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【キャリアストーリー】「好き」を追求したらキャリアに行き詰った??~外さない転職編③~

こんにちは。堀内猛志です。
前回のnoteでは『「好き」を追求したらキャリアに行き詰った??~外さない転職編②~』というキャリアストーリーについて書きました。

29歳の花子さんがどういう人物かを理解するために、下記のnoteを確認してペルソナをイメージしたから読み進めてください。

今回のnoteは転職編の最終回です。
前回のnoteの再掲ですが、30歳が間近に迫り、将来性を見越した転職を行う上で重要なポイントを再掲します。

転職活動のポイント

今回のnoteでは、ポイント「3」について解説します。

3.次の次の転職を見越し、次の転職で全ての希望を満たそうとしない

こちらはシンプルですが非常に重要な観点です。特に、現状のスキル及び経験と希望する職種及び働き方がずれている方には知っておいてもらいたいです。

未経験での募集があるポジションならば問題ないですが、ポイント1と2であげたような職種に就こうとすると、応募における必須条件が必ず出てきます。

●●や××に関わる業務経験があること
▲▲の経験を★年以上があること
■■に関わる専門的な知識を有していること

このような条件がある以上、いくら気合と根性を持ち合わせていても、書類選考で確実に落とされてしまいます。当たり前ですね。

だったら未経験でも採用してくれる企業を探せばいいのではないか?ということですが、人の思考はそう簡単にはいきません。なぜならば、未経験でも採用してくれる企業は知名度が低く、規模が小さく、報酬等の条件が悪く、、、仕事内容に興味を持っても、その他の条件、特に報酬面が自身の希望を満たせないため、そう簡単に未経験でも応募可能な企業への就職を決断できないからです。

結果、ポイント1、2とは全く別の将来性の乏しい業界、職種で、報酬面や環境面がクリアした企業への転職を決断する人が非常に多いです。これは非常にもったいないことです。私はキャリアデザイナーとして日々多くの人のキャリアの相談に乗りますが、こういう思考の方の考えを変えるのは容易ではありません。理由は3つです。

冷静な選択ができない理由①:思考キャパが減っている

人には意志はありますが、同時にキャパシティもあります。将来的にこんな人になりたい、こういう風に働きたいという希望があっても、現状に思考キャパシティという余裕がなければ、その意思や希望への想いは小さくなります。早く転職先を見つけなきゃ生活が苦しくなる、親にこれ以上迷惑はかけられない、無職なんて人に言えない、来月は友人の結婚式があるのに、、、こういう想いで頭の中がいっぱいになるので冷静に考えるのは難しくなります。

これは、以前のnoteで書いた「欲しい」は「好き」より強いという話の通りです。「自己実現欲求」や「承認欲求」よりも「生理的欲求」「安全の欲求」「所属と愛の欲求」を強く求めます。なので、外野から冷静になって考えて、といくら伝えても冷静になれる人はかなり少ないのです。

こういう状態の時に付け込んでくる人がいるから気をつけましょう。しかもその人は悪い人ではありません。どちらかと言うとあなたに近しい人です。どこもかしこも人不足なので「うちに来たら?」ということを言ってきます。不安なあなたが相談できる人からの一言は救いの手のように見えるでしょう。しかし、それはポイント1と2とはかけ離れた職種と業務のことが多いはずです。冷静なときは仕事の興味の低さから行かないのですが、報酬や環境など、「生理的欲求」「安全の欲求」「所属と愛の欲求」を満たしてくれる場所が「自分にとって一番良い場所」に見えてきます

誘ってくる人は悪い人ではありません。あなたを騙そうとしているわけではありません。ただ、キャリアに対する知見も、労働マーケットにおけるリテラシーもないだけです。ここで冷静な判断ができずに、年齢と時間という2度と取り戻せないあなたの資産を減らさないようにしてください。

冷静な選択ができない理由②:不確かな未来より確かな今を優先してしまう

多くの人は、未来の大きな利益の可能性よりも、目の前にある小さな利益の現実を重視する傾向にあります。このような心理傾向を、行動経済学では『現在バイアス』と言います。この心理傾向は、先延ばしをしたがる心理とも言えます。現在バイアス傾向が強い人は、本当に必要な事柄を後回しにしてしまいがちなため、掲げた目標を達成できずに失敗する可能性が高くなります。また、目の前の欲求に弱いので、自己投資に失敗しやすいと言われています。

現在バイアスについての興味深い研究を実施した論文があります。現在バイアスが、地震災害の復興に影響を与えうるのかどうかを検討したものです。研究のアウトラインを以下にまとめてみました。

■現在バイアスの影響を受けている首都圏の居住者が、「災害復興に関して一般的ではない特徴的な考え方をもっているのかどうか」を検証する
■調査は、2018年に首都圏に居住する人400名を対象に実施。まず現在バイアスにまつわる質問調査を行い、将来の価値を低く見つもって現在の価値を選択する傾向をもつ、現在バイアス群を抽出。地震に対しても現在バイアスが働くと思われるグループ200名と、合理的な判断をするグループ200名の2つのグループを作成
■2つのグループに対して、今後発生が予想されている首都圏直下型地震に関するWeb調査を実施
■現在バイアスグループは、災害復興に対して一般よりも、自身の生活の迅速な立て直しを希望する傾向がみられた

小林秀行・田中 淳 (2020). 「現在バイアスは災害復興観に影響を与えうるか: 首都圏居住者の首都直下型地震に対する災害復興観調査を事例として」より

キャリアに対して冷静な判断ができない人は、自身の生活の迅速な立て直しを希望する傾向のある人たちと同じです。まずは「今」に投資をしてしまうので、将来のための投資意欲が極端に弱くなります

本人の頭の中では「この判断がベストである」と強く思っているので、説得は非常に困難です。これを読んでいる人も冷静なうちは「自分は大丈夫」と思ってしまうでしょうが、冷静を欠いた状態になると現在バイアスは無意識に働いてしまうのです。

つまり、現在バイアスを防ぐ方法は、冷静じゃない状態で判断しないようにする、言い換えれば、冷静じゃなくなるヤバイ状態になる前に判断する、ということです。そんなことができるのか、と問われそうですが、できます。

転職で例えるならば、キャリアが下降傾向になってから転職を検討するのではなく、キャリアが上昇傾向のときに転職をする、ということです。転職希望者のほとんどは前者ですが、言うまでもなく後者の方が良い転職ができます。それは冷静なために現在バイアスが発動されないというのはもちろんのこと、キャリアが上昇傾向のため、面接官に自信が伝わるというメリットもあるからです。

常日頃から人生100年時代を見越したキャリアの長期展望と自己投資を怠らないようにしたいですね。

冷静な選択ができない理由③:自己理解と優先順位付けができていない

理由①②はわかったものの、花子さんと同じ状態の人は思うでしょう。すでに冷静じゃない状態なのに今さらそんなことを言われても遅い、と。では、ここからは自己理解と優先順位付けをすることで冷静になる方法をお伝えします。

転職がなかなかうまく行かない人の多くは、市場価値(市場が判断するあなたの価値)よりも自己評価(自分が想定する自身の価値)の方が大きくなっている傾向にあります。そのため、あれも、これも、と転職先に望むものが大きくなり、自身の経験スキルでは到底受からないような企業や職種を狙いにかかります。

また、自分の中の優先順位を確定せずに行っているので、転職活動初期は「報酬が現状維持なら何でもいい」みたいなことを言っていたのに、「あの会社はトイレが汚かった」「すれ違う社員の方に覇気がなかった」などと、小さな不満や不安を口にしだします。まるで白馬の王子様のような一点の曇りもないような案件を探すようなイメージです。見つかるわけがありません。

では、どうやって自己理解と優先順位付けをすればいいのでしょうか。是非以下の手順を実施してみてください。

1.転職先に希望する条件を全て書き出す
2.その条件の中からTOP5を決める
3.TOP5に選んだ条件に対して、現職では5点評価でそれぞれ何点かを書き出す
4.3の合計点を計算する
5.TOP5に選んだ条件に対して、転職先では5点評価で何点にしたいかを書き出す。ただし、現職の合計点をキャップとして、5つの条件の数字の点数配分を変えるようにする。
6.5で作った条件とポイントを希望条件のmustとし、5つ以外の条件は捨てる

ポイントは、現職の合計点を転職先に望む条件のキャップに置くところです。このやり方に当てはめると、転職が失敗する人は、条件が絞り込めず、さらにすべての条件が良くなることを期待しています。現職での評価が市場価値よりも著しく低い場合に限り、全ての条件が向上することはあります。つまり、合計点が超える場合ですね。しかし、今回のようにキャリアの下降傾向にあり、理由①②の状態に陥っている人は、現職評価よりも市場価値の方が上回ることはまず考えられません。

自己理解と優先順位付け

花子さんの例で説明します。花子さんは、アパレルという業界や上司や同僚という会社のメンバーには何の不満もありませんでしたが、接客職を今後も続けるべきか、報酬をもっとあげたいし、結婚後も見据えると働き方も自由にしたい、という要望がありました。そのため、現職の合計13点をキャップにして転職先に求める優先順位とそのレベル感を決める、という流れになります。

1~5の基準は明確に決めなくても大丈夫です。絶対評価にすると点数基準は明確に決める必要になりますが、現職との相対評価ですので、現職の満足度よりも上か下か、くらいの感覚で大丈夫です。ゆえに、現職の数値を高めにいじることで合計点を上げようとすることは意味がないことに気づくはずです。

次の次の転職先を見越して次の転職先を修業期間と捉える

花子さんは上記のすべてに当てはまるので、このままでは転職活動を通じて自信を失ってしまうでしょう。そして、刹那的で短絡的な判断をします。

・考えるのに疲れて現職で同じ業務を続ける
・エージェントに言いくるめられて花子さんでも受かる企業にねじ込まれ、タレントは活きないがブームの好きを優先して決める。
・知り合いに相談すると「うちに来ない?」と言われ、求められていることが嬉しくなり、報酬は今より少し上がるが将来性のない職種につく。

理由①②③ができていない人は上記のような判断をする人が非常に多いです。

余談ですが、ほとんどのエージェントは、花子さんの将来性を考えたアドバイスはしてくれません。なぜなら、冷静な判断ができていない人に、長期キャリアの話を理解してもらうのは粘り強い説明の時間が必要になりますが、エージェントはそれをすればするほどタダ働きになるからです。だったら、花子さんでも受かりそうな求人を山ほどぶつけ、ブームでも何でも花子さんに好きかもと言わせる企業を見つけさせ、花子さんが承諾したら「おめでとこざいます!良かったですね!」ということで、貢献欲求と報酬を満たした方が生産的で合理的です。花子さんは将来的に苦労するでしょうが、エージェントからしたら知ったことではありません。

話を花子さんに戻します。未経験とは言え花子さんには若さがあります。また、活発性やコミュニケーションと言ったタレントが接客業で磨かれています。あとは、希少性があり、長期的なキャリアに繋がる業界と職種を選べばいいのです。

色々選択肢はありますが、私なら花子さんにはSaaS系のカスタマーサクセス職を推薦します。花子さんは未経験ですが、カスタマーサクセス職は新規性が高く、世の中にできる人がまだほとんどいません。ほとんどいないとは言え、人気企業では内定は出ないでしょう。だからこそ、採用に苦戦しているために未経験でも採用してくれる企業を探します。小規模の企業で報酬は期待できないでしょうが、カスタマーサクセスとしての基礎を身に着けられるだけではなく、少人数の利点を活かし早期にプロジェクトマネージャーになれる可能性があります。当然社内に教えてくれる人はいないでしょう。だからこそ勉強会や交流会にも積極的に参加し、学習とネットワークを作る動きも重要になります。

どんな小さな企業やプロダクトでも、カスタマーサクセス職を経験しPMになることができれば、そのキャリアを持って次は人気企業を受けることはできます。人気企業の求人票を確認しましょう。ちゃんと経験し、ちゃんと学び、ちゃんと結果を出していれば受かる内容です。

人気企業の求人にある条件を満たすための経験をしてから応募する

タレントはいきなり発動できるわけではない、というのは以前のnoteでもお伝えした通りです。タレントを磨く時間は必要です。しかし、カスタマーサクセスの業務特性上、花子さんの持つ、『コミュニケーション』は、顧客に近い職種の経験の中でさらに磨かれるでしょう。さらに、規模の小さい企業で業務を複数にまたいで実施するカオス状況も『活発性』を持つ花子さんなら楽しむことができると考えます。


キャリアの棚卸と長期的なキャリアデザインを行いましょう

正解病をご存じでしょうか?正解病とは、正解があると思い込むことで仕事に支障をきたす、社会人によく見られる思考や行動の傾向です。正解病によって引き起こされる症状は多岐に渡ります。もっとも重篤なのが、自分の頭で考える力の低下です。これにより創造性やリーダーシップが失われます。本来持っている能力が引き出されず、自己認識と他者評価の乖離が生まれます。症状は以下の通りです。

思考停止:どこかに正解があると思い込み、自分の頭で考えない
待ち体質:誰かに正解を教えてもらうまで、自分からは行動しない
創意欠如:正解を教えてもらってないからできない、と決めつける
過剰調査:正解が分かるまでずっと準備や調査をし、行動しない
早い諦め:調べても正解が見つからないと「できない」と結論づける
無発言:正解を知らない自分の考えに価値はないと思い、何も発言しない
短絡思考:物事を正誤で短絡的に捉え、自他に対して安易な評価を下す
失敗忌避:正解率を上げることを重視し、失敗を避けるように行動する
権威追随:理論やフレームワークをやたら有難がり、妄信する
批判喪失:上司や先輩の話が正解だと思い込み、疑問を持たない
規則追従:規則に従うことが正解だと思い込み、真の目的を見失う
仮説下手:筋のいい仮説が立てられない、仮説だと不安で前に進めない
応用力欠如:正解に忠実であることに拘り、柔軟な判断や応用ができない
胆力不足:正解が分からない未知の仕事を嫌がり、簡単な仕事ばかり選ぶ
手抜き気質:誰かが出した正解に乗っかるのが一番楽で賢いと思いこむ

現代バイアスが強い人は、この正解病を患っている人が多いです。しかし、幸せに正解がないように、キャリアに正解はありません。正解がないことを考えるのはすごくエネルギーがかかります。だからみんな正解病になるんですよね。でも、他でもないあなたの人生です。難しくても、疲れても、考え続けるしかないんです。

花子さんのストーリーを使って、正解は見つけられなくても、自分のキャリアを自分で正解にする方法は少なからずわかってもらえたのではないでしょうか。是非、自分のキャリアに真摯に向き合ってもらいたいと思います。


自分のタレントを見つけたいという人、自分のタレントの活かし方、職場を検討したい方は下記よりご連絡ください。


自分のタレントを本業以外の場面で活かしたい、外部人材のタレントを自社に活用したいという人はこちらからご連絡ください。

それでは今日も素敵な一日を!

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