【小説】 ハラスメントラベラー 【ショートショート】
バブル末期の暑い八月。島型レイアウトの並びの課長席に座る坂本はこめかみに青筋を浮かべながら、腹の底から声を出して吠えていた。
「てめぇら一本取ったらすぐ次行くんだよ馬鹿野郎! 喜んでる暇があるなら件数伸ばせよ! おい、村上こっち来い!」
怒鳴っている間、坂本の手は横を通り過ぎて行く女性社員達の尻に伸びる。
無言で立ち止まる女性社員の尻を撫で回しながら、坂本は頭を下げながらやって来た申し訳なさ顔の村上を怒鳴り始めた。
「おい! おまえ、先月の成績言ってみろ!」
「は