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旅の備忘録

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#この街がすき

旅先の夜を、愛している。

旅先の夜を、愛している。

「それでは、また。」
「今度は、益田で一泊しますね。」

益田駅前で知人と挨拶を交わし、フルーツサンドを手に特急列車に乗り込んだ。

電車は、ガタゴト音を立てて、時おり大きく揺れながら東へと進んでゆく。
視界が開け、左手には真冬の日本海が広がる。
買ったばかりのフルーツサンドを頬張り、イヤホンを耳に差し込んで。背もたれをゆっくりと倒す。

うとうとと少し眠っている間に、電車は松江駅に到着した。

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冬の終わり、再び沖縄へ。

冬の終わり、再び沖縄へ。

3ヶ月ぶりに、わたしは早朝6時の羽田空港で搭乗を待っていた。

眠い目を擦りながらの日の出フライト。
飛行機は轟音とともに地上を離れ、眼下にはまだ半分眠ったような東京の街と、朝日に照らされた橙色の静かな東京湾が広がり、そこを幾隻もの船が行き交っているのが見えた。
この場所、この時間帯にしか味わえない最高の、至福のひととき。
早起きは辛いけれど、やっぱり早朝フライトはやめられない。

石垣空港に降り

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砂丘、そして海のあるところ。

砂丘、そして海のあるところ。

仕事柄ほんとうに出張の多い毎日を送っているのだけど、2023年の出張初めはそう、ここ鳥取。

前回訪れたのは二十数年前…
まだ6歳か7歳か、小さな子どもだった頃。

家族四人、新潟から車ではるばる父の実家のある広島へ向かう途中、鳥取砂丘に立ち寄った。

といっても、わたしが分かっているのは立ち寄ったらしい、ということだけ。

ほぼ記憶はないのだけど、なんとなく。頭の片隅で、どこまでも続くように見え

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まだ夏の匂いがした、沖縄。

まだ夏の匂いがした、沖縄。

10月の終わりに、ついにコロナになってしまって。
かなりキツい療養期間を終え、回復したとはいえまだなんともいえない倦怠感を残したまま、仕事で沖縄を訪れることになった。

早朝6:35、羽田発。
こんなに早起きしたのはいつぶりだろう。
眠い目を擦りながら、搭乗口のそばでアナウンスを待っているうち、朝日がゆっくりと空港内をオレンジ色に染めていく。

朝日とほぼ同時のフライト。
窓側の席をちゃっかりと確

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赤い電車は、品川から僕らを乗せてひとっとび。

赤い電車は、品川から僕らを乗せてひとっとび。

七月某日。
その日、東京では明け方までしとしとと雨が降っていた。

朝起きて、雨雲レーダーを10分おきに眺める。
三浦半島にかかっている雨雲は、正午までには東京湾へ抜けていきそうだ。

私たちは、みさきまぐろきっぷを買って、品川から、赤い電車に乗り込んだ。

ファソラシドレミファソー。
くるりの「赤い電車」のメロディーが頭の中で流れている。
電車は、線路沿いの家々のすぐそばを走ってゆく。
人びとの

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潮風の吹く、心地良い街。

潮風の吹く、心地良い街。

仕事柄、出張が本当に多い。

四月からほぼ毎週、主に北関東の市町村を訪ね歩く生活を送っているのだけど、
その中でも茨城県、特に日立市とひたちなか市はなんだか私にとって特別な街だ。

勝田駅からひたち海浜公園に向かってまっすぐ車を走らせていると、突然目の前に広がる真っ青な海と空。

日立駅のエスカレーターを降りるとすぐに目に飛び込んでくる青。

優しく頬を撫でて通り過ぎてゆく、海からの風。

落ち着

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はじめての秋田。男鹿半島は青と緑。

はじめての秋田。男鹿半島は青と緑。

ふと思い出した、去年の夏仕事ではじめて訪れた秋田のこと。
東日本で唯一、まだ足を踏み入れたことのなかった場所。

季節は八月のど真ん中、夏まっさかりで、どこへ行っても日差しが煌々と眩しかったのを憶えている。

同僚とわたしは、自転車に乗って男鹿半島を駆け抜けた。
自転車を、漕いで漕いで漕いで。下り坂は、ペダルから足を離して一気にくだってゆく。
日差しはジリジリと熱いけれど、頬を撫でる海風が心地よく

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