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NY在住指揮者 伊藤玲阿奈さんのスーパーレッスン〜ピアノ

こんにちは。高月香里です。

ちょうど3年前、クラブハウスがきっかけで、ニューヨーク在住の指揮者、伊藤玲阿奈さんのスーパーレッスンを受講しました。

備忘録としてそのときの事を書いておこうと思います。

はじめに

玲阿奈さんのことをご存知のかたはそんなに多くはいらっしゃらないと思います。なぜなら、玲阿奈さんはニューヨークで指揮者としてデビューされ、ずっとニューヨークでご活躍なさっていらっしゃるからです。

百聞は一見にしかずです。玲阿奈さんの指揮をご覧ください。noteもされていらっしゃいますのでそちらもご紹介させていただきます。

(玲阿奈さんのnoteはとても専門性が高く、投稿したものがnote側から拒否されたとおっしゃっていたことがありました。「noteに投稿すべき内容ではない、これほどのものはどうか著書になさってください」との連絡があったそうでした)

玲阿奈さんのクラブハウスルーム

玲阿奈さんは、クラブハウスで毎朝ルームをなさってました。玲阿奈さんの他に、日本在住のピアノの先生である女性と一緒に。

私はたまたまルームへ行き、玲阿奈さんが凄いかただと知り、それから毎朝ルームへ伺うようになりました。

玲阿奈さんはとても凄いかたなのに、とても気さくなかたで、音楽家ではない人達(私を含む)にも話かけられてました。ユーモアのセンスもおありで楽しいお話、勿論クラッシック音楽の専門的なお話も惜しみなくしてくださり、歴史のことにもとてもお詳しいかたでした。

そこで、玲阿奈さんが一時帰国されて、スーパーレッスンという玲阿奈さん独自のレッスンを日本でされる事を知りました。

レッスンは楽器は何でも、歌でも受講可とのことでした。子どもさんに受講させたいというかたもどうぞ、とのことでした。私は初め、玲阿奈さんにお会いできて、そのレッスンが見られるだけでもと思い聴講を希望しておりましたが、「関西でのレッスンに少し余裕がありますのでどなたでも」とおっしゃったので、思わず名乗りをあげてしまいました。楽器はピアノで。

玲阿奈さんのスーパーレッスン

当日行ってみますと、受講生はその楽器の先生というかたがほとんどで(クラブハウスで知っている方々でしたのでわかりました)、ひとり子どもさんが指揮を学びにこられてました。

私は小学生中学生と、義務教育の間の9年間ピアノを習っておりました。やめてからも時々は弾いており、バイオリンを習い始めてからはピアノも時々ではなく、バイオリンと同じように練習するようになっていました。

当時はショパンの『ノクターン』を1年ほど練習しており、玲阿奈さんにダメなところなど指摘していただけたらということを考えていました。

ですが、玲阿奈さんのレッスンは本当にスーパーなレッスンでした。とても緊張している私にお構いなく非常に厳しかったのです。ダメなところを指摘してもらうなどと考えが甘過ぎました。

そりゃそうですよね。玲阿奈さんはニューヨークでご活躍されている凄い指揮者でいらっしゃるのですから。

「では弾いてみてください」と言われ弾きました。

すると、「両手ではまだ早いかもしれません。まず、右と左、別々に弾いてみてください」と言われました。

1年間練習してきたのに、そんなにまだ駄目なの?と泣きそうになりました。

ですが、「右手は、これはお世辞でもなんでもありません。右手はとてもセンスがいいです。とてもよく弾けていますね」と言っていただけました。少し緊張がほぐれたような。

しかし、「他に曲を持って来られてないのですか?これは難し過ぎますね」と言われました。本当泣きそうでした。

「この曲を教えていただきたくて来ましたのでこれだけです。……両手で、もう一度通して弾かせてくださいませんか」とお願いしました。一度目は緊張のあまりミスタッチが多かったのです。

玲阿奈さんは仕方なしにでしょう、「やってみてください」と言われました。弾き終わると質問をしてこられました。

「この『ノクターン』、何に気をつけて弾いていますか」
「夜想曲ですので穏やかな気だるさのような雰囲気を出したいので、左手よりも右手の打鍵を遅くずらして弾いています」
「なるほど。では何を表現しようと弾いてますか」
「夜の暗がりとお家の中の明るさとの対比のような。外は暗くて少し怖い気もするけれども、お家の中はほのかに明るくて穏やかで安心で、という雰囲気です」
「それを本当に思い描いて弾いていますか」
「…(やっているつもりだからそう答えたんだが)…」

私が返事に困っていると、玲阿奈さんは聴講の方々に向かって「このように今自分は何を表現したいのか、明確に思い描いて弾いてくださいね」とおっしゃいました。玲阿奈さんは私と一対一のレッスンではなく、聴講生を意識した皆のレッスンとして講義されてました。それはなんだか、晒し者にされているようで、私はとても居心地が悪かったです。

玲阿奈さんはしばらく聴講の方々に向かって話をされたあと、「それではそろそろ時間が迫ってきているので最後に通して終わりにしましょう」と言われました。

それまでと違い、ピアノを弾く私の左横に来られて、強弱やテンポを私の耳元で指揮するように口頭で指示されました。私は玲阿奈さんの声に、自分の指に、これ以上は無理というくらいに集中しました。

指示を伝えながらも玲阿奈さんは「強すぎた、それはノクターンのフォルテじゃない、気をつけて」なども言われました。そして最後の重音、ピアニッシシモで終わるのですが、弱く打鍵し過ぎて出ていない音があり、「しまった」と思ったのですが、玲阿奈さんは「それでいい!」と言われました。聴講の方々からは大きな拍手が湧きました。

玲阿奈さんは聴講の方々にも「皆さん、今のでいいんです。最後の音は出ない音があってもいいくらいなんです。それにしてもこの1時間で見違えるほど良くなりましたね」と言っていただけました。

私は緊張と疲労とでヘロヘロになってました。

レッスン直後、厳しかった玲阿奈さんはいつもの玲阿奈さんに。私は一気に老け込んだような…
参加賞としていただきました。
玲阿奈さんにサインをいただきました。
「随分年季が入ってますね」と言われました。
小学5年生のときに使っていた教本ですので。

スーパーレッスンが終わって

レッスンからの帰りの電車の中から、玲阿奈さんへお礼のメッセージを送りました。

「アマチュアのかたでも1時間であんなにも成長できるのかと感動しました」と嬉しいお返事をいただきました。

無謀でしたが、受けて良かったと思いました。

その後のクラブハウスのルームで、受講されたピアノの先生数人が感想などを述べられたのですが、意外なことをおっしゃってました。

私も受けました、玲阿奈さんからのいくつかの『質問』に対してです。

「質問されるとは思っていなかった」
「質問されて頭が真っ白になった」
「私も自分の生徒に質問なんてしないから」
「こわかった」

とのことでした。驚きました。

私のバイオリンの先生はよく質問されましたから。「今どんな気持ちで弾いた?」「この曲はどの部分が難しい?」「この曲はどういう曲?」

もしかしたら日本の先生方は『質問』されないのか?と思えましたね。私のバイオリンの先生はルーマニア人でしたから。

その後の玲阿奈さん

悲しいことに現在、伊藤玲阿奈さんはもうクラブハウスにはいらっしゃいません。それだけではなくTwitterがXになるタイミングでTwitterもおやめになられましたし その後facebookも「個人的過ぎた」との理由でアカウントを削除されました。

私がスーパーレッスンを受講して、1年後くらいだったと思います。毎朝楽しみにしていましたので本当に残念でした。

今はInstagramと、公式のfacebookのアカウントから玲阿奈さんの様子を時々拝見するだけです。

しかし考えたら私のような一般人(達)に、一時的に優し過ぎただけであったと言えるかもしれません。玲阿奈さんが本来居るべき場所に戻って行かれた、ただそれだけのことかもしれません。

最後までお読みいただきありがとうございました。

ついでと言ってはなんですが、よろしければ玲阿奈さんにレッスンいただいた結果をお聴きになってみてください。

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