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読み、繕い、繋ぐ、おばあさまの仕立てたウェディングドレス。

古いものとドレスとイギリスをこよなく愛す、ドレスの仕立て屋・リメイク作家のタケチヒロミです。

先日、お母さまのウェディングドレスのリメイクのご依頼がありました。シルクのコード刺繍が美しい、35年ほど前のウェディングドレスです。

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ボリュームのあるお袖のデザインが80年代のドレスの特徴を表しています。


1980's この時代のドレスには、肩や袖など、上半身にボリュームのあるロマンティックなデザインのものが多く見られます。1981年のダイアナ妃のロイヤルウェディングドレスの影響も大きいのでしょう。ダイアナ妃のドレスは、イギリスのドレスデザイナー・エマニュエル夫妻によるものです。


おばあさまの仕立てられたウェディングドレス

こちらはなんと、花嫁さまのおばあさまがお母様の為に仕立てられたドレスなのだとか。おばあさまも、かつて仕立て屋さんだったそうなのです。

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背中のくるみボタンが最高にかわいい。

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ドレスを見るだけでとても丁寧に、愛情を込めて作られているのがわかります。

お母さまの後で、おばさまも着られたとのことで、随所にお直しの跡や、そのための様々な工夫が見られます。とても勉強になります。


ドレスを読む

ドレスの縫い方や仕立てを見れば、作った方の意図がわかります。ときには性格までも。

それらの心のこもった形跡を、ひとつひとつ、花嫁さまにお伝えしました。

もう亡くなられたおばあさまの、思いに触れることができたような気がしましたと、花嫁さまはおしゃってくださいました。

ものには、作った人の意図、つまり「想い」が宿ります。亡くなられた後も、ドレスに残された想いは残るのです。

それを読み解いて伝え、繕い、繋いでいくことが私の仕事です。

そう考えると、なんと恐ろしく、美しい仕事なのでしょう。

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てしごとは、ドレスに宿る

「では、少しうつむいてください」

採寸のとき、私は花嫁さまにそうお願いをしました。

そしてその後で、そっと花嫁さまの背中の骨に触れました。

それは私が、採寸の時に無意識にやっている仕草です。本当は、触れなくても、採寸はできます。

私のその仕草で、ふとおばあさまのことを思い出しましたと花嫁さまはおっしゃいました。おばあさまも、私とまったく同じ仕草をされていたそうなのです。

その時ふと、技術的な意味ではなく「このドレスは私にしかリメイクできない」と思いました。

技術だけなら私より上手な人のほうが多いでしょう。それでもこんなに細々と仕事をしている私を見つけてくださって、この重大な仕事を任せてくださったのには何か意味があるのだと思うのです。


はたらくってなんだろう

はたらくってなんでしょう。

仕事は自分で選んでいるようで、じつはそうでもないのかも知れない。

「あらかじめ私がやると決められていた」仕事もきっとあるのでしょう。

このドレスのように。

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わたしが死んでも、わたしの仕事はドレスに残る。いいかげんなことは、できない。その覚悟はあるのか。

作りながら何度もわたしは自分に問うでしょう。


重く、美しく、幸せな日々が始まります。

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だれにたのまれたわけでもないのに、日本各地の布をめぐる研究の旅をしています。 いただいたサポートは、旅先のごはんやおやつ代にしてエッセイに書きます!