チャイルドペナルティなうです#048
2023年ノーベル経済学賞を受賞された、クラウディア・ゴールディン教授の研究から、「チャイルドペナルティ」が話題になっています。
経済学というと、抽象的な理論で実感値の比較で身近に感じにくいのですが、男性育休を7ヶ月取得してみて、ゴールディン教授の言ってることを、「俺のことやないか!」とビシビシ体感しています。
先日のVoicyフェスでの、木下斉さんと細野豪志さんの対談でも、チャイルドペナルティは今後の議題として重要と話されていました。体験記と改善に向けた案を書きたいと思います。
チャイルドペナルティなう
私自身、いま見事にチャイルドペナルティを受けまくってます(笑)
育休を7ヶ月取得したことで、仕事量は少し減ったものの、部署間横断プロジェクトからは外れ、夜や出張などの予定も制限されることになりました。
そして、もちろん手取り収入も育休制度からの支給はありますが2割ほど下がりました。賞与も減りました。
育休明けには、育休経験を仕事に活かせそうかを問われる場面や、学びの経験を語り合う機会もなく、自然と怒涛の如く仕事が始まっています。
ん?育児という過酷なプロジェクトは職場、ビジネスフィールドでは全く評価されないのか?となんともやるせない気持ちになりました。。。
こうした変化から、
突発的な上司からの依頼に対応することが難しく、むしろ突発的な子どもの対応で平謝りしながら有給休暇をいただき、子どもを小児科に連れて行くことが増える。。
職場や仕事における新たな人的ネットワークの形成が難しく、
アンオフィシャルなルートからの大事なネットワーク情報が入ってこなくなり、組織を動かすための情報や政治力学が弱まりました。
いわゆるタバコ部屋的なダべり(タバコは吸いませんが)による、内部情報が入りにくくなりました。。
いろいろ周りが配慮してくれるものの、仕事自体が減るわけではないので、個人として意地でも生産性を上げて乗り越えていこうとしてるが、誰からもケアはされないなとも感じています。
働く意欲もありますし、コツコツやってきましたが、このままでは、いゆゆる組織内での立場にはポジティブな側面がなさそうです(笑)それくらいのことを感じ取れるセンサーが壊れていないことは分かりました。
ということで、まぁチャイルドペナルティを体験させてもらっています。がっつりチャイルドペナルティなうです!
ロジカルに考えて、収入が減るし、職場での立場も良くなくなるし、復帰後も変わらないボリュームを何とか短い時間でこなしてね!という無理ゲーをさせる社会で子どもは増えるのでしょうか。そして、組織内での立場に敏感な男性は育児休暇を取るのでしょうか??
私は双子に加えてもう一人産まれて、妻が産後うつになり、実家の力を借りのも限定的という超絶追い込まれているので、がっつり長期間取りましたが、
こういう特殊事例以外では、取得するインセンティブが皆無です。
むしろ、これでもかと男性育休を取得させない仕掛け、地雷が埋まりまくってるジャングル化しています。
こんなペナルティだらけ、地雷だらの社会でも、それでも子育てしながら、働くワーママさんたちは、総理大臣よりも何倍も偉いと思います。本当に凄い!
もう、ノーベル経済学賞でも分析されていて、明らかに現場では子育てしながら働く過酷さを感じているので、これは、政策や企業制度で変えていきつつ、個人としともしっかり防衛して、新たな生き方を模索しないといけないと思います。
私としては以下の3点が、大切だと思います。
子育て支援においては、生産性を高めた職場に変えることが大前提ですが、
(1)時短勤務者の給与を減らすことを止めるなど、産後の所得格差を是正する政策を実行すること
(2)子育て経験をキャリアフィールドにおいて高く評価する仕組みを取り入れて、子育て中の社員が、情報や人的ネットワーク格差を克服して、新たなネットワークを形成する仕掛けを創ること
(3)その上で、政府政策や企業組織の変革には時間がかかりますので、個人としては、育休を契機として、生き方を見直して、1つの組織に頼らずに新たなマルチ収入源を創りはじめていくことが大切だと思います。
ゆえに私もnoteを書きはじめました。静かなる革命です。
以下にて、今回のノーベル経済学賞で気になるポイントと、3点の改善点を書きたいと思います。
ノーベル経済学賞でのチャイルドペナルティの議論
ゴールディン教授は、なぜ男女格差が残るのかという点について、以下のように分析されています。
大学卒業直後は男女の差はわずかだが、途中で女性はキャリアを中断、所得低下を経験。その後も賃金・所得の差は持続する。男女間の格差は、子供が生まれた後に拡大すると解明しました。
子育ての影響の男女差を説明する1つの要因として、「職場の柔軟性の欠如」を指摘しています。長時間働くことをいとわない労働者はより高賃金で働ける傾向にあるが、子育ての責任を多く負う女性には、それが難しい傾向にある。
当たり前ですよね、保育園送迎中は電話に出れないし、寝かしつけ中の電話とかは反応できずに、キレそうになりますからね。
上司から見たら、レスの悪いやつ。こいつに頼むより、長時間オレのことにすぐに反応してるやつに頼もー、となりますよね。人間(特にオジサン)の当たり前の心理を前提においた身も蓋もない結論です。
ここでは、女性の指摘がされていますが、男性育休を取得して時短勤務に変わる方も構造は同じになると思います。
時短勤務の給与減は即座にやめるべき
新卒では子育て支援をしてます!とアピールしてる経団連企業でも、実際には子どもが生まれたら時短勤務になり、しかしながら、仕事はこれまでのフルタイムと変わらずという会社はたくさんあります。
育休取得者も真面目ですし、フルタイム復帰後の新たなチャンスを掴むべく、涙ぐましい努力をしています。
朝の怒涛の保育園送迎後に、即座にスマホでメールを返し、予定を調整し、分刻みで仕事を生産性高めまくってやりながら、気づいたら夕方になり、急いで保育園に迎えに行き、夕飯、お風呂、寝かしつけをしていたら、少し寝てしまい、慌てて起きて、明日までの資料に目を通して、メールに返答し、深夜に泥のように寝る。というサイクルです。
昭和の専業主婦に依存していた長時間職場にいるのが大好きなオジサンには全く想像できないスケジュールです。
※もちろん、これはサステナブルではなく、疲弊しますので、脱却しましょう。
以下の記事が、参考になるかと思います。
ともあれ、時短勤務というだけで、実態はフルタイム勤務者と変わらない仕事をしているのに給与は下げる、というのは明らかに不合理です。
本当に子育て支援をしている企業の人事制度なのでしょうか?
せめて、まずは時短勤務による報酬格差は是正する。そして、同時並行で処遇も差別しないことを徹底して進めていくことが大切です。
組織内でのポジションに敏感な男性ほど、離れることで組織内での立場に不利にななることを嫌いますので、男性育休取得の推進には不可欠な取り組みです。
企業にとっても、本当に優秀な社員が、やめていくことや、力を発揮して働けなくなるのは大きな損失です。
特に経団連加盟企業は全て、時短勤務者の給与を削減することをやめると経団連会長が宣言し、即座に実行しましょう。
子育て経験をキャリアフィールドにおいて高く評価する仕組みを創ろう!
また、シラク3原則のように、子育てプロジェクトは難しいことに取り組んでいるので、育休中も昇格昇任させるという制度を入れるなど、育休取得は能力開発の機会でもあり、仕事力が上がるということを理解する必要があります。
育休取得による学びを言語化して振り返り、仕事への示唆を共有する場を設ける。
プロジェクトマネジメントの視点から育児の経験を学びに変える。
ワーママ、ワーパパ目線で職場の生産性を高める施策を検討し、皆で生産性を高め合う。そうしたアイディアや声に対して敬意と報酬を支払う。小林製薬の子育て版の仕組みを導入するなど、子育て経験をビジネスフィールドで高く評価する仕組みや実践知の共有を進めていくべきだと思います。
これらの取り組みにより、情報や人的ネットワークの格差を是正して、子育て中の社員の情報ネットワーク、人的ネットワークを形成する仕掛けが必要だと思います。
個人としてはキャリアを考え直す契機とし、新たに稼ぐ力をつけていく
政府政策や企業組織の変革には時間がかかりますので、個人としては、育休を契機として、生き方を見直して、1つの組織に頼らずに新たな収入源を創りはじめていくことが大切だと思います。
また、子どもと暮らす場所や住宅の検討など、ライフイベントの変化により、自身の生き方、これからのキャリアについても見直す絶好のタイミングになります。
これまでの仕事を振り返り、子育て経験を発信してみたりするなかで、新たな仕事を創りだすための行動を始める時が来てるのだと思います。
私自身も双子育児をなめるんじゃない。仕事よりもよっぽど難しいんだ!と、怒りまくりですが、
チャイルドペナルティの構造要因を冷静に分析して理解しつつ、組織や政府にすべてを期待するのではなく、自分側から変革を起こしていき、複数の収入源を確保しながら、幸福な人生のデザインができるように挑戦したいと思います。
そして、次世代には少しでもチャイルドペナルティのない、生きていきやすい社会を創れるように行動していきたいと思います。
子育て世帯、声をあげていきましょう!