【短編小説】 サラマンダー広田
幼い頃、夕方のテレビ画面に映るトカゲマスクの巨体を見るたびに僕は震えていた。
鉄パイプや鋏攻撃、相手選手への複数名でのリンチなど数々の反則攻撃。極悪非道の限りを尽くすトカゲマスクの「サラマンダー広田」は国民にとっての悪の象徴だった。
時は流れて僕は彩夏と出会い、恋に落ちた。そして互いに働き始めて結婚が見えて来た矢先。僕は彼女からとある秘密を打ち明けられた。
「拓斗。近いうち、うちのお父さんに会ってみる?」
「うん。そろそろ、ちゃんと挨拶しないとな」
「実はね……うち