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家族の手を介して受け継がれる。時を越えるラブレター。

大切な人への変わらない想いを未来へ残すプロダクト、庵治石ミレニアムラブレター。
前回の記事では、ご主人にミレニアムラブレターを贈った原さんに、ミレニアムラブレターに込められたもう一つの想いについて伺いました。

<ミレニアムラブレター りんご>
<ミレニアムラブレター りんご 三等分>

今回はこのミレニアムラブレターの作り手にフォーカスしていきます。
「たぶん、加工。」のメンバーとして、今回ミレニアムラブレターの製作を担当した髙橋輝たかはし あきらさん。庵治石の石工職人としてどんな想いでこの製作に臨んだのか、当時の想いと製作のこだわりをお聞きしました。


原さんのミレニアムストーリーはこちら↓

<髙橋輝 有限会社髙橋石材>
たぶん、加工。の石工職人。一級石材施工技能士の資格を持ち、社寺仏閣関連石工事、大型アート・モニュメント製作、石積み等を得意とする。趣味はバイクと釣り。

庵治石ミレニアムラブレターとは?

庵治石ミレニアムラブレターは、大切な人への変わらぬ想いを未来へ残すプロダクト。
墓石に見られる通り、経年による変化に強く、残されることに価値のある庵治石を、庵治石の加工アーティスト集団「たぶん、加工。」が脈々と受け継がれてきた伝統の技術で加工し、世界にたった一つの石のラブレターを作り上げる。


原さんの想いを形にするために

当時はコロナ禍ということもあって、なかなか思うように製作が進まなかったという髙橋さん。その中で、「立体にすること」も、「3等分」も、提案したのは髙橋さんからだったそうです。
その当時の苦労を、髙橋さんは「大変だったんです」と口にしながらも楽しそうに話してくださいました。


<髙橋さん>

「ミレニアムラブレター自体はご主人へ宛てたものなんですけど、「将来的にはお子さんに受け継いでいってほしい」というのを聞いて、最初はりんごを3つ作ろうとしていました。だけどふと、「1つのりんごが3つに割れたら面白いんちゃうか?」ってひらめいて。

お子さんをすごく大事にしていることも、りんごがすごく大事なことも聞いていたので、もしかしてりんごは原さんにとって家族の象徴なのかなって。3人ひと欠片ずつで「みんな揃って家族やろ」ってできたらと思って、「3等分したら?」って提案しました。

でも、りんごの形を作ってから切ると刃の厚み分削れてしまうんですよ。
だから四角い3つの石を角度が合うように別々に作って、それをくっつけてからりんごの形に削っています。均等に3等分に作って、しかもそれが合わさったときピタッとくっついて一つになる。これはなかなか難しかったですね。

あと、3等分したのをくっつけるのに磁石を埋め込んでるんです。


<原さんのミレニアムラブレター試作品。中央の種のような部分に磁石を埋め込んでいる。>

これが試作品です。原さんに渡したのも含めると、結局3つりんごを作りました。

この埋め込みがまた難しくてね。
穴を彫ってそこに磁石を埋め込んで、表には鉄を含んだ黒い接着剤を塗ってるんですけど、浅すぎると磁石が飛び出てしまう。でも深すぎると今度はくっつかない。本当にギリギリの絶妙なところを探り当てるのに苦労しました。
今でこそ笑い話ですけど、最後の最後まで「これくっつくんかな……?」ってヒヤヒヤしてましたね」(髙橋さん)


原さんの思うりんごを。”ええ形”になるように。

こだわったのは3等分や磁石だけではありません。りんごの形はただのりんごではなく「原さんのりんご」を作ろうと試みたそう。それは、りんごこそ原さんの想いの形であり、家族の形だから。「原さんのために」とはっきりとした言葉にはしないけれど、髙橋さんはその形や質感に原さんの想いを乗せようと神経を研ぎ澄ませていました。

「りんごの形は……こう、どういうふくらみなのかなって。
原さんにとってりんごは愛情あり、家族であり、本当に大切なものなので「原さんの思うりんごってどんな形なんやろう?」ってかなり悩みました。どのくらい丸みを持たせるか、絵に描いてみて「このくらいかなあ。このくらいかなあ」ってやってましたね。


<原さんのミレニアムラブレター試作品>

この(※試作品)りんごは絵に描いたようなりんごじゃないですか。実際のりんごって、もっと細くてシュッとしてるんですよ。
でも「作るならもっと丸みがあった方がええんかな?」とか「どうやったらりんごに見えるんやろう?」とか考えながら、とにかく「ええように、ええように。ええ形になるように」って、少しずつ削って、削って、微調整を繰り返しながら作っていった感じです。
だから原さんに渡したやつはこれ(※試作品)よりもっとシュッとしているはずです。

<ガタついた石の表面にチョークを塗り、色付けした部分が削れるように磨いていく。>

りんごの質感は、あんまりピカピカしたものにはしたくなくて。これをお墓みたいに磨き切ると安っぽくなってしまうなと思ったんです。
つるっとしたんじゃなくて、マットでさわったとき手にやさしい感じにしました。

磨き切ってしまったら”ケンケン”するけど、このくらいだったら手に馴染むし……さわってると手の汗とかで色も変わってくるんですよ。
それが毎日だったら、お子さんの成長といっしょに変化していって面白いのかなって。そんなことを思いながら作ってましたね」(髙橋さん)

<手に持つとずしりと重く、しかしさわり心地はなめらかでとてもやさしい。>

原さんから原さんのご主人へ、そして子どもたちへ。さらにはずっとその先の、子どもたちが築いていくあたたかな家庭まで、きっとこのミレニアムラブレターは”家族の手”を介して受け継がれていくに違いない。そんな光景を思い浮かべていたのか、髙橋さんは視線を落として手の中の”りんご”をやさしく撫でていました。


これからも、想いのあるものを作っていけたら。


原さんにとっても、きっと人生の大きな節目となったであろう今回のミレニアムラブレター。製作を担当した髙橋さんは今、どんな気持ちで当時を振り返るのでしょうか。

「初めてのことばかりで難しかったですけど、作るのは楽しかったですね。
墓石を作っていてこんな風に人の想いに触れることは少ないですし。

今後も、たとえば子どもが産まれたときや家を建てたときに、その人にとって思い出のあるものや大切なもの作ってあげたいです。
これからも、想いのあるものを作っていけたら」(髙橋さん)

最後に、「すごく幸せなんです」という今の原さんの心境とともに、原さんの取材内容の一部始終を伝えてみました。

「純粋にうれしいです。大事にしてもらえてるのは。これからも大事にしていってもらえたらと思います」(髙橋さん)

言葉数少なに、照れくさそうに笑う。
嬉しくないわけがないだろう。原さんの想いは、髙橋さんの確かな技術によってミレニアムラブレターの中に込められた。それが今、時を超えたラブレターとなって、仲睦まじい家族をさらに強く、あたたかく繋いでいるのだから。


唯一無二の加工技術で、あなただけのアートプロダクトを届ける。

想いは残る、千年先までも。


たぶん、加工。とは

水晶と同程度を誇る硬度と、唯一無二の模様“斑(ふ)”や繊細な石質による品格、そして希少性。すべてを兼ね備えた香川県高松市東部の牟礼町、庵治町でのみ産出される世界一の銘石「庵治石」。
たぶん、加工。は、そんな庵治石の里の石工たち、讃岐石材加工協同組合 石栄会所属の超石工アーティスト集団。アート、プロダクト、グルメ、グラフィック、テクノロジーなどの様々なクリエイターとコラボレーションすることで、新たな「加工」の価値を生み出す。
「うわ~これすごい!」「かっこいい!」なぜかって?
それ、たぶん、加工です。

https://www.tabunkakou.com/

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