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2020年のロボット大賞#1:産ロボ、家庭、宇宙

3月に『第9回ロボット大賞』が発表されました!!

この2年くらいのナイスなロボットや関連する取り組みを国として表彰しましょう!というもので、現状の日本のトップランナー達が表彰されてますので、数回に渡り、受賞したロボットがどんなロボットなのかを動画、関連ニュースも交えて見てみたいと思います。

ちなみに、ロボット大賞とは、2006年から始まった表彰制度で、経済産業省が幹事となりながら、多くの省庁、業界団体と連携しながら、以下を目的として実施されています。

将来の市場創出への貢献度や期待度が高いと考えられるロボット及びロボットに関連するビジネス・社会実装、ロボット応用システム、要素技術、高度ICT基盤技術、研究開発、人材育成を表彰することにより、ロボット技術の開発と事業化を促進し、技術革新と用途拡大を加速する、社会に役立つロボットに対する国民の認知度を高め、ロボットの需要を喚起するとともに、全国から広く募ることで我が国のロボット技術の動向を把握することを目的とします(ロボット大賞HPより引用)

●経済産業大臣賞 協働ロボットCRX[ファナック]

大賞とも言える、経済産業大臣賞にはファナックの協働ロボットCRXが選ばれました。協働ロボットは従来の柵の中で動くとロボットと異なり、人との共存・協働が可能なロボットです。

実はファナックには2つの協働ロボットがあります。CRシリーズとCRXシリーズです。CRシリーズはこれまで産業用ロボットを使ってきた自動車産業などのユーザを対象としているのに対して、今回受賞したCRXシリーズはロボットにあまり使い慣れていないユーザ向けのロボットです。

①アームを直接手で動かしながらどのように動かすかを教えるダイレクトティーチに加え、タブレット上のアイコンのドラッグ&ドロップによる直感的操作が可能、②独自に開発したセンサで、強く当たる前に、少し接触しただけで安全に停止することが可能、③100V電源にも対応など、と使い慣れていない人にとってはナイスな機能が付いています。

協働ロボット「CRX-10iA」と「同/L」は2019年の国際ロボット展に展示され、2020年春に受注を開始。新型コロナ禍で自動化や生産性向上のニーズが高く、生産量は2021年1月に20年比1.5倍に、2022年1月には同3倍程度までに引き上げていくそうで、UR社1強という協働ロボット市場に大手産ロボメーカとして勝負しに行っている状態になりそうです。

今後、協働ロボット市場がどのようになっていくのか要注目ですね!

●総務大臣賞 家族型ロボットLOVOT[GROOVE X]

総務大臣賞は、林要さんがトップを務めるGROOVE Xが開発する「LOVOT」

説明不要かもしれませんが、「コミュニケーションロボット」というジャンルでしょうか。役に立たないというか、何か人の代わりに作業をするということはしません。

「LOVE」×「ROBOT」です。

「抱いたときの心地よさ、愛くるしいしぐさ」。それらが「人の気持ちを優しく揺さぶり、幸せな気持ちでみたしてくれる。愛するちからを引き出し、明日に向かうエネルギーをくれる」。そういうロボット。

私も何度か遊ばして貰ったことがありますが、確かにそんな気持ちにさせてくれるロボットでしたし、子供は今でも遊んだときの記憶を楽しそうに話してくれます

技術的にも50個以上のセンサを活用した周囲の認識、多様な行動生成などののハイテクが結構リッチに搭載されていたり、こだわりの目などデザイン、社会科学など多面的な視点で開発がされた完成度の高いプロダクトです。

女性、子供、高齢者など様々な世代に活用されているのも特徴かもしれません。その背後には、技術的な視点だけでは、「D2C」「カスタマーサクセス」といった先端のマーケティングトレンドを上手く活用したビジネス戦略も大きく寄与しているでしょう。

事業的には、累計130億円くらいは調達しており、特にロボットの発表前から数十億円という金額を集める手腕はスゴイとしか言いようがありません。林さんのヒューマンパワーなのか、ビジネスとしての魅力なのか、その両方なのかはよく分りませんが、これまでにないロボットベンチャーの創出方法かと思います。

2020年10月決算は売上7.5億円、営業損失28.7億円とまだまだ先行投資フェーズだと思いますが、ロボット業界関係者としては、良いプロダクトだけに、何とか頑張って貰いたいという想いです。Aiboが苦しんだように単なるロボット販売事業から発展できるか。見守りなど様々な展開が発表され始めていますが、まさに今後、重要局面になってくるでしょう。

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●文部科学大臣賞 小惑星探査機はやぶさ2/小惑星探査ロボットMINERVA-II[JAXA等]

これは一般向けのニュースでかなり報道もあったのでご存知の方も沢山いらっしゃいますかね。

映画にもなった『はやぶさ』の後継機として、JAXA)で開発された小惑星探査機です。地球近傍小惑星 「リュウグウ」への着陸およびサンプルリターンを行いました。

技術的なスゴさは、私レベルの経験ではちょっと語り切ることができないのですが、宇宙という地上とは重力も温度も何もかも異なる条件、かつ、トラブってもどうしようもないという、まさに極限環境の中で、『はやぶさ2』や『ミネルバ』というロボットを自律的に移動させるというのは、考えるだけで吐きそうになります。

審査員コメントにもあるように、『様々なバックアップ、パラメータ調整機能、地上シミュレーションを備えたシステム』であり、表から見えないところも含めて総合的かつ最高レベルのロボティクスというか、エンジニアリングと言えるでしょう。

もう少し技術的なところを知りたい方は以下などに解説や論文も書かれています。

吉光 徹雄, 久保田 孝 小惑星探査ローバMINERVA-IIによる工学実験

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今回は経産大臣表彰、総務大臣表彰、文科大臣表彰に選ばれた日本を代表する3つのロボットを見てみました。

いずれもロボティクスという技術をコアに置きながらも、他の工学領域はもちろん、特に協働ロボット、LOVOTはデザインの視点、LOVOTはさらに認知科学、心理学、社会科学、そしてマーケティング、ファイナンスと複合的に絡んだ取組みになっています。

来週は、厚労大臣表彰、農水大臣表彰、国交大臣表彰に選ばれたロボット達を見ていきます。

では、また来週〜。

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安藤健(@takecando)

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