内池陽奈|Hina Uchiike

Contact:Twitter(@t_n_wm)のDMまたはhinauchiike@g…

内池陽奈|Hina Uchiike

Contact:Twitter(@t_n_wm)のDMまたはhinauchiike@gmail.comまで。

マガジン

  • 短編小説集『goen』プロトタイプ試し読み

    創作予定の短編小説集『goen』のプロトタイプのお話『エラー:お探しの条件に合うお相手は見つかりませんでした』を少しずつ公開しています。更新は不定期です。

  • 【ショートショート】記憶ディスク

    ある日、週刊誌の落ちこぼれ編集者・鴨内あいりが手にしたのは、人の記憶が見れるというDVD、その名も〈記憶ディスク〉。不思議な露天商の忠告を聞くのもそこそこに、あいりは有名人の記憶を見てはゴシップ記事を次々と書いていく。たちまち成功するあいり。でもそこには、落とし穴があって──!? 10分で読める、ちょっと不思議なショートショート。

最近の記事

  • 固定された記事

【お知らせ】note始めました

時に沈黙は美しい。能ある鷹は爪を隠す。手札を全て見せるのは愚者の行い。自分をさらけ出すのは、品がない。そう考え生きている。 でも実際それは、実は自己顕示欲にまみれている、隙あらば目立とうとしてしまう承認欲求の強い自分への自らの戒めでありかつ、つまらない自分を把握されてしまうのが怖いと思う一見矛盾した気持ちを抱えた私の、無意識な自己防衛から創り出された思想なのだろうと思う。 頼りない、でも無いと困る、哀れで脆い支木のようなモットーなのだ。 人生ってなんだろう。恋ってなんだろ

    • 【お知らせ】noteお休みします

      特になんてことはないのですが エッセイと小説ごちゃまぜのこのアカウントも好きだけど、純粋にエッセイだけ溜めていきたいなぁ、と思いたち、もう1つアカウント作ります しばらくはエッセイ書き溜めていきたいので、そちらで活動しようかなーと思います それではまた、noteの海で会いましょう👋

      • 【ショートショート】ごめん、ありがとう、ごめん

        「お誕生日おめでとうございまーす!」  突然暗くなった店内。耳をつんざくような音楽が鳴って、バチバチと音を立てるケーキのプレートが運ばれてきた。  困惑したまま正面に座る海斗を見ると、いたずらっ子のような顔で笑っている。  店内中の拍手が鳴り止み、私たちに集まっていた視線が外れていく。そうして、私たちカップルのことから周囲の関心が薄れていくのを感じた。 「美里、びっくりした?」  満面の笑みをたたえる海斗。店内にはガヤガヤと雑多な活気が戻っている。 「うん、そりゃあね」  緊

        • 【エッセイ】人生のどこからやり直したい?

          「人生がやり直せるとしたら、どこからやり直したい?」 先日、友人と他愛もない会話を楽しんでいる時にこんな話題が上がった。 私は、うーん、と少しばかり考えこんでしまって、その時ははっきりと答えられなかった。 やり直す必要がないほど今まで選んできた人生の選択に誇りを持っているけれど、まったく戻りたくないと言えば嘘になる。 その話題が楽しい空気の中に溶けていって、やがて歓談が終わり友人と解散した後も、私はずっと頭の隅で自分に問いかけていた。 私は、人生のどこに後悔を置いてきたの

        • 固定された記事

        【お知らせ】note始めました

        マガジン

        • 短編小説集『goen』プロトタイプ試し読み
          4本
          ¥100
        • 【ショートショート】記憶ディスク
          1本
          ¥300

        記事

          【ショートショート】しあわせ貯金

          「貯金を、始めたんだ」  ある仲間内の集まりで男はおもむろにそう言った。 「貯金?」  仲間の一人が男に尋ねる。 「この年になって貯金を集めるなんて、今更じゃない?」  小馬鹿にしたような仲間の声。 「ただの貯金じゃないさ」  むすっとした顔で男は答える。 「しあわせ貯金だ」 「しあわせ貯金?」  懐からブタの形をした陶器の貯金箱を取り出し、男は卓上に置いた。 「しあわせを感じる時に、我慢をするんだ。我慢した分は自動でこの貯金箱に貯蓄される」  手元のブタを撫でる男。 「こい

          【ショートショート】しあわせ貯金

          【ショートショート】記憶ディスク

          この記事はマガジンを購入した人だけが読めます

          【ショートショート】記憶ディスク

          マガジン限定

          【お知らせ】処女作『結び目』Kindleにて再販売開始

          ごきげんよう。内池陽奈です。 サイト上のバグで購入が出来なくなっていた『結び目』が、URLを新しくし購入できるようになりました。 『結び目』は、私が大学の卒業制作を機に執筆した処女作です。 東京・御茶ノ水の地を舞台に、 人生の動機が見つからない浪人生・湊人、夢と現実のギャップにぶち当たる就活生・裕貴、パターン化された日常を消費していく老人・幸子、弟を亡くしたことを忘れられない店長・すず、人を本気で愛せない広告マン・旭たち5人が、少しずつ絡まり、縁が結ばれていく話です。

          【お知らせ】処女作『結び目』Kindleにて再販売開始

          【試し読み】発売中『結び目』より湊人の一節

           朝の授業前。机上に乗った成績表を見て、湊人は一人、絶句していた。  〈志望校判定〉と印刷された紙に書かれた値を見て、頭が痛くなっていくのを感じる。現役時代だった去年と何ら、成長していない。  努力をしなかったわけではない。勉強において、去年より理解が進んだ実感もある。なのにどうして、判定結果が伸びないのか。湊人はため息をつき、予備校の硬い椅子に深く沈み込んだ。  湊人は要領が良い方ではない。それは自分でも自覚していて、この予備校の高卒コースに入ってからは特に、がむしゃ

          【試し読み】発売中『結び目』より湊人の一節

          【ショートショート】お姉さんの恋人さんへ

           お姉さんの恋人さん。とうとうあなたの名前を知ることはなかったけれど、僕はあなたのことを部屋の窓からよく見ていたよ。  僕があなたに手紙を書こうと思ったのは、どうしてもあなたにお姉さんのことを伝えたかったからなんだ。  どこから書けばいいのかな。僕はお姉さんみたいに文を書くのが上手くないんだ。この間も国語のテストは散々だったし。  それでも、僕はこの手紙を書くべきだと思ってる。だから最後まで読んでね。  始まりは、そうだね、僕がお姉さんと出会った時のこと。  僕がお姉さんに出

          【ショートショート】お姉さんの恋人さんへ

          【試し読み第4話】エラー:お探しの条件に合うお相手は見つかりませんでした

           …さて、どう切り出そうか。  掃除したてのエアコンを稼働させながら、遥はチャット画面を開いたまま悩んでいた。 〈この間はありがとう!〉 〈こちらこそ〉 〈また遊ぼ!〉 〈うん〉  会話は数日前からここで止まっている。  酔っていたなりにバーでのことを覚えているのだろう、千尋の返事はいつもに増して素っ気ない。  この素っ気なさは気まずさからなのか。それとも。  千尋への好意を否定せずにあらわにしたことで、千尋に距離を置かれたのではないかと遥はハラハラしていた。  どうにかして

          【試し読み第4話】エラー:お探しの条件に合うお相手は見つかりませんでした

          【試し読み第3話】エラー:お探しの条件に合うお相手は見つかりませんでした

          「私、男と恋愛する気は無いの」  新宿歌舞伎町のダイニングバー。少し離れたバーカウンターでは、長身が目立つ長髪の店員が常連であろう女性と楽し気に話している。その隣には酔っぱらったカップル。反対側の奥の席では、大学生の団体が怒号に近い声を上げて盛り上がっていた。ほの暗い店内に溢れる数多の声から、遥は小さくかすれた千尋の声を掬うので精一杯だった。 「それは、なんで?」 「男の人ってなんか気持ち悪いんだよね。アプリで何人か会ってヤってみたけど、痛いし気持ち悪いし、嫌悪感しかないって

          【試し読み第3話】エラー:お探しの条件に合うお相手は見つかりませんでした

          【エッセイ】自由を爪に宿して

          大学生になった頃だろうか。 自分でお金を稼ぐようになって、ようやく自我が芽生えた気がする。 それまでは、自我が芽生えたふりの優等生だった。 「母や祖母の気に入る言葉」を「自分の意見」として発信して、かわいがられていたように思う。 今でもそれはあまり変わらない。それが私なりの気遣いの仕方だからだ。 でも、自分でお金を稼ぐようになって、メイクや服選び…ことにファッションに関しては自由にお金を使うようになった。 自分のお金だから、母や祖母の意見を聞かなくてもあんまり後ろめたくない。

          【エッセイ】自由を爪に宿して

          【試し読み第2話】エラー:お探しの条件に合うお相手は見つかりませんでした

           ──数日後。 〈新宿着きました!〉 〈私もさっき着きました〉 〈東口に向かいますね〉 〈私も向かいます〉  改札を出て、デジタルサイネージの前に立つ人々の間を潜り抜ける。  人通りが多い。遥は眉をひそめた。人にぶつからないように気をつけながら、素早くスマホのチャット画面を開く。 〈地上ですよね?〉 〈はい、今交番の隣に着きました〉  おっと、もう相手が到着している。遥は急ぎ足で階段を上った。梅雨が明けたばかりの今日は、階段を小走りするには少々しんどい。マスクの下で軽く息を切

          【試し読み第2話】エラー:お探しの条件に合うお相手は見つかりませんでした

          【試し読み第1話】エラー:お探しの条件に合うお相手は見つかりませんでした

          ♦♦♦ 〈“goen”にようこそ!〉 〈“goen”は国内最大級のマッチングアプリ〉 〈パートナー探しから友達作りまで!〉 〈出会いの幅、広げてみませんか?〉 〈“goen”をインストールしますか?〉 ▼はい  キャンセル

          【試し読み第1話】エラー:お探しの条件に合うお相手は見つかりませんでした

          【エッセイ】そうして出来上がったまずいチーズリゾットを食べながら

          えらい早起きをすることがある。 今日もそうだった。日付を跨いだくらいに眠りに落ちて、午前3時にすっきりと目が覚めてしまった。 覚める──そういえば、小学生の時に赤川次郎の『夢から醒めた夢』を愛読してたから同訓異義語のテストで「夢からサメル」の答えを頑なに「醒める」にしてたな。正解は「覚める」なのに。イキってたな。 というか「覚醒剤」って「さめるさめる剤」ってこと?やべえ薬だなやっぱ。 いや、そんなことは置いといて。 ロングスリーパーの私が3時間そこらの睡眠ですっきり起き

          【エッセイ】そうして出来上がったまずいチーズリゾットを食べながら

          【エッセイ】そうして私は、ホットペッパービューティーを開いた。

          美容院で、髪を切ってもらうのが好きだ。 耳元で小気味よいリズムを奏でながら動くハサミ。シャンプーの時にゆっくりとされるマッサージ。徐々に頭が軽くなっていくあの感覚。すべてが、本当に気持ちいい。太陽のような美容師さんに照らされて、暗い私の内情を根掘り葉掘り聞かれるイベントは正直苦手だが、総合して「やっぱりお金を払った甲斐があったな」と思うくらいには髪を切られることが好きだ。 「髪の毛に血が通ってなくて良かった。もし通っていたら女は失恋で失血死している」 …なんて言ってたのは

          【エッセイ】そうして私は、ホットペッパービューティーを開いた。