【小説】 低空飛行の神様 【ショートショート】
母親に算数のテストの点が悪かったことを叱られている間、リビングテーブルに座るトオルには浴びせられる罵倒の数々がまったく耳に入っていなかった。
耳に入れば心に届いてしまうため、目の前にある透明花瓶の湾曲部分に見える光や水がなぜ曲がって見えるのだろう? ということだけを考えていた。
「トオル、さっきから聞いているの?」
「うん、聞いてるよ」
「じゃあ、なんでこんなに点数が一気に落ちたのかさっさと答えて頂戴」
「だから! 最初に言ったけど先生がテストの出題を間違えたんだって