまから死ぬと言う友人からの電話に慌てて向かうと…「ら行」(黒史郎)
・ドローンでの撮影、映っていた奇妙なもの「たてわれ」(黒木あるじ)
・死んだと思った祖母、そしてまた…「婆ちゃんが死んでる」(小田イ輔)
・結婚して幸せなある日突然「人生は悪夢」(神薫)
・調査に入った山で夜も更ける頃…「山の悲鳴」(真白圭)
・混んでいる病院待合室、名前が呼ばれると…「ビューティフル・ネーム」(鷲羽大介)
――ほか初参加の松本エムザ、重鎮・平山夢明らによる全編書き下ろし!
冒頭試し読み3話
かくれんぼ つくね乱蔵
村上さんの一人息子、祐司くんは今年で四歳になった。
色々なものに興味を持ち、何にでも挑戦する年頃だ。
祐司くんも例外ではない。特に好むのが探検ごっこだった。
とは言え、戸外に出るわけではない。探検場所は、あくまでも家の中だ。
ある日、祐司くんが自慢気に村上さんに報告した。
村上さんは隊長の役割であり、報告するのが決まりになっている。
「おとしあなをみつけたよ」
台所にある床下収納庫のことだろう。早速、村上さんは探検を命じた。
颯爽と居間を出ていった祐司くんは、そのまま姿を消した。
家の中にいるのは確かだ。泣きながら、助けを求めている。
だが、何処をどう探しても見つけられない。二時間後、祐司くんは二階の押し入れから出てきた。
最初に探した場所だ。その時、いなかったのは確実である。
今まで何処にいたのか、どうやって押し入れから現れたのか、そもそも落とし穴とは何なのか。
いずれの質問にも祐司くんは答えられなかった。
外傷は無かったが、著しく知能が退行していたからである。
幸いにも、今現在は緩やかに元に戻りつつあるが、異様なほど暗闇を恐れるという。
いなくなる 我妻俊樹
関さん一家が温泉地のホテルに泊まったときのこと。
興奮して部屋を走り回るひとり娘が、押し入れの襖の前に立ち止まって突然「はーい!」と叫んだ。
誰に返事をしたの? と訊ねると「タチバナせんせい」と答える。
橘先生というのは、娘の幼稚園の担任の若い女性だ。
夫婦で顔を見合わせていると、娘はこう続ける。
「いなくなるから、わざわざあいにきたんだってー」
少し嫌な予感がしたが、旅行から帰った娘を橘先生は元気な笑顔で迎えてくれたようだ。
だが卒園間近の週末にツーリングに出かけた先生は、海岸にバイクを残して行方不明になった。
十四年経った現在も、消息がわからないままだという話である。
BJによろしく 真白圭
「……に、ブラックジャックによろしく」
公園の遊歩道ですれ違った男に言われ、「はぁ」と首を傾げた。
暫く歩き、「この先の木に、ぶら下がっているのでよろしく」と、後事を託されたのだと気がついた。
◎著者紹介
平山夢明 (ひらやま・ゆめあき)
神奈川県生まれ。『SINKER 沈むもの』で小説家デビュー。短編『独白するユニバーサル横メルカトル』で日本推理作家協会賞短編賞、『DINER』で日本冒険小説協会大賞、大藪晴彦賞を受賞。著作に『或るろくでなしの死』『暗くて静かでロックな娘』『ヤギより上、猿より下』『あむんぜん』『八月のくず』『俺が公園でペリカンにした話』他。実話怪談では『「超」怖い話』『東京伝説』『平山夢明恐怖全集』『怪談遺産』などシリーズ多数。
我妻俊樹 (あがつま・としき)
『実話怪談覚書 忌之刻』にて単著デビュー。著書に「実話怪談覚書」「奇々耳草紙」「忌印恐怖譚」「奇談百物語」各シリーズ。共著に「FKB饗宴」「てのひら怪談」「ふたり怪談」「怪談五色」「怪談四十九夜」「瞬殺怪談」各シリーズ、『猫怪談』など。
小田イ輔 (おだ・いすけ)
「実話コレクション」「怪談奇聞」各シリーズ、共著に「怪談四十九夜」「瞬殺怪談」「奥羽怪談」各シリーズ、『未成仏百物語』など。原作コミック『厭怪談 なにかがいる』(画・柏屋コッコ)もある。
黒木あるじ (くろき・あるじ)
怪談作家として精力的に活躍。「怪談実話」「無惨百物語」「黒木魔奇録」「怪談売買録」「奥羽怪談」各シリーズ、『山形怪談』など。共著では「FKB饗宴」「怪談五色」「ふたり怪談」「怪談四十九夜」「瞬殺怪談」各シリーズ、『実録怪談 最恐事故物件』『未成仏百物語』など。『掃除屋 プロレス始末伝』『葬儀屋 プロレス刺客伝』など小説も手掛ける。
黒 史郎 (くろ・しろう)
小説家として活動する傍ら、実話怪談も多く手掛ける。「黒異譚」「実話蒐録集」「異界怪談」各シリーズ、『川崎怪談』『黒塗怪談 笑う裂傷女』『黒怪談傑作選 闇の舌』『ボギー 怪異考察士の憶測』ほか。共著に「FKB饗宴」「怪談五色」「百物語」「怪談四十九夜」「瞬殺怪談」各シリーズ、『未成仏百物語』など。
神 薫 (じん・かおる)
静岡県在住の現役の眼科医。『怪談女医 閉鎖病棟奇譚』で単著デビュー。『静岡怪談』『怨念怪談 葬難』『骸拾い』など。共著に「怪談四十九夜」「瞬殺怪談」各シリーズ、『現代怪談 地獄めぐり 業火』など。女医風呂 物書き女医の日常 https://ameblo.jp/joyblog/
つくね乱蔵 (つくね・らんぞう)
『恐怖箱 厭怪』で単著デビュー。『恐怖箱 厭満』『恐怖箱 厭福』『恐怖箱 厭熟』『恐怖箱 厭還』など。共著に「怪談四十九夜」「瞬殺怪談」「怪談五色」「恐怖箱テーマアンソロジー」各シリーズなど。ホラーライトノベルの単著に『僕の手を借りたい。』ほか、黒川進吾の名でショートショートも発表、共著『ショートショートの宝箱』もある。
真白 圭 (ましろ・けい)
第四回『幽』実話怪談コンテスト佳作入選後、本格的に怪談蒐集を開始する。著書に「実話怪事記」シリーズ、『生贄怪談』『暗黒百物語 骸』など、共著に「怪談四十九夜」シリーズなど。
松本エムザ (まつもと・えむざ)
主婦業の傍ら小説を執筆。恋愛、ホラー、ショートショート、実話怪談と幅広いジャンルのアンソロジーに参加。著者に『誘ゐ怪談』『実話異聞 貰い火怪談』『実話異聞 狐火怪談』、共著に『現代実話異録 村怪談』『恐怖箱 霊山』『恐怖箱 呪霊不動産』など。怪異の中で仄かに灯る、人の優しさ、希望を見出した瞬間が至福。栃木県在住。
鷲羽大介 (わしゅう・だいすけ)
一七四センチ八九キロ。右投げ右打ち。「せんだい文学塾」代表。著書に『暗獄怪談 憑かれた話』、共著に「江戸怪談を読む」シリーズ『猫の怪』『皿屋敷 幽霊お菊と皿と井戸』、「奥羽怪談」「怪談四十九夜」「瞬殺怪談」各シリーズなど。