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あじあのおんがく

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#音楽レビュー

ヘヴィ・メタルはネパールを救う: Metal For Nepal の奮闘

50秒。2015年にネパールで起きた地震はわずか50秒で壊滅的な被害を引き起こしました。その運命的な50秒は、首都カトマンズとその周辺で9000人の死者と2万人以上の負傷者を出し、60万もの建造物を破壊することにつながったのです。エベレスト山では雪崩まで発生し、復興費用は90億ドルとも言われています。この規模の地震は世界中どの場所で発生しても壊滅的ですが、ネパールは世界でも最も貧しい国の一つ。ゆえに、被害と状況はさらに悪化していきました。国連は、この地震のために280万人のネ

#009. 突如としてインドに現れたヘヴィメタルの化け物、BLOODYWOOD。

はじめに日本列島にはいくつの島があるのか、ご存知だろうか。 政府の公式発表では、北海道、本州、四国、九州、沖縄本島を含め、その数、なんと6,852島である。 領土は先人の努力の結晶とはいえ、この数は半端じゃない。 ちなみに、本土を除いた6,847島については、全て「離島」としてカテゴリされている。 その中でも、人が住んでいる有人島はたったの416島。 それ以外の6,432島は無人島と呼ばれている。 無人島。 ああ、無人島よ。 これほどロマンを感じさせる日本語が他にあった

Khöömei Beat / CHANGYS BAGLAASH(2021、トゥヴァ@ロシア)

おススメ度 ★★★★★ホーメイビートはロシア連邦を構成するトゥヴァ共和国出身の6人組のバンド。ホーメイ(喉笛)はモンゴルのイメージが強いが本場はどうもトゥヴァのようだ。以前、The HUの記事でも取り上げたがUSの盲目のギタリストがホーメイに魅せられ、本場の達人とコラボレーションをしにいく「ジンギスブルース」という映画がある。この舞台もトゥヴァだった。実際にモンゴルに行ったときにウランバートルでホーメイの舞台も見る機会があったのだが、モンゴルのホーメイはどうもトゥヴァのものと

Jaubi / Nafs At Peace

総合評価 ★★★★☆ パキスタン、ラホールの4人組バンドが多くのゲストを迎えて作ったアルバム。基本はジャズロックと北インド音楽(ヒンドゥスターニー音楽)の融合であるが、北インド音楽とロックの融合、という意味ではこの記事で取り上げたアーティストのような衝撃はない。その分、西欧音楽というかジャズロックの範疇には収まっており、より普遍的な層にもアピールできるというか、バランスが良いのかもしれない。インド古典音楽のファン層よりジャズロックのファン層の方が(インド文化圏以外では)多い

日本民謡と内臓の身体性について

西洋のマーケットとは別のところでやりたいなと思った。 ●新曲「su-mu」は、“日本の民謡”が曲作りにおけるキーワードになったとのことですが、昨年リリースした1stアルバム『ほとんど、空』の頃からそういった関心はあったんですか? 井上:前作は、内省的なものを作りたいと思っていて、中2病的な“自分とはなにか”みたいなテーマがあったんだよね。でも、そういうテーマは“もういいかな”ってなっていたときに、筒井康隆の『残像に口紅を』という本に出てくる“内在律”というワードを思い出

2021年、越境する中国電子音楽シーンの“みずみずしい音”

COVID-19が世界中で猛威を奮う中、新しい音楽は日々誕生している。特に電子音楽シーンでは、Before COVIDの頃よりも、より深いレベルで「創作の探究」が進んでいる。 今回は、盛り上がりを見せる電子音楽シーンの「今」を紐解く第一回として、Google Earthで〈中国〉を訪れた。 李化迪 (Howie Lee)「Birdy Island」 中国(そしてアジア)の電子音楽シーンを代表する新進気鋭のアーティスト、Howie Lee。 正真正銘「Made in C

【特別編】ブッダマシーン(般若観音)を聴いてみた編

こんばんは、内山結愛です。 今回は特別編として、ブッダマシーン(般若観音)を聴いてみた編をお届けします。 62曲に渡る念仏、民謡、仏教ソング、鐘の音など、多種多様な救済ミュージック。 摩訶不思議な世界観と空耳が織りなす、幸福と安らぎ。 是非読んでみて、聴いてみて下さい! 1.心经 神々しくも大地のパワーを感じる。中華街で聴いたことある気がする。曲の展開が一瞬シリアスになるところ良い。「シャンシャンシンシン〜♪」の語感とても爽やか。後半の甲高い笛、高原を想起させるよう

加山雄三 | 愛を語る#2

皆さん、加山雄三は聴きますか? 私は今までに日常的に加山雄三を聴く同年代に出会ったことがないのです。 だからこそ同年代に伝えたい、加山雄三の魅力を!!! 「加山雄三って古くね?おじさん?演歌歌手?」 私が最初抱いていた加山雄三さんへのイメージ。皆さんはどんなイメージを持っていますか? ちなみに加山雄三さんは今年で84歳です。おじさんというよりむしろおじいさんですよね。美空ひばり、阿久悠、笑福亭鶴瓶と同い年です。 曲を出したのは1960年代。思ってたよりも古い。 勝手に

Mizraab / Mazi Haal Mustaqbil

Mizraabは1997年に結成されたパキスタン、カラチのバンド。1999年のデビューアルバム「Panchi」はプログメタルというパキスタンでは馴染みのないジャンルながらヒットを飛ばしました。先日ご紹介したFaraz Anwarがリーダーのバンド。この人は本当に才能あふれる人ですね。もともとヌスラットファテアリハーンやVital Signといったパキスタン音楽界の大物たちのセッションプレイヤーとして活躍したのち、自分のバンドを組んでデビューした才人。このアルバムは2004年リ

ベトナムのアヴァン・ポップトリオ、Quyechがソンラ省の大自然の中撮影されたMV『CHO』を公開

こんにちは、midizine編集部です。2021年4月18日(日)、ハノイ(ベトナム)を拠点に活動するアヴァンポップ・トリオのQuyech(クエック)が4thシングル『CHO』のMVをリリースしました。 「Cho」とはベトナム語で「待つ」を意味します。歌詞の翻訳がまだなく、アーティストもあまり説明をしないので、ここからは編集部の解釈となります。 作詞作曲を担当しているギタリストのDuc(ドゥック)が川べりで寝そべったままギターをかき鳴らしたり、出演モデルのQuynh Ng

知られざる中国インディーバンドのクオリティーが超すごい。

これまで、インドネシア編、タイ編、台湾編とアジアのバンドを紹介してきましたが今回は中国編です! 今回は武漢のChinese Footballと厦門のThe White Tulips。 そして、その二組に関わる四つのレーベルのバンドを紹介します。 プレイリストも作ったのでぜひフォローしてください! Chinense Football最初に紹介するのは武漢のバンドChinese Footballです。 過去に来日ツアーもしているので特にエモ、インディーロックが好きな方はご存

邦楽ロックの歴史|1950年から1990年までを一気にまとめてみた

歪んだギターをジャァーンと鳴らし、しゃがれた声で社会や大衆に向けたメッセージを歌い上げる。なぜか全員革ジャンを着ていて、さっき起きたようなボサボサ頭で「ベイビー!ロケンロー!」と絶叫している……。 酩酊状態の客はバンドと一緒になって拳を突き上げて、地下のライブハウスのボルテージはぐんぐん高まり「なんかマジで日本を変えられそうだ」なんて予感に満ち溢れている……。ロックという音楽には力がある。私たちを突き動かす衝動のようなものがあるんです。 しかし音楽ジャンルとしての「ロック

1990年代〜2020年の邦楽バンドの思い出を5つのジャンルで振り返る

以前、邦楽ロックの歴史について1950年から1980年代までまとめてみました。プレスリー旋風から、インディーズ〜渋谷系ブームくらいまでですね。 記事の終わりに、1990年代以降のバンドブームをちょろっと書いたんです。これが非常に多様化していて、もはや「つかみどころがなくてかけない」のが現状なんですね。 インターネットが発達したこともあって、いろんなカルチャーが同時多発的に誕生するわけだ。だからほとんどのメディアでは、渋谷系を終着点として歴史を語るのをやめているんです。

メタルとマントラが出会うとき 台湾の仏教メタル DAHRMA (達磨楽隊)

※LA Timesの記事が興味深かったので翻訳しています。 台湾・台中 - 1月の土曜日の夜、観客は耳をつんざくようなリフを期待した。 黒服を着たメタル・バンドのメンバーは、コンサート・ホールの巨大なアンプの色とマッチしていた。しかし、異彩を放つメンバーが一人。頭を剃り、宗教上の伝統的なオレンジのローブを身にまとった仏教の尼僧がメンバーの中に入っていたのだ。 台湾の仏教メタルバンド、DAHRMA 達磨楽団のメンバーであるミャオ・ベンさん(50歳)。彼女が、ゴシック・メイク