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脚本【今日、チョングク食堂から】

~はじめに~

noteお久しぶりとなりました。たかさらです!

今回は作家のマッサンこと益永あずみさんにお誘い頂き!!面白い企画をやらせて頂くことになりました!

同じテーマで脚本を書いてnoteに上げよう!という!
コラボ企画になります!🥰

テーマはその場でくじ引きで決めることに!(ノリ!)

「韓国居酒屋」「20代後半」「サムギョプサル」「仕事」

証拠写真が、今回noteの最初の写真になりました(笑)


【共通事項】

●主人公:20代後半
●テーマ:仕事
●舞台:韓国居酒屋
●料理:サムギョプサル
●2000字以上
●脚本


益永あずみさんの作品はこちらから!


この、”ヤギのミルク”アカウント、色々な創作をして、今後もnoteにあげていくそうです!
今後私もまた企画に登場するかもしれません!?🥰
ぜひぜひフォローお願いします!✨

ちなみに…お互いの作品はまだ読み合いっこしてないんです!テーマや条件が同じでも、きっと全然違うだろうから楽しみだなあ!✨


私がこれまで書いてきた脚本の中では…とてもとても長作となりました!
挑戦、してみました!🔥

サムギョプサルを食べると・・・!?

ちょっと不思議なお話です。
noteに上げる、というのだけしか頭になかったので
自由に!じゆーーーーーーーに書かせて頂きました!笑
(テーマ仕事なのにしっかり逸りまくった!笑
ってくらい自由度高めになってしまった!マッサン、すみません〜😂)


noteとしては、とてもとてーーも長いですが!

最後まで読んでいただけたら嬉しいです!
感想、お待ちしております!


「今日、チョングク食堂から」


【登場人物】

スンヨン・・・チョングク食堂で働いている。20代後半にみえる。
まどか・・・26歳。今日、後悔していることがあってチョングク食堂にやってきた。
ナポレオン・・・2000年前、チョングク食堂にやってきた。ずっと後悔していることがある。
アンドリュー・・・チョングク食堂に荷物を運ぶドライバー。

風太・・・まどかの彼氏。3年付き合っている。

指導者
民衆
軍人

上司
まどか友達
まどか母

「今日、チョングク食堂から」登場人物


<チョングク食堂>

お店のテーブルは2席。とても狭く、暗い雰囲気。お店のどこにもメニューはなく、テーブルとサムギョプサル用の鉄板のようなものが置かれている。お店にあるTVは韓国の大ヒットドラマ「天国の階段」がループでずっと放映されている。
厨房には食べ物や雑貨など様々な"モノ"が置かれいる。



スンヨンがテーブルを拭いている。
奥のテーブルにはナポレオンが座っている。
扉が開き、まどかが店に入ってくる。


まどか   すいません
スンヨン  こんにちは
まどか  (動揺した様子で)・・・ここは
スンヨン  チョングク食堂、といいます
まどか   食堂!?


まどか、あたりを見渡す。



まどか   うそ。ここ本当に食堂なの?
スンヨン  食堂、というよりは居酒屋の雰囲気に近いですか
まどか   居酒屋!?そうは見えないけど・・・
スンヨン     韓国料理の、ですね
まどか   よくわかんないけど。変な店(笑)
スンヨン  どうぞ、こちらにお座りください
まどか   あ、ごめん。私、食べにきたわけじゃなくて
スンヨン  知ってます
まどか   え!?
スンヨン  みんな、そうですから
まどか   みんな?
スンヨン  わからないのですよね?ここが、どこなのか
まどか   ・・・うん。気づいたらあたし、この店の前で倒れてて。ここがどこなのか、どうしてここにたどり着いたのか、全く思い出せないのよ。で、とりあえずこの辺の人に聞いてみようと思ってこのお店に入ったって感じ
スンヨン  大丈夫ですよ、変なお店ではありませんから
まどか   いや、怪しさ満点ですけど・・・
スンヨン  とりあえずこちらにお座りください
まどか   だから私、食べにきたわけじゃなくて


スンヨン、お冷を用意する。
まどか、戸惑いながらもスンヨンに促され座る。



スンヨン  では、まどかさん
まどか   え、なんであたしの名前を!?
スンヨン  まあ
まどか   まあって・・・こわいこわいこわい
スンヨン  まどかさん。よく聞いてください
まどか   ・・・なに?
スンヨン  あなたは今、ヒョンセンからチョングクにきました


一瞬の間。



まどか   は?
スンヨン (ゆっくり)ヒョンセンから、チョグクに/
まどか   ごめん丁寧に言われてもヒョンセンもチョングクもわかんないんだわ
スンヨン  まどかさんはまず、受け入れなければならないことがあります
まどか   受け入れなければならないこと?
スンヨン  はい


まどかもう一度あたりを見渡し、何かを察する。


まどか   ・・・ああ、そういうこと
スンヨン  わかりますか?
まどか   ・・・・・・死んだ
スンヨン  はい
まどか   ・・・そっか


一瞬の間。



まどか   そっかそっか。そうだよねーついにね!
スンヨン  ヒョンセンは前世、チョングクは天国という意味です。ここは"チョングク"、と言います
まどか   天国、チョングク。へえ、なんかちょっと似てるね。てか意味知ってるなら前世と天国で良くない?
スンヨン  そういう呼び名がありますから、そう呼んでください
まどか   じゃあー、あたしは今チョングクにいる、と。なんか気持ちも感覚も全然ヒョンセンのままなんだけど!
スンヨン  そうですか
まどか   ここ、本当に天国なの?よかったー地獄じゃなくて!


スンヨン   みなさん自分がチョングクに来たことに驚かれるのですが、まどかさんは受け入れるのが早いですね
まどか    まあ・・・なんとなくね?もうすぐ死ぬだろうな~って思ってたよ。?突然死んだわけじゃないしね
スンヨン   そうでしたか
まどか    で、私はどうしたらいいの
スンヨン   ここへ来る方には必ず理由があります
まどか    理由?ないけど
スンヨン   あります
まどか    だって目覚めたら店の前にいただけで、別に来たくて来たわけじゃない
スンヨン   理由がないと、ここへは来ないようになっているんです
まどか    え、そうなの?
スンヨン   ここへ来る方は、ヒョンセンに後悔や未練が/
まどか    待って。・・・ヒョンセンってなんだっけ
スンヨン   前生のことです
まどか    はいはい前世がヒョンセン。あー覚えにくい
スンヨン   ここへ来る方は、ヒョンセンに後悔や未練があります
まどか    後悔とか未練がない人なんていなくない?普通はあるもんじゃないの?
スンヨン   チョングクに来たら、本来ならなくなるのです。すべてが解放されますから。ですが、たまに後悔が残ってしまう方がいます。
まどか    そうなんだ。私は珍しいってこと?
スンヨン   はい。そういった方が時々ここへ来ます。
まどか    ふーん
スンヨン   ここは何もありません。縛りや、痛みなど、ありません。だからここでとどまらず、皆次へと転生していきます。まどかさんは何か思い残すことがあるんですね?
まどか    まあ、後悔は、ある。でも別にもういいよ?すぐ転生しても
スンヨン       残念ながら、一度ここへきてしまったら、それはできないのです
まどか    えーー。じゃあ私はこれからどうしたらいいの?
スンヨン   後悔をなくすため、食べます
まどか    食べる?何を?
スンヨン   サムギョプサルです
まどか    ・・・サムギョプサル?
スンヨン   はい
まどか      私は、サムギョプサルを食べにここへ来たの?
スンヨン   はい
まどか    ・・・何言ってるか全然わかんないんだけど
スンヨン   食べなければなりません
まどか    サムギョプサルに未練なんてないけど。てか別に今食べたくないし
スンヨン   ただサムギョプサルを食べるわけではないです
まどか    なにそれ。ますます意味わかんない
スンヨン   サムギョプサルに巻くことができるんです。自分がネセにもっていきたいものを
まどか    ネセ?
スンヨン   来世のことです。ネセに持っていきたいものを、包んで、巻いて、食べると持っていくことができます
まどか    え、待って待って整理させて。自分が来世、あーえっと、ネセ?に持っていきたいものをサムギョプサルで巻いて食べると、持っていける。あってる?
スンヨン        その通りです。
まどか    それを私は今からやるってこと!?
スンヨン   はい。忘れたくないもの、ずっと刻んでおきたいものを持っていくことができるのが、ここチョングク食堂なのです
まどか    すご。そんなことできるんだ・・・でも怖いんだけど
ナポレオン  よし!


ナポレオン、立ち上がる。
まどか、人がいたことにびっくりする



まどか   え!?なに!?
スンヨン  あ
まどか   私以外に人いたの!?
スンヨン  もうずっっっっと前からいました
ナポレオン よし、覚悟はできた。(スンヨンに向かって)用意してもらってもいいか?
スンヨン  ようやく、ですか
ナポレオン  今回こそは、今回こそは・・・本気だ
スンヨン  ・・・わかりました。まどかさん、申し訳ございませんが少々お待ちください
まどか   え・・・
スンヨン  せっかくなので、今からやることを見ていてください。これからまどかさんもやることなので
まどか   え、私も?


スンヨン、準備をしに厨房へ。
まどか、ナポレオンはじめて目が合う。



まどか   ・・・どうも
ナポレオン 君は、記憶がなくなることが怖いか
まどか   え?
ナポレオン 生まれ変わるということは、そういうことだろう
まどか   はあ・・・いや別に・・・
ナポレオン そうか


一瞬の間。



ナポレオン 後悔していることがあってな。どうしても忘れたくないんだ
まどか   え、後悔していることを忘れたくないの?
ナポレオン ああ
まどか   変なの(笑)
ナポレオン 君も、ここへ来たということはそういうことだろう
まどか   あたしは・・・別に・・・



スンヨンがサムギョプサルセットを持ってテーブルへ来る



スンヨン  では、火をつけます


ナポレオン、うなづく。
スンヨン、テーブルに置いてあるサムギョプサル用の鉄板に火をつける。
ナポレオンは火をじっと見つめる。
まどか、不思議そうに二人を見つめている。
だんだん空間が変わっていく。



まどか   何か、火から見える・・・これは何!?
スンヨン  ヒョンセン、前世の記憶です。
まどか   前世の記憶・・・



ナポレオンのヒョンセン(前世)の記憶がよみがえる。


<回想1>

時代は1700年後半~1800年。
フランスの民衆は国の情勢に不安を抱いていた。


民衆1   総裁政府は名ばかりで何にもしやしない!
民衆2          ようやくシャコバン派の独裁から穏健になったというのに、全く何をやっているのか
民衆3         今の我が国には民衆を引っ張ることができる強い指導者が必要だ!
民衆4         同盟国に立ち向かうにはあいつが適任だ!

ナポレオン、登場。



民衆     ナポレオン・ボナパルト!!
ナポレオン  私の辞書に不可能という文字はない!



民衆からは歓声があがる


民衆1            我が国の英雄だ!
民衆2    若いのに素晴らしい!
民衆3    ボナパルト万歳!!!


場面変わり、
国の指導者から呼び出されるナポレオン。



ナポレオン  クーデターを起こす、だと!?
指導者1     ああ。総裁政府は何もしやしない。このままだと今度こそ国が崩壊してしまう
ナポレオン  それは、一刻も早く止めなければ
指導者1            ナポレオン殿。君の力が必要だ。民衆は皆味方してくれるに違いない
ナポレオン  ・・・わかりました。協力します。共にこの国を守り、新しい政府をつくりましょう!!


ナポレオン、議会へ乗り込み総裁政府を解散させる。



ナポレオン  (民衆に向かって)革命の理念は実現された!革命は今!たった今終わったのだ!!!!
民衆      ナポレオンを皇帝に!ナポレオンを皇帝に!


場面変わり、
戴冠式。冠がナポレオンのもとへ




指導者1   では、教皇から冠を/


ナポレオン、自ら冠を取ってしまう。
一同、動揺する

ナポレオン  この冠は神から与えられるものではない!国民から与えられたものであり、私が勝ち取ったものなのだ!


歓声が上がる。




ナポレオン フランス国民の幸せは私が担う!この国を栄光へ導く!
民衆    ナポレオン万歳!皇帝万歳!


<回想1終わり>


火をじっと見つめているナポレオン。
まどか、驚いた表情


スンヨン  とても、華々しい人生ですね 
ナポレオン  二度とこのような人生はないだろうなと、思う
まどか   あなた・・・ナポレオンだったの
ナポレオン !?なぜ、私のことを・・・
まどか   めっちゃ有名だよ
ナポレオン そうなのか?(顔を見て)アジアでも?
まどか   世界的に
ナポレオン 世界的に!?
まどか   時代を越えてね
ナポレオン 時代を越えて!?それは・・・


ナポレオン、少し表情が緩む。



まどか   ていうか、死んだの何百年も前の話だよね?
ナポレオン ここに来たのは2000年前になる
まどか   2000年!?え、2000年なにしてたの!?
ナポレオン それは・・・
スンヨン  これだけ輝かしい人生ですから、すべて記憶が無くなることが怖いのですよね
ナポレオン そんなことは!!と、言いたい、が・・・
スンヨン  当たり前です。誰もがうらやむ人生ですよ 
まどか   うわ!ナポレオンって過去の栄光に浸る男だったのね!
ナポレオン ちょっと君/
まどか   しかも2000年も浸り続けるってどうなの(笑)
ナポレオン そ、そうではない!ちゃんと理由はあるんだ
まどか   まあでも、これだけ偉大なことして教科書に載るってすごいことだよね~。私なんか何もしてないし
ナポレオン ・・・さっきも言ったが私には後悔していることがある


ナポレオン、再び火を見つめる。




ナポレオン すべてがうまくいってるわけではないんだ
まどか   そうなの?幸せそうだったじゃん
ナポレオン いつか、栄光には終わりがくるものだ
まどか   そいえば、ナポレオン=英雄ってのは有名だけど、最期どうなったのか全く知らないや
ナポレオン 私は胃がんで最期を迎えた
まどか   そう、なんだ・・・
ナポレオン しかし後悔しているのはそれではない。あれだけ華々しかった私の人生は・・・私の人生は・・・



<回想2>

1800年前半。
皇帝についたナポレオンだが民衆は不安を抱いていた。
(回想1よりも民衆たちの目が冷たい様子)


ナポレオン 全ては我が国のため!向かうはイギリス本土!私の辞書に不可能という文字はない!
民衆4             自分で王政を壊しておいて何が皇帝だ!
ナポレオン 全ては我が国のため!イギリスとの貿易は一切禁止だ!
民衆1      元首が兄弟なんて、これじゃあ君主制と変わらないじゃないか!
ナポレオン   全ては我が国のため!イギリスの製品はすぐに捨てろ!
民衆2       結局権力か。どこが英雄なんだ             
ナポレオン   全ては我が国のため!イギリスにはなにもするな!
民衆3                 全く。ナポレオンにはひどく失望したよ
ナポレオン  全ては我が国のため!我が国のため!全ては我が国のため!


ロシア    イギリスとの貿易を再開する。それが我が国ロシアのためだろう
ナポレオン  おい・・・私の命令を背くのか!?
ドイツ    ドイツはフランスに支配され独立を失った!今こそ立ち上がる時!
ナポレオン  なぜだ!全ては我が国のため、私は/
スペイン    スペインの王はナポレオンの弟だなんて、間違っている!
ナポレオン  全ては・・・全ては、我が国のため・・・
民衆     ナポレオンを追放しろ!!!
ヨーロッパ   ナポレオンを追放しろ!!!


雨の音。ワーテルローの戦いが始まろうとしている。
ナポレオン、どこかを痛がっている様子。


軍人     皇帝、プロイセン軍が/
ナポレオン  ああ、わかっている・・・

ナポレオン、激しく痛がる。


軍人    ?どこか怪我でも
ナポレオン 大丈夫だ
軍人    しかし/
ナポレオン 真の恐れるべきことは有能な敵ではなく、無能な仲間だ
軍人    ・・・
ナポレオン ・・・他人のことなど考える暇なし。己の力のみ信じて行動しろ
軍人    ・・・はい
ナポレオン (フランス軍全体に向かって)この戦いは皇帝である私自らが指揮をとる!!私の辞書に不可能という文字はない!


ナポレオン率いるフランス軍とプロイセン軍の戦いが始まる。
大雨が降り続ける。
痛みながらも戦うも、次々とフランス軍が倒れていく



ナポレオン  私の辞書に

フランス軍が次々と倒れていく



ナポレオン  不可能という、文字は、文字は・・・


フランス軍敗れる。
ナポレオンは退位を命令される。



ナポレオン  ・・・全ては我が国のため。私はこの国の幸福の為に、帝位を、退く

ナポレオン、冠を外す。
島流しに合うナポレオン。
胃を抑え、痛みに耐えながら暗く狭い場所で静かに息を引き取る。


<回想終わり>


火を見つめているナポレオン



まどか   ナポレオンが後悔してることって・・・
ナポレオン ワーテルローの戦いに敗れてしまったことだ、痔で
まどか   それで皇帝の地位から一気に・・・ん?痔?
スンヨン  痔?
ナポレオン (お尻を触りながら)痔
まどか   え、え、え、あの戦いの時痛がってたのって・・・痔だったの?
ナポレオン (うなづく)
まどか   うそでしょ!?じゃあ最後の戦い敗れたのって痔のせいってこと!?
ナポレオン (うなづく)
まどか   えーびっくりってか教科書に書くべきだわ``ナポレオン、痔のせいで戦いに敗れ島流し‘‘って(笑)
ナポレオン あの時は本当に痛かったんだ。ヒルを塗ったが全く効かなかった。少し動いただけでも何も手につかないくらい痛みがあって・・・思い出すだけで苦しいくらいだ
スンヨン  それはそれは・・・
ナポレオン あれがなければ、勝利していたと思う
まどか   それがナポレオンが後悔していることなら、ネセに持っていきたいものってまさか・・・ボ・・・
スンヨン  ボ?
まどか   ボ、ボラギノー/


アンドリューが入ってくる。


アンドリュー  こんにちは。宅急便です
スンヨン    お世話様です
アンドリュー  こちらお届けにまいりました。ご確認ください


ナポレオンが箱を開ける。
そこには1815年製のワインが入っている



まどか     ボラギじゃないんかいっ!
スンヨン    ナポレオンさん。あなたがネセに持っていきたいものは、こちらですか?
ナポレオン   ・・・ああ、そうだ
アンドリュー  では、こちらにサインをお願いします


ナポレオン、サインする。



アンドリュー  ありがとうございます
スンヨン    ご苦労様です


アンドリュー、店を出る。


スンヨン   では、はじめます


スンヨン、肉をワインに漬け、焼き始める。





ナポレオン あの時、仲間に言うことができなかったんだ。
まどか   え?
ナポレオン 痛い。このままでは思うように戦えない、と。有能な仲間がいたのに、私は弱みを見せることができなかった。私が指導者だから、何としてでも指揮をとらねば、勝利を導びかなければとばかり考えてしまっていた
まどか   ・・・強がるよ。弱みなんて見せたくないもん
スンヨン  まどかさん?
まどか   あ、いや。これだけ支持されてるしさ
ナポレオン 2000年ずっと考えていた。このまま記憶をなくしてネセにいってよいのだろうかと。記憶を思い出してはやめてをずっと繰り返していた




ナポレオン、焼いている肉を見つめている。



まどか   地位とか権力とか?それだけじゃないよ。私、いらないし
ナポレオン いらない、だと!?私が人生をかけて/
まどか   あーそれはまじすごいと思う。でも、本当に大事なものってそれじゃないっていうか。やっぱり愛だと思うんだよ


スンヨン、突然空いたワインの瓶を割る。


まどか   何!?なんか気に障ること言っちゃった!?
スンヨン  ちがいます。大丈夫です
まどか   どこが!?危ないって
スンヨン  ナポレオンさん、出来上がりました
ナポレオン いただこう
まどか   ちょっと


ナポレオン、サンチュに焼いた肉と割れたガラスを丁寧に巻きはじめる。


まどか   まってガラス食べんの!?死ぬよ!?
ナポレオン 君は面白いことを言うなあ
スンヨン  もう死んでいますよ
まどか   あ、そっか。・・・いやでも痛くない!?
スンヨン  チョングクに痛みはありませんから
まどか   こっわ・・・


一瞬の間



ナポレオン ・・・どんな生涯においても、栄光はその最後にしかない。私の人生は本当に栄光と言えるのだろうか
まどか   栄光に決まってんじゃん
ナポレオン え?
まどか   歴史ちゃんと勉強してないからあんまりわかんないけど、あなたの生き方は現代にまでちゃんと伝わってる。きっとフランス革命がなければさ、自由とか平等とか?なかったかもしれないし。あなたの功績のおかげで今があるっていうか?説明が難しいけど、ちゃんと生きた証は残ってる。生まれ変わっても。だから大丈夫
ナポレオン ・・・


ナポレオン、サムギョプサルを食べる



ナポレオン ありがとう
スンヨン  ようやく、この日がきましたね
まどか   よかった
ナポレオン ・・・曖昧な記憶だが私が最期セントヘレナで過ごした時・・・最期、死ぬときは家族も仲間も来なかった
まどか   ・・・
ナポレオン もっと最初から、本心を言えることができていたら、きっと変わったのかもしれない。人を、もう少し信じていれば
まどか   信じる、か・・・
ナポレオン 1815年、ワーテルローの戦い。この日は絶対に忘れてはならない。食べることができて良かった。この後悔をネセに持っていくことで今度は・・・人を、信じてみたいものだな
スンヨン   ・・・きっと、できると思いますよ
ナポレオン  ありがとう


ナポレオン、外を見る。光が差している。





スンヨン  店をでたところに、今まで見えなかった道が見えると思います。そこを通ると、ネセへとつながる門があります
ナポレオン ・・・わかった
まどか   がんばってね。ナポレオン
ナポレオン 地位とか名誉ではないんだな。君のおかげで、ようやく食べることができた。ありがとう。
まどか    いや、お世辞でもなんでもなく、あなた本当に凄い人だからね
ナポレオン  またそうやって・・・君は褒め上手だなあ
まどか    いや、・・・事実を言ってるだけなんだけどな
ナポレオン  ネセでは・・・争いのない世界で生きてみたいものだ
まどか    それは無理だと思うよ。世の中ってのはね、小さい争いがたくさん散らばっているからね~
ナポレオン 私の辞書に不可能などない
まどか   それ、ネセでも使う気?(笑)
ナポレオン ああ




ナポレオン、扉を開ける。



ナポレオン  いざ!旅の始まり! 
スンヨン   いってらっしゃいませ
まどか    じゃあね。ナポレオン



ナポレオン振り向かずに手を振る。


まどか   いっちゃった
スンヨン  ようやく、ようやく旅立ちました
まどか   なんか、ナポレオンに会うとか、夢みているみたい。これって現実?
スンヨン  チョングクです
まどか   あ、そうか。それももうよくわかんないわ(笑)あ、ていうか思ったんだけど、ワインってさ、どこから持ってきているわけ?
スンヨン   ヒョンセンからです。
まどか    前世か。で?ヒョンセンにあるそのワインは、どうなっちゃうの!?
スンヨン   こちらにくるので、消えてしまいます。神隠しと呼ばれていますね
まどか   あー!神隠しってこのことだったの!?
スンヨン  さあ、次はまどかさん、あなたの番です
まどか   私も、2000年くらいここにいようかなあ
スンヨン  それは、とっても苦しいですよ
まどか   えーここはなんもないっていってたじゃん。ここにいた方が楽そうだし
スンヨン  まどかさんやナポレオンさんのようにはっきりと記憶が残っていると、苦しいですよ。
まどか   そうなの?
スンヨン  ここにずっといてしまうと、後悔が募る一方です。ネセにいくことが怖くなります。まどかさんは後悔していることがあるんですよね?
まどか   ・・・まあ
スンヨン  はやく食べてネセに行くべきです。ここにいても、何も意味がありません。絶対に行ってください


スンヨン、強い目をする。
一瞬の間。



まどか   んー。じゃあ・・・じゃあ、とりあえず準備だけして。とりあえずね?
スンヨン  わかりました。準備させていただきます



スンヨン、厨房へいく


まどか   さっきの郵便の人は誰なの?
スンヨン  (厨房から)アンドリューといいます
まどか   あーえっと名前じゃなくて
スンヨン  ヒョンセンから来た物を、こちらへと運んでくれる方です
まどか   そんな役割もあるのか~
スンヨン  はい
まどか   本当に食べるだけで持っていくことができるわけ?不安なんんだけど・・・
スンヨン  大丈夫です。ちゃんと持っていくことができます
まどか   ものってさ、ネセでどうやって出てくるの?例えばほらさっきのワインとか。赤ちゃんの頃は飲めないし持てないわけじゃん。ずっと手に持ってたりお腹の中にあるわけじゃないよね!?(笑)
スンヨン 違いますよ。人生の中でその“モノ”がたくさん出てくるのです。
まどか  人生のなかで出てくる?


スンヨン、厨房からサムギョプサルセットを持って戻ってくる。



スンヨン たとえばさっきのワインでしたら、ワインの夢が頻繁に出てきたり、1815年のワインが無意識に視界に入ってきてとても懐かしい気持ちになったりします。ネセに持っていくことで頻繁に思い出すようになります
まどか   そう・・・なんだ
スンヨン  繋いでいるのです。自分が生きた証を。では、火、つけますね
まどか   ・・・うん



スンヨン、火をつけようとする



まどか   待って!!!
スンヨン  ?
まどか   やっぱこわい。今からヒョンセンの記憶がでてくるんだよね
スンヨン  いえ、必ずでてくるわけではないですよ。火をみていると勝手に考えてしまうんです
まどか   勝手に
スンヨン  火は癒しの効果もありますから、ぼーっと見ていてください。それだけでいいですよ
まどか   ・・・うん


スンヨン、火をつける。
まどか、火をじっと見つめていると、ヒョンセン(前世)を思い出す。


<回想3>


まどかは入社4年目。
都内の会社に勤めている。
取引先と電話をしている。


まどか  はい、はいかしこまりました。それでは明日お伺いさせて頂きますので。はい、どうぞよろしくお願いいたします。失礼いたします。


電話を切り、デスクに戻ってパソコンで作業をしている。
作業中、腰が痛いのか、たまに抑えたり、伸びをしたりして痛みを緩和させようとしている。
まどか、作業終わり、社内の掃除をしている。腰はまだ痛そう。


上司  あのさあ、まどかちゃん
まどか はい
上司  あなた入社何年目?
まどか えっと、4年目です
上司  4年目!?
まどか はい・・・
上司  ・・・さっきから見てるとコマコマコマコマ動いて。新卒と同じ動きしてる。それでいいと思ってるの?
まどか ・・・すみません
上司  あなたももう上司の立場なんだから、成長しなきゃ
まどか はい。すみません・・・


上司、出ていく。
まどか、小さくため息。腰が痛む。
携帯に通知が来る。彼氏の風太からのライン。


風太  (ライン)今日はやくあがれた!今日うち来れる?ごはん一緒に食べようぜ!


まどか、少し笑い、ラインの返信をする。



まどか  (ライン)まじ?嬉しい!もうすぐ上がる!


場面変わり、風太の家。
仕事終わりのまどかと風太がいる。
食卓には風太がつくった料理が並んでいる。
2人、乾杯をし、缶ビールを飲む。


まどか  んあー!最っ高!!
風太   生き返るー。気づいたらつまみばっかり作ってたわ(笑)
まどか  本当だ(笑)ありがとね。いただきます!何から食べようかな~


まどか、楽しそうに、風太がつくった料理を食べる。
風太はまどかの顔をみて微笑む。


風太   来月どうする?
まどか  来月?あーそうだな~・・・
風太   どっか行きたいとこある?
まどか  じゃあ~・・・なんか``今、デートしてます‘‘って感じのとこ行きたい!
風太   なんだそれ(笑)
まどか  なんか、最近デートらしいことしてないし。そういう気持ち忘れたくないなあと思って?(笑)
風太   確かに。久しぶりにね
まどか  あ、じゃあさ水族館とかどう!?
風太   うわー懐かし!
まどか  ベタすぎる?(笑)
風太   うん(笑)でもいいじゃん。いこうよ
まどか  やった!
風太   夜さ、行きたいとこあるんだけど、水族館のあといってもいい?
まどか  え、どこ?
風太   それは秘密
まどか  えー気になるんだけど
風太   ・・・楽しみにしてて
まどか  うん。わかった


風太、嬉しそうな顔をし、料理を食べる。
まどか、風太を見て微笑む。
まどか、急に腰が痛み出す。




まどか   痛っ
風太    どした?大丈夫?
まどか   あー大丈夫。ただの腰痛。毎日ずっと座りっぱなしだからもう痛くて痛くて
風太    だよな。俺も肩めっちゃ凝ってる
まどか   最近整体全然いけていないしそろそろ行かなきゃ。いたたたた
風太    もうおばあちゃんだな(笑)
まどか   やめて(笑)
風太    無理すんなよ?
まどか   ありがと


場面変わり、
学生時代からの友達とカフェに来ている。


友達1          あんた、それは絶対くるよ
まどか  いやいやいや
友達2         私もそう思う
まどか  ないない
友達1          その日が3年記念日なんでしょ?
友達2          プロポーズ以外「夜、いきたいとこある」なんて言わなくない!?(笑)
まどか  そうなのかなあ
友達1          向こうは絶対その気だよ
友達2   間違いない
まどか       なんか急に緊張してきたんだけど(笑)
友達1           いいなあ。うちらの結婚第一号はまどかだったか~。おめでとうございます
友達2            おめでとうございます
まどか   ちょっと2人とも。まだ、プロポーズされたわけじゃないから(笑)
友達1・2         いいなあ

まどか、照れている様子。
場面変わり
会社。
まどかはいつも通り仕事をしている。
腰が痛く、気にしながら仕事をしている。


上司   まどかさん。ちょっと
まどか  はい・・・


まどか、上司から紙と資料を渡される。
そこには「再検査のお知らせ」と書かれている通知書、病院の資料


まどか  ・・・

まどか、風太にラインをする

まどか  (ライン)ごめん風太。水族館行けなくなった


場面変わり、病院。


医師   血液検査でねCEAとかCA15-3、1CTPの値が若いのにかなり高いのよ
まどか  ・・・
医師   ホルモンの値とか、骨のコラーゲンが血液にどれくらい流れているかとか、まあ、そういったところなんだけど、
まどか  ・・・はい
医師   ていってもね、これはあくまで腫瘍マーカーだから。別に痛いところとか、調子悪いってこと、ないでしょ?


まどか、そっと腰に手を置く。


まどか  ・・・
医師   怖いだろうけど、確実ではないから。一度、マンモグラフィで見てみましょう
まどか  ・・・はい


場面変わり、
後日病院。
まどか、紙を一枚持っている。
結果のお知らせ。
乳癌level4と書かれている。
まどか、茫然としている。

その日の病室。
まどか、天井を見つめ横になっている。
放心状態。
まどかの電話が鳴る。

まどか  もしもし。お疲れ様。んー?なんもしてない。いまから寝るとこ。ごめんね?今日行けなくて。・・うん、また今度、今度、ね・・・。ごめんちょっと今日疲れちゃって。もう寝たい・・・うん。ごめんね!ごめん。・・・おやすみ・・・。(電話切る)

まどか  ごめんね


数日後。
病室にまどかの母がいる


母    彼に言ったら?
まどか  ・・・言いたくない
母    このまま、何も言わないままでいいの?
まどか  でも、でも・・・


まどかのスマホにラインの通知がくる。


風太  (ライン)最近忙しい?今週、どこか少しだけ会えないかな?話したいことがある


まどか、少し考え返信する。


まどか (ライン)いいよ。私も、話したいことがある

場面変わり、
公園。
まどかと風太がいる。

風太    なんで公園?
まどか   たまには良くない?
風太    うーん。あ、いや、公園で話そうなんて言われたの初めてだからさ。大丈夫?なんかあった?
まどか   ごめん、最近めっちゃ忙しくて!もーやんなっちゃうわ
風太    大変だな。顔、疲れてる
まどか   そう・・・かな


風太、まどかの顔に触れようとする。
まどか、それをよける。


風太   ?・・・あ、そうだ!話って?
まどか  あー。実はさー、実は・・・



まどか、少し考え、話しはじめる。


まどか   別れたくて!
風太    え・・・?
まどか   気が付かなかった?最近、会えないっていうか、会わないようにしてたの
風太    え、・・・なんで
まどか   なんかもう好きじゃない!うん。好きでいられないかも!忙しいってさっき言っちゃったけど、今までも忙しい時でも会ってたじゃん。会わないってそういうこと。察してよね
風太    嘘だ。嘘だろ?
まどか   ・・・嘘、じゃない。無理だよ、もう無理
風太    おかしい。まどかやっぱ変だよ
まどか   おかしくない変じゃない!!私は私だよ。別に普通なのに。なんか私した?結構、私頑張ってきたつもりなんだけどな・・・なんでこんなことに
風太    まどか?・・・大丈夫か?
まどか   そうやっていつも優しくされるのとか、気にかけてくれるのとか、・・・やめてほしい。しんどい
風太    ・・・まどか
まどか   一緒にいるのが、辛いです


まどか、帰ろうとするが、風太に止められる。

まどか   ついてこないで
風太    ・・・


まどか、その場を走って去る。

<回想終わり>


スンヨン  自分から、別れを告げたんですね
まどか   そうするしかなかったよね
スンヨン  正直に伝えることは、難しかったですか
まどか   言えないよ。巻き込みたくないし。人生変わっちゃうでしょ?もし病気のこと言って籍入れて死んでたら。・・・女なんて沢山いるしさ、これで良かったんだよ
スンヨン  でも、まどかさんの後悔は・・・


まどか、再び火を見つめる



まどか   私の後悔は、後悔でいいんだよ。だって風太に伝わっちゃったら・・・風太が辛いだけなんだから


<回想4>


病室。
まどかが一人でいる。

まどか  (紙に書く)ありがとう。一番言いたかった言葉を言えなかった。こんなお別れ、嫌だったけどこうするしかなかったんだ。ごめんね。どうか、どうか私の分まで幸せになってください。心から願っています。ずっと笑っていてね。
__でも、神様。もし、次生まれ変わることができるのなら、風太と結ばれる人生でありますように。


まどか、書き終え横になる。
しばらくして、書いた紙をぐちゃぐちゃにしてごみ箱に捨てる。
目をつぶる。


<回想終わり>


アンドリューが店に入ってくる。



アンドリュー  宅急便です
スンヨン    お世話様です
アンドリュー  こちらお届けにまいりました。ご確認ください


まどか、立ち上がり、宅配物を確認する。
そこには、ジュエリーケースが入っている。
ジュエリーケースを開けると指輪が入っている。


まどか     ・・・ほんとに、渡す予定だったんだ
スンヨン    まどかさん。あなたがネセに持っていきたいものは、こちらですか?
まどか     うん。でも、これって向こうでは神隠しになってるんだよね
スンヨン    そうです。ここに、あるので
まどか     そっかー。風太、無くなってびっくりするだろうな。・・・でも、私が貰う。受け取って、ネセまで大事にする
スンヨン    そうしましょう
アンドリュー  あともうひとつ、入っていると思います
まどか     え?


まどか、宅配物を確認すると、捨てたはずの手紙が入っている。


まどか     あーこれ。お母さんが気づいて取っておいてくれたんだ。恥かしっ
スンヨン    素敵ですね
まどか     まあ、これもネセに持っていくとするか
アンドリュー  では、こちらにサインをお願いします


まどか、サインする。



アンドリュー  ありがとうございます
スンヨン    ご苦労様です
まどか     ありがとうございます

アンドリュー、店を出る。


スンヨン   では、はじめます

スンヨン、肉をワインに漬け、焼き始める。


まどか   はーなんか緊張するなあ。途中でやめたくなるナポレオンの気持ち、わかるわ
スンヨン  大丈夫です。あとは食べるだけですから
まどか   ってか、この指輪食べるんだよね!?飲み込めるかな。怖いんだけど
スンヨン  チョングクには痛みなどありませんから
まどか   多分、この紙は食べれると思うけど・・・ん?


まどか、紙を見ると、そこに震えた文字で一言書かれている



まどか   (紙を読む)まどかのこと、一生忘れない・・・風太だ。なんで・・・
スンヨン   きっとまどかさんがチョングクに来た後、お母さまが渡したんでしょうね
まどか    ありがとうって直接言えなかったけど、伝わったなら、良かった・・・良かった
スンヨン   できました。どうぞ、お召し上がりください



まどか、サンチュに焼いた肉と指輪、手紙を丁寧に巻きはじめる。


まどか   いただきます


まどか、サムギョプサルを食べる。
食べ終えると、外に光が差し込む。




まどか    ご馳走様です
スンヨン   これで、まどかさんもネセへとつながる門へ行くことができます
まどか    良かった。本当に、ここに来れて良かった。ありがとう
スンヨン   それは、良かったです
まどか    結局、わたしから別れようって伝えただけで、風太は一度も別れようなんて言わなかったんだよね
スンヨン   そうなんですか
まどか    風太は気付いてたと思う。全部・・・ネセで、結ばれるかわかんないけど、この指輪を大事にできるのは、本当に嬉しい。ありがとう
スンヨン   いえ私は
まどか    あ、えっと名前
スンヨン   スンヨン、と言います
まどか    スンヨン。ありがとう。先に聞けばよかったね、ごめん
スンヨン   いえいえ
まどか    そいえば、スンヨンのこと、何も聞いてなかった。なんでここで働いてるの?
スンヨン   人を、待っています
まどか    人。大切な人?
スンヨン   はい。その人とサムギョプサルを食べたら、ネセに行けます
まどか    そうなんだ。モノじゃなくて、人、だったりもするんだ
スンヨン   はい。それが私の後悔なので
まどか    そっか。大丈夫!いつか一緒に食べれる日が来る!だってナポレオン2000年だよ!?きっと、来るよ
スンヨン   ・・・はい。ありがとうございます
まどか    また、会おうね
スンヨン   ここで待ってます
まどか    ここじゃなくて、ネセで会えるといいね
スンヨン   そうです



まどか、店の扉を開ける。


まどか    よし。(振り返って)ありがとう!いってきます!
スンヨン   いってらっしゃいませ


まどか、店を出る。



スンヨン   待っても待ってもここに来ることはありません。その人に後悔はありませんから


スンヨン、片付けをする。
そこに、アンドリューが入ってくる。

スンヨン    ・・・ご苦労様です
アンドリュー  あの・・・僕たちの仕事は
スンヨン    ・・・はい
アンドリュー  本当に、これでいいのでしょうか
スンヨン    なぜ、そう思うのですか?
アンドリュー  後悔をネセに持っていくことは、本当に良いことなのでしょうか
スンヨン    いいかどうか、はわかりません。ただ、ここは何もありません。何にもないのです。だからここでとどまらず、皆次へと転生していきます。ここにいては後悔が募る一方で、苦しいですから
アンドリュー  苦しいです
スンヨン    ネセへと行ってもらうことが、私たちの仕事です
アンドリュー  ・・・そう、ですね
スンヨン    私たちはチオクにいる。これを忘れてはなりません
アンドリュー  ・・・はい


スンヨンが片付けをしはじめる。


アンドリュー  ・・・もう少し、ここにいてもいいですか
スンヨン    はい。いいですよ


スンヨンがテーブルを拭いている。
奥のテーブルにはアンドリューが座っている。
扉が開く。


<終>



















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