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不安なのはスタートするまでの話

観覧席が賑わう。
多くは母親。時折家族連れ。中にはじいじ。
発表会ではない。スイミングスクール初日の朝。

私も最前列を確保し、五歳息子の登場を待つ。
直前でママに半べそをかいたそう。「帰りたい」って。大丈夫かな?

レッスンスタート。
私の位置とは反対側のプール。えー全然見えない。
一番後ろで話を聞いてる……あれが息子?
別れ際、不安がる彼と二人だけのハンドサインを決めた。
「もうやだ、助けてパパと思ったら人差し指を立てろ」と。
指なんかまるで見えない。
目のいい妻が「笑ってるよ。大丈夫そう」と実況中継。
妻の言葉を頼りに彼を見守った。

「終わったよー」
入口で待ってると息子が駆け出てきた。
濡れた髪に、眩しいくらい清々しい表情。
聞くまでもなく楽しかった様子が伝わってくる。良かった。
「パパもママも、手振ったのに全然こっち見てなかったよ」
サインでは「楽しかったら手を振って」とも話していた。
我々は誰を見つめていたのだろうか。


立秋の稽古後の髪濡れしまま

(りっしゅうのけいこごのかみぬれしまま)

季語(初秋): 立秋、秋立つ、秋来る、秋来(あきく)、秋に入る、今朝の秋


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