見出し画像

火曜日しばらく雑記帳・2023 CW10

旅は、家から出発して始まり家に帰って来て終わる。

旅は、時間と空間の次元で考えたときに短距離の旅もあれば長距離の旅もある。そして自己の次元で考えたときには身体の旅もあれば心の旅もある。

会社で仕事をするときに、自分のデスクから出先に行って用事を済ませて自分のデスクに帰って来る。出先は、自部署だけのミーティングルームのこともあるだろうし、他部署のオフィスや工場のこともあるだろうし、あるいは別の会社のこともあるだろう。ホームから出てホームに帰る。

自分の家から出て会社で仕事をして帰って来る、朝6時に出て晩11時に帰る、かもしれないし、いったん出港したら帰るまで半年かもしれない。ホームから出てホームに帰る。

自分探しの放浪かもしれないし、目的もない世界周遊の旅に出るのかもしれないし、地球辺境の地を行く冒険かもしれないし、四国お遍路かもしれないし、禅寺修行かもしれない。断食の旅もあれば、飽食の旅もあろう。

自分の家に帰ってきたときに、ほんのちょっとかもしれないけれども何かがかわった自分を見つけ、受け入れること受け入れられたことがあるに違いない。自分との和解、人との和解だ。

そして、人生の区切りごとにそれぞれを旅と例えることもできるだろう。そして人生を旅とするならば、生まれてから死ぬまで、土から生まれ土に還る。

どの種類の旅でもお手軽なパッケージで用意されたものもあれば、自分が頼りのバックパッカーのような旅もある。何がよくて何が悪いということはない。人生の旅は、あなたが主人公の物語なのだ。

そのような物語をU字に例える人もいる。

Michael Ray "The Highest Goal"

物語は、次のような構成であることが多いという。
1. Innocence 無邪気で平穏のとき
2. Call 使命が与えられる
3. Initiation 試練のとき
4. Allies 仲間ができ味方ができる
5. Breakthrough 突破、使命の達成
6. Celebration 祝福のとき

自分の羅針盤を持とう:Michael Ray "The Highest Goal"

先週、こんなU字のカーブを描いた昨年10月来の面倒な仕事が一件、うまく片付いた。他にのしかかる案件がまだいくつかあるので祝福気分にはほど遠いのであるが。

そして、先々週の雑記帳にコメントをくださったみきともさんの記事を読んで上のようなことをぼんやりと考えていた。



■ブロックチェーンの本を平行して読んでいる。

読み始めたばかりだが、この本はなかなかよい感触だ。バックグランドも含む基本的な概念と実際の実装も含めて丁寧に解説してある。1章はサトシ・ナカモト論文から原点を解説し、2章では概要として「トラストのアーキテクチャ」と「ゲーム理論」を中心に解説している。

特に「トラストのアーキテクチャ」というのは柄谷行人の交換様式 A, B, C, D と呼応して面白かった。トラスト、というのは信頼とか信用ということだが、本書では「人間がリスクに向き合い、前向きな行動を選択するために必要な感覚」としている。(p.66)

新たなビジネスを始めるとき、結婚相手を決めるときなど、人生のさまざまな場面で人は勇気を必要とします。人々が容易に勇気をもって活動できる社会は活気ある社会です。逆に、人々の間に疑心暗鬼の感情が蔓延している社会は停滞した社会です。正しいトラストが成立しやすい社会は「ソーシャル・キャピタル」が豊かな社会であり、称賛すべき勇気が報われる社会です。

「ブロックチェーン技術概要 理論と実践」 p.69

そして、ケビン・ワーバックの提唱した分類として、トラストのアーキテクチャをP2P (person to person)型、リヴァイアサン型、仲介者型、トラストレス型の4種類として、それぞれ解説されている。

トラストはその定義から、交換様式と対応するわけで、P2P, リヴァイアサン、仲介者は、それぞれ柄谷行人の提唱する交換様式 A, B, C と対応するといっていいだろう。

では、トラストレス型は交換様式Dに対応するか、というと似ているようでだいぶん違う。それは、信頼なきまったくの他人との間も含む関係であり、信用が中央集権によって保証されることもなく、資本に裏付けられた貨幣を仲介することもない、それでも信用が担保される仕組みなので、一見、交換様式Dの姿のようにも思える。しかし、人間の欲とインセンティブを根拠とする現実に即した実装された概念であって、Aの高次の復元、といった思弁的でまだ見ぬ概念とは違う。

いや、どうだろうか。私の理解が浅いだけで見当違いもいいとこなのだろう。いずれにせよ、新しいテクノロジーについて学ぶことを無視して新たな概念を獲得することはできないと思う。

興味は尽きない。


■先週の雑記帳では、ビストロしまむらのパスタのバリエーションで唐突に夏に作ったビーツのラグーソースのタリアッテレを提示した。


それは実は伏線で、京都のスーパーで手頃な大きさで手頃な価格のビーツを見つけて購入し、新幹線で輸送してきていたのであった。

ビーツの下処理は、電子レンジで時短ができるのでこれまで何度か試した。それはそれで悪くはないのだが、結局、丸のまま30分から1時間茹でるのが一番うまくいくように思うので今回はそのようにした。茹でた後、冷めてから皮をむくときのいい香りがたまらない。つまみ食いしながら厚めにスライスする。

断面の同心円状の模様もいい感じだ。

2022/3/3 夕食 牛肉と人参、ビーツを炊いてボルシチ。菜の花を添えた。
サワークリームがあればもっと映えるビジュアルだったのだが、まぁいいだろう。それよりもビーツが大きくて少し品が悪くバランス悪いが、この渦巻模様も好きなのだ。
ビーツ・ラバーに。
ちょっと旬には早いが、一人にちょうどよい大きさのビーツが手頃な価格で売っていた。
もっと皆でビーツを盛り上げて、流通量を増やそう。

リモートワークでも朝いちばんに弁当を作ってリズムを整えようと決意はしたものの、やっぱり実行は難しい。

2022/2/27 新横浜の事務所で昼食
曲がりインゲンと鶏、ブロッコリー、出汁巻き、赤カブの酢漬け、雑穀入りご飯にふりかけ。
2023/3/7 川崎のラボのブレークアウトで昼食
シイタケと青梗菜と豚の地中海風、ホウレンソウ、芽キャベツ、スナップエンドウ、出汁巻きとしば漬けに、雑穀入りご飯にふりかけ。


■先週にひっかかった音楽の中から少し。

1.先週、ウェイン・ショーターの記事を書いた。その中で、ウェイン・ショーターの作曲でマイルスのアルバムのタイトル曲 E.S.P.を紹介した。新進気鋭のギタリスト、ジョナサン・クレイスバーグがギターのソロで E.S.P. を演奏していることを思い出したので貼っておこう。

2013年のギター・ソロのアルバム "One" に収録されている。


2.先々週には上原ひろみについて記事を書いたが、先週(2/28 - 3/5) Blue Note NYでミシェル・カミロとピアノ・デュオで公演をしていたということだ。

Great to have many amazing pianists in the house last night with Hiromi and myself, Makoto Ozone @ozonemakoto, James...

Posted by Michel Camilo - Artist page on Friday, March 3, 2023

この二人の共演で楽曲がリリースされるのではないか、と期待している。ミシェル・カミロのFacebookへの投稿を見ると、小曽根真も一緒に写真に写っている。小曽根真も何度か触れてきたように思うが、そのうちにまとめて一本の記事にしようと思う。そして、こちらは Blue Note Tokyo でアヴィシャイ・コーエンとの共演をしていた、とのことだ。日ごろの忙しさにかまけてチェックできていなかった。私としたことが。。

It took me a while to post this. Because meeting with Avishai in music was something so new and big in my life. The joy...

Posted by Makoto Ozone on Saturday, March 4, 2023


3.やはりFacebookで大好きなギタリストのアントワーヌ・ボワイエから、Butapest で"Crazy Guy"とレコーディングをしてきた、と流れてきた。

Just came back from 8 days in Budapest with this crazy guy @zsigmondgerloczy !!! We recorded day and night. It’s one of...

Posted by Antoine Boyer on Sunday, March 5, 2023

その Crazy Guy とは Zsigmond Gerlóczy (ズィグモンド・ガロージ)、"I Only Fell to Fly"は2分ちょいの小品だが、なんでもありの元気よさ、なかなか面白かった。アントワーヌ・ボワイエとの共演もリリースされるのが楽しみ、これから期待できるミュージシャンだ。


4.アルメニアのシンガー・ソングライター、アルピ・アルト。ここのところサンバ・ボサノバのスタンダードの曲を歌ったシングルがリリースされている。きっとアルバムとしてリリースされるのだろう。先週は、"One Note Samba"。

透明感のある声でゆったりと聴ける。アルメニアならではなのか?というと、まぁそれは不問にしておこう。

4.ブラジルの クラウジア・カステロ・ブランコ (Claudia Castelo Bianco) の新しいシングル、やはり美しい声、ピアノ、表現力、。。。惚れる。

ビアンカ・ジスモンチとのピアノ・デュオ、デュオ・ジスブランコはとても気に入っていて、大ファンだ。

5.ウード奏者、ギリシャのミュージシャンだと思う、トーマス・コンスタンティノー(Thomas Konstantinou)のシングル "Panselinos" がとてもよかった。ギリシャの歌姫、ハリス・アレクシウがクレジットされているので知ったのだが、この曲にはハリス・アレクシウは歌っていない。

PanselinosはYouTubeではまだ出てないようだったが、かわりに 2020年の "Greek Sumer"を貼っておこう。オリエントの雰囲気がたっぷりの楽曲を堪能できる。

ハリス・アレクシウについては以前に書いたことがある。心を揺さぶる歌声、是非聴いていただきたいと思う。



■腰、というか脇腹というか、の鈍痛がまだ残っているが、走るのは特には問題ない。土曜日のジョギングは、新横浜で13.8km、だいぶん暖かくなった昼に走ってきた。

2023/3/4 jogging 鶴見川の土手・鴨居近く
2023/3/4 jogging 鶴見川の土手、鴨居と中山の中間、第三京浜のあたり
2023/3/4 jogging 鶴見川の土手、鴨居と中山の中間、第三京浜のあたり
2023/3/4 112.7km 計画比 +3.69km 今年の目標は 640km 順調だ。

毎年楽しみにしている桜で、去年も今頃に満開の桜を楽しみながら走ったが、まるで昨日のようだ。毎週のジョギングも一回一回、ホームから出てホームに帰る。そして、その小さな旅を螺旋のように繰り返しながら、一年の間に今年の旅は 640kmが目標、そして毎年毎年、山あり谷あり、気がつくとあっという間に過ぎていくのに違いない。そしてだんだん螺旋の半径は小さくなっていき、どこかで私達は走ることを止めるのだろう。


私達はどこから来てどこに行くのだろうか。


■関連 note 記事

ミシェル・カミロも好きなピアニストだ。フラメンコのギタリスト・トマティートとの共演をよく聴いている。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?