外資系企業人事部長の部下へ宛てたHR Letter「グローバル企業での働きかた」 第15話 包括的な対応ができること

第15話 包括的な対応ができること

業務を遂行するにあたって知識やコミュニケーション力が重要なことは周知のとおりですが、これにあわせて多面的な見方ができること、状況を理解していることが必要とされます。別の言い方をすれば、仕事を行う際のジャッジが偏らず、バランスが取れているかということがとても重要です。

仕事を熟知し、きちんと実績をあげていても、融通が利かない、正論ばかりをいう、という傾向があったとしたら、果たして業務をスムーズに進めることはできるでしょうか? 仕事をするということは、決められたことをきっちりとこなすだけではなく、複雑な人間関係の中で一定のコンセンサスを作るということです。そのためには、方針の展開、その進め方に工夫が必要です。

また、周囲の人とのコミュニケーションがうまくても、複雑で難易度の高い案件の場合、例えば、何か今までのやり方を変えなければならないといった場合は協調することだけでは結果は出ません。そういった時には、なぜそうしなくてはいけないか?という背景を利害関係者に納得させる、あるいは納得しないにせよ、反対がしずらいシナリオを作らなければなりません。そ
れは、言い換えれば、複雑な利害関係を包括的に理解し、本質を曲げない中で、より受け入れやすいアプローチを考えるということです。

ひとつの例をあげましょう。

あなたはある仕事を改善したいと考えています。それは他の人も巻き込まないと実現しません。そのためには周囲の人に改善を依頼することになります。しかしながら、この改善は相手の現行の仕事プロセスを否定し、変更することを意味します。この場合、適切なステップで相手を口説かないと改善は進みません。「あなたの業務に問題があるから改善すべきだ」といった単純なアプローチは適切とはいえません。

そこで、次のようなステップをとることにします。

1.会社(あるいは部門)のテーマとして、トップから改善の指示を受けていることを認識してもらう

2.トップからの指示に応えるため、自分が業務の改善を行っていることを理解してもらう

3.改善を実現するためには協力が必須であること、是非一緒に改善を行ってほしいことを説明する

4.上司からも自分に対して改善の強い指示がきており、依頼者と協力して対応していることを報告したい。つまり、このことは自分だけではなく、依頼者にとっても成果であることを説明する。

このようなステップを踏むことで、相手は、労力をかけて現状を変えることに対してコミットしやすくなるものです。様々な要素を考えた「包括的な対応」は、人を巻き込んだプロセスの変更というような複雑な案件には必ず必要となるのです。 


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