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ショートショート広場

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一話完結〜数話完結の短編集を載せています。 あなたの息抜きのひとつに添えて頂けたら嬉しいです。
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#家族

【小説】 無限青々 【ショートショート】

 鍬を握る手が疲れて来て、青々とした空を回る大きな鳥を見上げるフリをして、寛吉はほんの束…

大枝 岳志
2週間前
9

【小説】 社会死葬儀 【ショートショート】

 予定通りに行けば昨日、私の葬儀が執り行われたはずだ。  最も、この肉体の死を弔う葬儀で…

大枝 岳志
1か月前
15

【小説】 第二秘書浅見賢太郎 【Ⅲ】

一話、二話はこちら→  新宿会館での少年部講演会を終え、楽屋へ戻った正文学会・会長の吉原…

大枝 岳志
1か月前
5

【小説】第二秘書浅見賢太郎 【Ⅰ】

 ここに、とある人物の手記がある。  決して上手いとは言い難い文字や文章を見る限り、日記…

大枝 岳志
1か月前
9

【小説】 木になった日 【ショートショート】

 ちょうど雲が切れるように、熱を持った飴が千切れるように、繋いだ手が離れる瞬間のように、…

大枝 岳志
2か月前
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【小説】 父と私の土曜日 【ショートショート】 

 三ヵ月ぶりに危急の用件で実家に帰ることになった。キッカケはマネージャーを通して伝えられ…

大枝 岳志
3か月前
16

【短編小説】 サラマンダー広田 

 幼い頃、夕方のテレビ画面に映るトカゲマスクの巨体を見るたびに僕は震えていた。  鉄パイプや鋏攻撃、相手選手への複数名でのリンチなど数々の反則攻撃。極悪非道の限りを尽くすトカゲマスクの「サラマンダー広田」は国民にとっての悪の象徴だった。  時は流れて僕は彩夏と出会い、恋に落ちた。そして互いに働き始めて結婚が見えて来た矢先。僕は彼女からとある秘密を打ち明けられた。 「拓斗。近いうち、うちのお父さんに会ってみる?」 「うん。そろそろ、ちゃんと挨拶しないとな」 「実はね……うち

【小説】 低空飛行の神様 【ショートショート】

 母親に算数のテストの点が悪かったことを叱られている間、リビングテーブルに座るトオルには…

大枝 岳志
4か月前
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【小説】 ヒーロー、交代

 あまりに突然のクビ宣告に、俺は声を出すことさえ忘れてしまった。  今朝、司令官からの電…

大枝 岳志
5か月前
9

【小説】 特殊雨予報 【ショートショート】

 三月すらまだやって来ていないというのに、日中の気温は二十度を上回っていた。  蒸し暑い…

大枝 岳志
5か月前
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【小説】 新型NEET制度 【ショートショート】

 新しく始まった「新型NEET制度」の内容がいまいち理解できず、銀行でもらって来たパンフ…

大枝 岳志
6か月前
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【小説】 家電家族 【ショートショート】

 お母さんはいつも暑がりで、冬でもお風呂上りには「暑い暑い」と団扇を手放さず、おまけに冷…

大枝 岳志
6か月前
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【小説】 冬は春のふりをして

 寒の合間にニセモノの春が訪れた。  気温が二十度近くにもなった土曜日の真昼間に、私は手…

大枝 岳志
6か月前
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【小説】 祖父は世界覇者 【ショートショート】

 私の母方の祖父が亡くなった。  母の実家を訪れるたび、小さな頃から私のことを「めいちゃん」と呼び、他の兄妹と比べて可愛がってくれていたように思う。  祖母は七年前に亡くなっていて、九十五歳の祖父は自宅を訪れた訪問介護士によって亡くなっているのが発見された。  最期は腰に問題を抱えているくらいなもんで、完全な老衰だと医師は言っていた。  最期の別れを済ませても遺族にはなさなければならない事が沢山で、釣りが趣味だった祖父の部屋を片付けるのは本当に骨が折れた。  そんな中、兄