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スッキリ笑って泣ける、日本一の物語。|Project Juvenile Vol.12『桃の漢』演出家インタビュー【PR】

来たる6月9日から、演出家の富樫とがし勘九郎かんくろうさんの演出舞台『桃のおとこが公演とのことで、今回取材をさせていただきました。

演出に対する矜持や、舞台づくりへの考え方に、とても惹かれるものがあり、以前からお話を伺ってみたいと思っていました。
昔話をベースにすることの背景、そして演出を通じた舞台へのこだわりを伺いましたので、ぜひご覧ください。

〇こんな方にオススメの記事です!
 観劇の満足度を高めたい方
 新しい舞台に触れてみたい方
 作品を見終わった後に裏側を深堀したい方
 演劇を見に行ったことないけど気になっている方
 創作に興味がある方

※インタビューに際しては、マスク着用の上、換気を十分に行った環境で実施しております。

「桃の漢」あらすじ・公演情報

ご予約はこちらから。


1.日本人に根付く昔話と『桃の漢』

『桃の漢』の舞台は、読んで字のごとく「桃太郎」。
桃から生まれた桃太郎が、犬・猿・雉をお供に鬼を倒して、めでたしめでたし。

物語のベースに、なぜ誰もが知っている昔話を選んだのか。
富樫さんはこう語ります。

桃太郎という作品の基礎というのは既に揺るがなくて、どうやっても折れることはないものです。
登場するキャラクターや、ストーリーの大筋だけは、壊すことは出来ない。
だけれども、決まっているのは骨組みだけであって、肉付けは自由にできます。

時代劇をやろうと思うと、設定や登場人物にバラツキが出ますよね。
織田信長なら天下統一なのか、本能寺の変なのか。
新選組なら主人公は近藤勇なのか土方歳三なのか、みたいな。
でも昔話って、基本的に変わらないんです。
浦島太郎なら、太郎と亀と乙姫がいて、海で繰り広げられるように。
日本人の根本的なところに根付いているといいますか。

桃太郎という話をイメージしてもらうと分かると思いますが、「引き算しつくされた状態」で記憶されているのではないでしょうか。
登場人物とストーリーの、本当に必要な部分だけにそぎ落とされた状態、とでも言いましょう。
そこに面白い要素を「足し算」できれば、目新しい物語に出来る、と。

しかし、脚本やキャラクター紹介を読むと、シリアスばかりでなく、笑いのあるストーリーなのかなと思わされます。

コメディー色は多いです。
ぶっ飛んだキャラクターが多いもので。
でもその人たちは、世界の中で真面目に生きている。
結果として、抜くところは抜く、ちゃんと締まるところは締まる、そんなストーリーになっています。

コメディーの要素は入っても、軸には物語の骨子があるから大丈夫。
日本人に根付いている”共通の面白さ”はそのままに、キャラクターたちの生き生きとした行動が世界を構築していくような。
そんな安心感を持って観劇できる作品なのだと、お話しを聞いて思いました。

物語が生まれた背景、そして20周年という節目の演目に選んだ決め手について伺うと。

元々、自分の先輩が練習で書いた脚本でした。
でも「その人が演じたら面白いんだろうな」という内容の本だったので、自分で演出する際に脚色してみたんです。
そうしたら原型は骨組みしか残ってなくて、まるで昔話と同じようだなと。

節目で扱いたい作品ではあったんです。
ただ、別に20周年だからやる、という作品ではなく、脚本を決めた後で20周年だと気付きました。
アミダくじが当たったんだな、と思っています。

どこか運命じみた、不思議なエネルギーを持った作品。
話しを聞く中で、期待が膨らんでいきました。


2.殺陣へのリスペクト

筆者の富樫さん作品は、イコール殺陣たてという認識でした。
『桃の漢』でも殺陣があるとのことで、こだわりについて伺ってみました。

必ずしも殺陣がある、というわけではありません。
殺陣がある作品でも、決して殺陣をメインにはしない。
殺陣を専門になさっている方々と並べると見劣りしてしまう、と考えているからですね。
役者の力量不足感が出るまではやらない。
物語の要所で取り入れる、という形。

今回の役者さんは、全員が殺陣専門というワケではありません。
富樫さんの作品には、ときに殺陣初挑戦という方も出演されます。
そんなメンバーの中で舞台を作る以上、あくまでも一つの”山場や見せ場としての殺陣”に留めているとのこと。

また殺陣の稽古には、専門の殺陣師さんを招聘している、ともおっしゃっていました。
ご自分で殺陣の稽古をつけない理由は何でしょうか。

自分が出来ないことは「出来ない」と言い切るスタンスでいます。
だからこそ専門家に委ねていますね
自分が出来ないことをお願いしているので、殺陣師さんや役者には当然リスペクトをしています。
その分、自分はそれ以外の演出へ集中します。

富樫さん演出『ルナナナ』を以前観劇したとき、アクションや殺陣の素晴らしさに筆者は息をのんでおりました。
あたかも刀の風切り音が耳まで届いているんじゃないか、くらいの迫力ある闘いが、目の前で行われているのですから。

専門家指導のもと稽古された、ハイクオリティの殺陣が間近で味わえるのは最大の魅力の一つ。
ぜひ、生で味わっていただきたいです。


3.演出20年の歩みと、こだわり

今回の公演で、演出家として20周年を迎える富樫さん。
そのきっかけを聞くと。

仲間と劇団をやろうとなったときに、演出をする人が他にいなかったからですね。
芝居やりたい人、脚本書いてみたい人はいても、演出をやりたい人ってなかなかいないもので。
役割を決めるときに「演出係」を任されるようになってました。

最初は流されて始めた演出。
しかし次第に”欲”が出てきたそう。

最初はワケも分からずやっていても、だんだんと「こんな脚本やりたい」「こんな演出が面白かったから取り入れたい」と思うようになってきましたね。
演出をやるようになって、セリフがどうこうもそうですが、照明の位置だったり、喋っていない演者の振舞いだったり、そういったことが気になるようになってきました。
試行錯誤をするうち、結果的に20年が経っていて、芝居の見方が変わってきたなと感じています。

これは筆者自身も創作にかかわるので共感するところでして、「やってみて分かること」を掴むと、どんどんチャレンジしてみたくなるのです。
そんな20年を経て生まれた、演出に対するこだわりは。

見せ方にはこだわるようになりました。
ほとんどの方って、舞台を1回しか見に来ませんよね。
そうすると、そんな細かいところまでは覚えていられなくて。
細かくは覚えていられなくても、「あのシーン綺麗だったね」「〇〇ってセリフ印象的だよね」と記憶に残るような演出を目指しています。

具体的な手法を聞いてみると。

一枚の絵姿として成立するように、人物やセットを配置することを心がけています。
一部を切り取っても美しいし、全体として見ても絵になるように。

演者へは、可能な限り演出を投げる部分が多い。
その場で生きている役者よりも、その役の気持ちや身動きを細かく見続けるのは困難、と考えているからです。
でもどうしても「ここのシーンはこう見せたい」というイメージがある場面は”交渉”をします。
なので演出を付けるというよりも、交渉している印象が強いですね。

写真撮りの筆者には、一枚絵という俯瞰の視点はシンパシーを感じるところ。
動きや場面での主役の移りはあれど、全体としての調和は常に気にかけておかないと、どこかでボロが出てしまうからです。

また役者さんの発想をベースに、締めるべきところを締め、一緒に物語を作っていることが伺えます。
「交渉」という単語が出てきましたが、「自分はこうしたいけど、あなたはどう?」のようなコミュニケーションが演出のベースで、その根底には役者さんに対する信頼があるのだと感じました。

また、『桃の漢』の肉付けについては、このように語っていました。

例えるなら、みんなでドライブにいくイメージ。
スタートとゴールの場所、ゴールへの到着時間だけ決まっている。
その道中、どこで休憩を取るとか、何を買うとか、お昼どこで食べるとかは、それぞれ自由にしていい。

最後にゴールでお土産話を持ち寄る、それが稽古や演技の場。

桃太郎というストーリー、その延長線上にある脚本、という共通言語がハッキリしているからこそ、自由な中にも規律があるような構成に仕上がる。
演出哲学が詰め込まれたお話しになりそうです。


4.ひとこと

最後に、観劇なさる方々へひとことお願いしました。

そろそろみんな我慢しないで笑えたらな、とは思っていまして。
でも情勢的にすぐ解禁という訳にもいかない。
だた、みんなに楽しくいてほしい、あまり考えなくていいものを、と思って作っています。
とりあえずスッキリしたい、スッキリ笑ったりスッキリ涙流せたりとか、そういう舞台にしたいと思っています。
それは私も、演者も同じです。
まだ舞台と客席には垣根がありますが、みんなで楽しく、まるで宴会芸のように見てもらえたらと思います。

また、演出家20周年にかんして。

実は、今回最年少の演者が、今年20歳なんです。
ちょうど生まれた年に、自分が演出を始めた計算
になります。
そんな年月で培ったものを、楽しく感じていただけたらと。

富樫さん、ありがとうございました。

ご予約はこちらから。

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筆者後記

筆者のたかはしです。
今回、何か私にご協力できることを、というお話しでインタビューをいたしました。
このような形に仕上げることが出来て光栄です。

これまで何名かの演出家さんにお会いしてきましたが、十人十色、それぞれ考え方が違っていて、演劇の奥深さを味わってきました。
前回のインタビュー記事執筆の際も、2名の演出での差が出ているというお話を聞いていたので、より一層演出の面白さを知れたなと思っています。

さて、今回インタビューにお伺いしたのは、東武東上線 中板橋駅から徒歩3分、「和洋菓子のなかむら」様です。
そう、富樫さんのお店です。

名物の「くずバー」を始め、どら焼きやクッキーなど、さまざまな和洋菓子が揃えられています。
私も「はまなす街道」を片手に執筆しておりました。

筆者お気に入りです

ぜひお店にもお立ち寄りください。

和洋菓子のなかむら
東京都板橋区上板橋2-2-15
パークハイム1F

アクセス
東武鉄道 東武東上線
「上板橋駅」下車、徒歩3分


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