見出し画像

鈴鹿青少年の森における「鈴鹿ポイントゲッターズ」のサッカースタジアム建設について: 本文の前に&1章 浮かび上がる2つの疑問

〇本文の前に

 今回の連載(?)記事では、筆者が住む鈴鹿市において生じている、鈴鹿ポイントゲッターズの新スタジアム建設をめぐる問題・対立について取り上げ、1人の住民としての意見を書いていきます。今回は、そのイントロ部分です。
 それに先立ちまして、まずは前提として、筆者が調べた限りではありますが、この問題の概要を紹介します。そして、それに対する筆者自身の立場を表明しておきます。最後に、この記事で言いたいことを箇条書きでまとめたものを掲載します。必ず読んでいただいてから、本文へと進んでいただきますようよろしくお願いいたします。

1. 鈴鹿ポイントゲッターズのスタジアム建設をめぐる問題・対立の概要
 2022年02月09日、三重県鈴鹿市の「県営 鈴鹿青少年の森」にて、鈴鹿市で活動するJFL(日本フットボールリーグ)のチーム「鈴鹿ポイントゲッターズ」の新スタジアム「すずか三重丸パーク」を建設する工事が始まりました。この新スタジアムに関わる事業は、鈴鹿ポイントゲッターズを運営・経営する株式会社アンリミテッド・株式会社ノーマークが民間資本を投入して行います。
 しかし、この工事は、鈴鹿市においても重要な生態系が存在する鈴鹿青少年の森の森林部分の一部を伐採して行われるため、自然環境への影響に対する懸念や反対の声があがっています。加えて、青少年の森の敷地に関する使用料免除が利益供与にあたるのではないかという指摘、青少年の森の敷地内にあるため池 道伯池の水量・水害への懸念や、その水を利用する稲作への影響を心配する声があります。また、この事業に関する鈴鹿市議会や住民への説明機会の不足、鈴鹿市としての当事者意識の欠如なども指摘されています。
 そして現在、この事業に反対する市民の一部が「鈴鹿青少年の森を愛する会」を結成し、署名活動や、三重県・鈴鹿市・株式会社アンリミテッドへの要望書の提出などの反対運動を行っています。また、02月14日には、スタジアム建設に関して、鈴鹿青少年の森の土地を無償貸与したのは違法として、一見勝之知事と鈴木英敬前知事を提訴しました。

2.筆者の立場
 わかりやすく、箇条書きで示します。
・鈴鹿市出身。大学生時代は大阪に住んでいましたが、大好きな故郷 三重・鈴鹿で暮らしたいと考え、Uターンして鈴鹿市に住んでいます。
・青少年の森は保全するべき価値ある場所と考えており、今回の事業には、反対の立場です。
・サッカーにはまったく興味はありませんが、知人にサポーターがいることもあり、選手が鈴鹿の地で奮闘する姿を聞いています。また、Twitterなどで、コロナ禍の状況での除菌水の配布や泥んこサッカー、田植え体験など、選手たちが地域活動を積極的に行っていることも知っています。
・筆者自身も、競技は違いますが、スポーツに親しんできました。(8年ほどテニスをしていました。空手、水泳もやってました。)今は仕事が忙しくてできていませんが…。
・上記2つの理由から、県や市からの鈴鹿ポイントゲッターズをはじめとしたスポーツチームへの支援、スポーツを通じた健康振興、スポーツ施設への県・市・民間からの投資には賛成します。鈴鹿ポイントゲッターズに対しても、ぜひJリーグに参戦し、J1を目指して戦ってほしいと感じています。
・今回のスタジアム建設は、場所の選定や事業の方法、根底にある価値判断に問題があると考えています。
・今回、たまたま考え方の方向性が似ていますが、筆者は共産党支持者でも鈴鹿青少年の森を愛する会のメンバーでもありません。ただし、共産党はまったく支持していませんが、鈴鹿市議会において、この問題について質問した共産党の石田秀三議員と鈴鹿市の事務方・末松則子市長の答弁の内容は参考にさせていただいています。また、鈴鹿青少年の森を愛する会についても、賛同できない部分があるので同調することはしませんが、ホームページにて公開している資料や、反対意見を持つ市民の声を掲載している「私も一言」は参考にさせていただいています。

3.この連載記事で筆者が言いたいこと
 主に以下の3点です。
・「県営 鈴鹿青少年の森」は、鈴鹿市において重要な自然環境であるとともに、自然と人間社会をつなぐような役割を持った価値ある場所と言えます。加えて、市内の森林は年々、減少しています。これらのことから、この公園の保全すべき森林を伐採するようなかたちでのスタジアム建設はすべきではない。
・サッカースタジアムなどスポーツ施設の拡充は、地域のスポーツ振興や健康推進に大きな意義がある。加えて、鈴鹿ポイントゲッターズなどの地元スポーツチームの活躍や選手たちが奮闘する姿は、住民がスポーツに親しむきっかけになったり、スポーツをする少年少女たちの希望やモチベーション向上のきっかけ、あるいはお手本になったりする。これらのことから、新しいサッカースタジアムも、大きな公共の価値をもった場所になると見込まれる。
・これらは、方向性は違うが、どちらも鈴鹿市・三重県にとって、そしてそこに住む市民にとって素晴らしい価値をもたらす。だからこそ、それらが対立したり、一方を排除したりするのではなく、それらを共存させながらともに育てていくことができる方法を選ぶべきである。

なお、公園の敷地に関する使用料免除をめぐる利益供与の疑いについてですが、そこまで扱おうとすると執筆にかかる時間や文章量がとんでもないことになるうえに、この記事における筆者の主張とは話がずれてしまうので、この記事では扱わないことといたします。


1章.浮かび上がる2つの疑問


 自分自身が忙しさにかまけてアンテナをはれてなかったこともあって、結果的にかなり突然知ることになって驚いているのですが、先日の02月09日から「県営 鈴鹿青少年の森」の森林の一部が伐採され、鈴鹿で活動するJFLのサッカーチーム「鈴鹿ポイントゲッターズ」のスタジアムを建設する工事が始まりました。
 個人的にこの公園は幼いころからトレーニングをするときに利用したり、かつて習っていた空手の合宿があったりと思い出深い場所です。また、大学生の頃に始めた野鳥観察には絶好のポイントで、よく足を運んでいました。最近は少し離れたところに住んでいることもあり、たまにしか行かなくなってしまいましたが、やはりこの公園の静かな水辺や適度に手入れされた林で過ごすゆったりとした時間は自分にとっては思い入れのある大切なものです。まさかそんな場所が一部とはいえ、しかも三重県という自治体が管理・整備している場所なのに、森林伐採というかたちで壊されてしまうとは全く想像していませんでした。

 そんな個人的な話はさておき、まだ調べ始めたばかりで勉強不足とはいえ、このスタジアム建設には疑問に思うところが2つあります。まず、「地域にとって特に重要な価値を持つ自然環境が、企業や行政主体としての県・市の個人的な利益の追求ために排除されるのは正当なのか」という点です。次に、「なぜ自然環境の保全とスポーツ振興という2つの前向きな価値を共存させるのではなく、対立させるようなまちづくりの方法をとったのか」という点です。

 以降の記事では、鈴鹿青少年の森の自然の価値と、スポーツ施設の拡充によって生まれる価値がどのようなものであるかを明らかにし、その2つの価値を共存させるまちづくりについて考察していく予定です。

次回は「2章. 県営 鈴鹿青少年の森の自然と、その価値。」を投稿します。
ご意見・ご感想は、せめて3章まで読んでいただいてから、お送りくださいますようお願いします。


続きは以下リンクから。↓↓↓↓↓↓↓↓
第2回:2章. 「県営 鈴鹿青少年の森」の自然と、その価値。
https://note.com/tabibitowakky/n/n9fdef664bd80

第3回:3章.県・市・企業の利益と失われつつある鈴鹿の自然 Part1
https://note.com/tabibitowakky/n/nf55fc261d0f0

第4回:3章.県・市・企業の利益と失われつつある鈴鹿の自然 Part2
https://note.com/tabibitowakky/n/ne977f1327a99


※「本文の前に」の「1. 鈴鹿ポイントゲッターズのスタジアム建設をめぐる問題・対立の概要」にて、スタジアム建設は、三重県のPark-PFI事業の一環と記載していましたが、正しくはPark-PFI事業とは別の事業でした。誤った解説となり、申し訳ありませんでした。また、それに伴って、「三重県が「県営 鈴鹿青少年の森」に公募管理者設置制度(通称 Park-PFI)を適用し、」という箇所を削除いたしました。申し訳ありませんでした。(2022.02.19)

画像1

鈴鹿青少年の森にて、筆者撮影(2022.02.14)。

画像2

鈴鹿青少年の森にて、筆者撮影(2022.02.14)。画面左手が伐採予定エリア。

参考:

〇スタジアム建設
「新スタジアム構想「すずか三重丸パーク」について 」、鈴鹿ポイントゲッターズ、 suzuka-un.co.jp(2022年2月16日最終確認)。
「県営鈴鹿青少年の森公園内にてスタジアム着工のお知らせ 」 、鈴鹿ポイントゲッターズ 、suzuka-un.co.jp(2022年2月16日最終確認)。
「JFL鈴鹿ポイントゲッターズ 新スタジアム着工」、NHK NEWS WEB、https://www3.nhk.or.jp/lnews/tsu/20220209/3070007360.html(2022年2月16日最終確認)。
「鈴鹿青少年センターと鈴鹿青少年の森の 整備運営事業 要求水準書(案)」、三重県、2020年06月24日、https://www.pref.mie.lg.jp/common/content/000962976.pdf(2022年2月16日最終確認)。
「要求水準書 資料1 本事業のエリア図」、三重県、https://www.pref.mie.lg.jp/common/content/000962990.pdf(2022年2月16日最終確認)。
「REAY FOR 鈴鹿ポイントゲッターズ|共に行こう!Jの舞台へ。」、REAY FOR、https://readyfor.jp/projects/suzukaPG2021(2022年2月16日最終確認)。
「10/17 スタジアム建設説明会における質疑応答について」、鈴鹿ポイントゲッターズ、https://suzuka-un.co.jp/wp/wp-content/uploads/2021/11/10%E6%9C%8817%E6%97%A5%E8%B3%AA%E7%96%91%E5%BF%9C%E7%AD%94.pdf(2022年2月16日最終確認)。
「10/19 スタジアム建設説明会における質疑応答について」、鈴鹿ポイントゲッターズ、https://suzuka-un.co.jp/wp/wp-content/uploads/2021/11/10%E6%9C%8819%E6%97%A5%E8%B3%AA%E7%96%91%E5%BF%9C%E7%AD%94.pdf(2022年2月16日最終確認)。
「Jリーグクラブライセンス交付規則」、公益社団法人 日本プロサッカーリーグ、2021年01月01日、https://aboutj.jleague.jp/corporate/regulation/licence/(2022年2月16日最終確認)。

〇反対運動・反対意見
「鈴鹿青少年の森を愛する会 ホームページ」、鈴鹿青少年の森を愛する会、https://suzu-mori-ai.jimdofree.com/(2022年2月16日最終確認)。
「私も一言」、鈴鹿青少年の森を愛する会、https://suzu-mori-ai.jimdofree.com/%E7%A7%81%E3%82%82%E4%B8%80%E8%A8%80/((2022年2月16日最終確認)。
「カズ加入の鈴鹿ホームスタジアム建設地「無償貸与」は違法と市民団体が三重県知事と前知事を提訴」、日刊スポーツ、2022年02月14日、https://www.nikkansports.com/general/news/202202140000993.html?utm_source=line&utm_medium=social&utm_campaign=nikkansports_ogp(2022年2月16日最終確認)。

〇里山の定義と重要性
「里地里山とは」、環境省、https://www.env.go.jp/nature/satoyama/top.html(2022年2月16日最終確認)。
「コトバンク 里山とは」、朝日新聞社、https://kotobank.jp/word/%E9%87%8C%E5%B1%B1-511449(2022年2月16日最終確認)。
「間伐とは?」、林野庁、https://www.rinya.maff.go.jp/j/kanbatu/suisin/kanbatu.html(2022年2月16日最終確認)。
「Wood+ 間伐材をつかうとどうして森が守られるの?」、FRONTIER JAPAN株式会社、https://eco-pro.ne.jp/columns/thinned-woods/(2022年2月16日最終確認)。

〇Park-PFI
「都市公園の質の向上に向けた Park-PFI活用ガイドライン」、2017年08月10日発表 2018年08月10日改正、国土交通省、https://www.mlit.go.jp/common/001197545.pdf(2022年2月16日最終確認)。
「公募設置管理制度(Park-PFI) について」、2020年02月12日、https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/kanminrenkei/content/001329492.pdf(2022年2月16日最終確認)。
「Park-PFI」、大和リース株式会社、https://www.daiwalease.co.jp/service/ppp/parkpfi.html(2022年2月16日最終確認)。

〇県営 鈴鹿青少年の森
「鈴鹿青少年の森 ホームページ」、三重県森林組合連合会、https://suzuka-seisyounennomori.com/(2022年2月16日最終確認)。
鈴鹿市、『鈴鹿市の自然-鈴鹿市自然環境調査報告書-』、2008年。
「都市政策 鈴鹿青少年の森」、三重県、https://www.pref.mie.lg.jp/TOSHIKI/HP/17369018211.htm(2022年2月16日最終確認)。

〇鈴鹿ポイントゲッターズ
「鈴鹿ポイントゲッターズ ホームページ」、鈴鹿ポイントゲッターズ、https://suzuka-un.co.jp/(2022年2月16日最終確認)。
「鈴鹿ポイントゲッターズ 公式Twitter」、鈴鹿ポイントゲッターズ、https://twitter.com/SuzukaPG/media(2022年2月16日最終確認)。
「サッカー選手が学童施設に除菌水1千リットル寄付」、産経新聞 WEB版、2020年03月16日、https://www.sankei.com/article/20200316-LCWSNOMK7VN6XHPK4YINLYDKRQ/(2022年2月16日最終確認)。
「【イベントレポート】4/25泥んこサッカー&田植え体験」、鈴鹿ポイントゲッターズ、
2021年6月2日、https://suzuka-un.co.jp/news/39923/(2022年2月16日最終確認)。

〇その他
「鈴鹿市議会定例会・9月定例議会会議録(第4日)」、鈴鹿市、http://www.kensakusystem.jp/suzuka/cgi-bin3/ResultFrame.exe?Code=u66a29303ve3vvxqtv&fileName=R030901A&startPos=0(2022年2月16日最終確認)。
「第23回 日本フットボールリーグ(2021)順位表・戦績表」、日本フットボールリーグ、http://www.jfl.or.jp/jfl-pc/view/s.php?a=1696(2022年2月16日最終確認)。

画像は鈴鹿青少年の森にて、筆者撮影(2022.02.14)。


続きは以下リンクから。↓↓↓↓↓↓↓↓
第2回:2章. 「県営 鈴鹿青少年の森」の自然と、その価値。
https://note.com/tabibitowakky/n/n9fdef664bd80

第3回:3章.県・市・企業の利益と失われつつある鈴鹿の自然 Part1
https://note.com/tabibitowakky/n/nf55fc261d0f0

第4回:3章.県・市・企業の利益と失われつつある鈴鹿の自然 Part2
https://note.com/tabibitowakky/n/ne977f1327a99

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?