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鈴鹿青少年の森における「鈴鹿ポイントゲッターズ」のサッカースタジアム建設について:2章. 「県営 鈴鹿青少年の森」の自然と、その価値。

 今回は、連載記事「鈴鹿青少年の森におけるサッカースタジアム建設について」の第2回です。第1回を読んでいない方は、お手数おかけしますが、必ず第1回から読んでいただきますようお願いします。

第1回 本文の前に&1章 浮かび上がる2つの疑問
https://note.com/tabibitowakky/n/n875c32952f5c

 それでは、以下から本文です。

2章. 「県営 鈴鹿青少年の森」の自然と、その価値。


 「県営 鈴鹿青少年の森」は、鈴鹿市の中心部に近い住吉町にある51.3haの公園です。この公園は明治100年を記念して建設された公園で、1972年に開園しました(※1)。その周辺地域は、本田技研工業 鈴鹿製作所や鈴鹿サーキット、住宅街やイオンモールなど、1970年代から続く地方活性化政策のお手本のようなかたちで開発が進んできたエリアでもあります。この公園はそういった地域の隣にありながらも、今も緑豊かな場所として存在しています。
 また、この公園のコンセプトは「次代をになう青少年が自然の中で、スポーツや野外活動に親しみ、心身を鍛錬し高い豊かな人間性を養うとともに、団体活動を通じて社会連帯意識を強め、心身ともに健康で豊かな青少年を育成する」こととされており(※2)、公園内にはランニングコースが整備されていたり、敷地内の宿泊・学習施設 青少年センターは地域のスポーツ団体の合宿や小中学校の集団学習などに利用されたりしています。


 そして、この鈴鹿青少年の森は三重県森林組合連合会が管理しており、森林部分は間伐や清掃などが行われています。それによって、ここには非常にうまく構成された里山的な自然が存在しています。里山とは、人間の居住地に隣接し、農業・林業などとの関わりのなかで、ある程度人の手が加わることによって形成される二次林、あるいはそれらと農地、ため池などを含めた地域一帯のことを言います。
 そして、このような里山は、林の中に適度な隙間ができることによって、林の地面にまで太陽の光が差し込み、背の高い木だけでなく様々な植物が生息するようになります。そして、それによって鳥や昆虫、哺乳類といった、多種多様な動物が生息するようになるとともに、土壌に水を貯える機能や、土砂崩れを防ぐ機能が向上します。また、林の木そのものも、水分・養分をめぐる競争からある程度解放されることで生育がよくなります。それによって、木材としての質があがったり、風雪に強くなったりします。
 これらのことから、環境省は里山という環境を、「特有の生物の生息・生育環境として、また、食料や木材など自然資源の供給、良好な景観、文化の伝承の観点からも重要な地域」(※3)としています。補足ですが、こういった里山保全や間伐の重要性については、下記のサイトにて詳しくわかりやすく解説されています。ぜひご覧ください。

「Wood+ 間伐材をつかうとどうして森が守られるの?」FRONTIER JAPAN株式会社


 こうしたことから、県営 鈴鹿青少年の森は、鈴鹿市における動植物の重要な生息地となっており、2004年から2007年にかけて行われた鈴鹿市の自然環境調査でも、鈴鹿市の重要生態系地域に挙げられています(※4)。実際、個人の感覚ではありますが、この公園には起伏のある敷地内に林・池・湿地・小川・芝生広場といった多様な環境があり、鳥類や昆虫類、そして植物の種類・数は、他の公園や野鳥観察で訪れたエリアに比べても豊富であると感じます。

 さらにこの公園は、宿泊施設やキャンプ場の利用を除けば、誰でも無料で入れます。多くの里山は私有地であり、なおかつ農業人口の減少によって担い手が減少し、管理不足に陥って荒廃するところも増えています。そうした状況のなか、里山的な自然環境が維持され、そこに誰でも気軽に触れられるという場所はとても貴重です。
 加えて、野鳥観察会や湿地保全ボランティアなどのイベントを通じて、市民が青少年の森にある自然について学び、より親しむことができる機会も提供されています。その意味で、この公園は貴重な自然と人間社会をつなぐような役割を持つ場所と言えます。そして、こういった場所が存在することは、鈴鹿市の地域社会にとって、非常に大きな価値があると考えます。

※1「都市政策 鈴鹿青少年の森」、三重県、https://www.pref.mie.lg.jp/TOSHIKI/HP/17369018211.htm(2022年2月24日最終確認)。
※2「鈴鹿青少年の森 ホームページ」、三重県森林組合連合会、https://suzuka-seisyounennomori.com/(2022年2月24日最終確認)。
※3「里地里山とは」、環境省、https://www.env.go.jp/nature/satoyama/top.html
※4鈴鹿市、『鈴鹿市の自然-鈴鹿市自然環境調査報告書-』、2008年、795-796頁。


続きは以下リンクから。↓↓↓↓↓↓↓↓
第3回:3章.県・市・企業の利益と失われつつある鈴鹿の自然 Part1
https://note.com/tabibitowakky/n/nf55fc261d0f0

第4回:3章.県・市・企業の利益と失われつつある鈴鹿の自然 Part2
https://note.com/tabibitowakky/n/ne977f1327a99


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鈴鹿青少年の森にて、筆者撮影(2022.02.14)。画面右奥一帯が伐採予定エリア。

参考

〇スタジアム建設
「新スタジアム構想「すずか三重丸パーク」について 」、鈴鹿ポイントゲッターズ、 suzuka-un.co.jp(2022年2月19日最終確認)。
「県営鈴鹿青少年の森公園内にてスタジアム着工のお知らせ 」 、鈴鹿ポイントゲッターズ 、suzuka-un.co.jp(2022年2月19日最終確認)。
「JFL鈴鹿ポイントゲッターズ 新スタジアム着工」、NHK NEWS WEB、https://www3.nhk.or.jp/lnews/tsu/20220209/3070007360.html((2022年2月19日最終確認)。
「鈴鹿青少年センターと鈴鹿青少年の森の 整備運営事業 要求水準書(案)」、三重県、2020年06月24日、https://www.pref.mie.lg.jp/common/content/000962976.pdf(2022年2月19日最終確認)。
「要求水準書 資料1 本事業のエリア図」、三重県、https://www.pref.mie.lg.jp/common/content/000962990.pdf(2022年2月19日最終確認)。
「REAY FOR 鈴鹿ポイントゲッターズ|共に行こう!Jの舞台へ。」、REAY FOR、https://readyfor.jp/projects/suzukaPG2021(2022年2月19日最終確認)。
「10/17 スタジアム建設説明会における質疑応答について」、鈴鹿ポイントゲッターズ、https://suzuka-un.co.jp/wp/wp-content/uploads/2021/11/10%E6%9C%8817%E6%97%A5%E8%B3%AA%E7%96%91%E5%BF%9C%E7%AD%94.pdf(2022年2月19日最終確認)。
「10/19 スタジアム建設説明会における質疑応答について」、鈴鹿ポイントゲッターズ、https://suzuka-un.co.jp/wp/wp-content/uploads/2021/11/10%E6%9C%8819%E6%97%A5%E8%B3%AA%E7%96%91%E5%BF%9C%E7%AD%94.pdf(2022年2月19日最終確認)。
「Jリーグクラブライセンス交付規則」、公益社団法人 日本プロサッカーリーグ、2021年01月01日、https://aboutj.jleague.jp/corporate/regulation/licence/(2022年2月19日最終確認)。

〇反対運動・反対意見
「鈴鹿青少年の森を愛する会 ホームページ」、鈴鹿青少年の森を愛する会、https://suzu-mori-ai.jimdofree.com/(2022年2月19日最終確認)。
「私も一言」、鈴鹿青少年の森を愛する会、https://suzu-mori-ai.jimdofree.com/%E7%A7%81%E3%82%82%E4%B8%80%E8%A8%80/(2022年2月19日最終確認)。
「カズ加入の鈴鹿ホームスタジアム建設地「無償貸与」は違法と市民団体が三重県知事と前知事を提訴」、日刊スポーツ、2022年02月14日、https://www.nikkansports.com/general/news/202202140000993.html?utm_source=line&utm_medium=social&utm_campaign=nikkansports_ogp(2022年2月19日最終確認)。

〇里山の定義と重要性
「里地里山とは」、環境省、https://www.env.go.jp/nature/satoyama/top.html
「コトバンク 里山とは」、朝日新聞社、https://kotobank.jp/word/%E9%87%8C%E5%B1%B1-511449(2022年2月19日最終確認)。
「間伐とは?」、林野庁、https://www.rinya.maff.go.jp/j/kanbatu/suisin/kanbatu.html
「Wood+ 間伐材をつかうとどうして森が守られるの?」、FRONTIER JAPAN株式会社、https://eco-pro.ne.jp/columns/thinned-woods/(2022年2月19日最終確認)。

〇Park-PFI
「都市公園の質の向上に向けた Park-PFI活用ガイドライン」、2017年08月10日発表 2018年08月10日改正、国土交通省、https://www.mlit.go.jp/common/001197545.pdf(2022年2月19日最終確認)。
「公募設置管理制度(Park-PFI) について」、2020年02月12日、https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/kanminrenkei/content/001329492.pdf(2022年2月19日最終確認)。
「Park-PFI」、大和リース株式会社、https://www.daiwalease.co.jp/service/ppp/parkpfi.html(2022年2月19日最終確認)。

〇県営 鈴鹿青少年の森
「鈴鹿青少年の森 ホームページ」、三重県森林組合連合会、https://suzuka-seisyounennomori.com/(2022年2月19日最終確認)。
鈴鹿市、『鈴鹿市の自然-鈴鹿市自然環境調査報告書-』、2008年。
「都市政策 鈴鹿青少年の森」、三重県、https://www.pref.mie.lg.jp/TOSHIKI/HP/17369018211.htm(2022年2月19日最終確認)。
「鈴鹿青少年センター及び鈴鹿青少年の森における 社会実験第 1 弾 実施報告書」、株式会社長大三重営業所、https://www.pref.mie.lg.jp/common/content/000949104.pdf(2022年2月19日最終確認)。
「鈴鹿青少年センターと鈴鹿青少年の森の複合運営等 民間活力導入可能性調査業務 業務報告書(概要版)」、三重県・三重県教育委員会、2020年03月、https://www.pref.mie.lg.jp/common/content/000896266.pdf(2022年2月19日最終確認)。


〇鈴鹿ポイントゲッターズ
「鈴鹿ポイントゲッターズ ホームページ」、鈴鹿ポイントゲッターズ、https://suzuka-un.co.jp/(2022年2月19日最終確認)。
「鈴鹿ポイントゲッターズ 公式Twitter」、鈴鹿ポイントゲッターズ、https://twitter.com/SuzukaPG/media(2022年2月19日最終確認)。
「サッカー選手が学童施設に除菌水1千リットル寄付」、産経新聞 WEB版、2020年03月16日、https://www.sankei.com/article/20200316-LCWSNOMK7VN6XHPK4YINLYDKRQ/(2022年2月19日最終確認)。
「【イベントレポート】4/25泥んこサッカー&田植え体験」、鈴鹿ポイントゲッターズ、
2021年6月2日、https://suzuka-un.co.jp/news/39923/(2022年2月19日最終確認)。

〇その他
「鈴鹿市議会定例会・9月定例議会会議録(第4日)」、鈴鹿市、http://www.kensakusystem.jp/suzuka/cgi-bin3/ResultFrame.exe?Code=u66a29303ve3vvxqtv&fileName=R030901A&startPos=0(2022年2月19日最終確認)。
「第23回 日本フットボールリーグ(2021)順位表・戦績表」、日本フットボールリーグ、http://www.jfl.or.jp/jfl-pc/view/s.php?a=1696
「和歌山で水管橋崩落、6万戸断水続く 水道管老朽、全国でピンチ」、中日新聞 Web版、2021年10月07日、https://www.chunichi.co.jp/article/343158(2022年2月19日最終確認)。
「なっとく!再生可能エネルギー 固定価格買取制度とは」、経済産業省 資源エネルギー庁、https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/surcharge.html
「三重県太陽光発電施設の適正導入に係るガイドライン」、三重県、2017年06月30日、https://www.pref.mie.lg.jp/common/content/000989524.pdf(2022年2月19日最終確認)。
「「先行き真っ暗」養殖クロノリ、トリプルパンチで大ピンチ 三重」、中日新聞Web版、2022年01月15日、 https://mainichi.jp/articles/20220115/k00/00m/020/082000c(2022年2月19日最終確認)。

画像は鈴鹿青少年の森にて、筆者撮影(2022.02.14)。


続きは以下リンクから。↓↓↓↓↓↓↓↓
第3回:3章.県・市・企業の利益と失われつつある鈴鹿の自然 Part1
https://note.com/tabibitowakky/n/nf55fc261d0f0

第4回:3章.県・市・企業の利益と失われつつある鈴鹿の自然 Part2
https://note.com/tabibitowakky/n/ne977f1327a99


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