外資系企業人事部長の部下へ宛てたHR Letter「グローバル企業での働きかた」第32話 多様性とエビデンス

第32話「多様性とエビデンス」

グローバル企業の1つの特徴は、人種、国籍が多様であることです。私の身近な同僚を例にとってもアメリカ、イギリス、スペイン、イタリア、フランス、ブラジル、メキシコ、中国、インドとカラフルです。また、アメリカ人といっても韓国系、ラテン系、東部、中部と様々です。

グローバル会議で議論が始まると大変です。ちょっとしたことでも色々な意見、質問がでます。そもそも色々な制度などは欧米のスタンダードを前提に説明がされていることが多いのですが、アジアにはアジアの、中近東には中近東の、北欧には北欧の、そして日本には日本のスタンダードがあり、必ずしもスタンダードが同じではありません。従って、国や人種が異なるとおきてくるのが常識の違い、それに伴う理解の違いによる議論です。

この際、多くの日本人が常識や環境の違いの中で働くことに慣れていないため面食らうことになります。多くの日本人は経験不足のためと思いますが、このような多様性を受け入れる柔軟性が不足していると思っています。加えて日本人は多国間での議論に慣れていません。

一方、その他の国の人は元々多国間での議論に慣れている上、相手の常識がどうのこうのということを意識せず、自分が疑問に思ったことをしっかりと主張することに慣れているのでそのことで悩むことはないと思います。言葉に関しては、もちろん標準は英語ですが日本で習うような英語を話す人はごく一部です。従ってコミュニケーションがうまくできないケースも多く、正しく伝わったのか否か、相手が賛成したのか否か、あるいは言ったのか否かについてもめるケースがあります。

ですから、そういう状況を前提としてどう考えるのかが必要で、重要な決定については必ずエビデンスをとることが必要です。文字になればさすがにほとんどの場合お互いのギャップを生じません。従ってできるだけ具体的な、シンプルなエビデンス文書を残すことが必要です。

まずはメール一本でよいので、相手の判断が明確にわかるものを確保することがビジネスの基本です。

もちろん、エビデンスを声高に言い始めると相手の機嫌を損ねたり、関係を壊してしまうこもないわけではありません。これをスムーズにおこなうためには、日ごろの人間関係やコミュニケーション上のスキルを高めておく必要があります。


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