逝化粧|掌編小説(#シロクマ文芸部)
「雪化粧をした富士山です。さすが静岡」
静岡に旅行に行っている彼女から写真とメッセージが送られてきた。
「凄くキレイ! やっぱり富士山には雪が似合うね!」
そう返信したけど、気分は少し落ち込んでいた。
――どいつもこいつも、なぜ「雪化粧」という言葉を軽々しく使うのか。
みんな「雪化粧」の本当の意味を知らない。
東北の山間部、特に降雪量が多い一部の地域では、雪化粧を「逝化粧」と言い、雪や寒さで亡くなった人の表情を例える「忌み言葉」となっている。
母の出身地が、まさにその地域だ。母は「美白」という言葉さえ嫌っている。
「気を付けて。君自身が雪化粧にならないように」
彼女へのメッセージ。
送信ボタンを押す前に消した。
(了)
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