職場に置かれた本
職場の棚の上には、
誰かが図書館で借りてきた本が置かれている。
返却するまで読んでいいよ、ということらしい。
私はそこのセレクトが好きで、ヨシタケシンスケにハマったのも、そこの本を読んだのがきっかけだった。
最近読んだのは、
『世界でいちばん透きとおった物語』
という小説だった。
私の性質上、物語に感情移入しやすく疲れるので、少し苦手なのだが、タイトルに惹かれて読み始めた。
233ページで、2時間ほどで読み終えた。
鳥肌が立っている。
ネタバレをしないように書くのは難しいが、これほどまでに、紙の本で書かれることに意味のある物語はないだろう。
逆を言うと、電子書籍にはできないし、オーディブルのような、音声書籍にもできないし、しても本当の意味がわからないものになる。
“紙を透かして、書かれていない文字を読む”ような話だから。
ラストの章まで読まないと、本のカラクリには気づかない。
別に気付かなくても普通の小説として完結しているが、ちゃんと意味が分かったら、ある法則によって書かれた物語だと《分かる》。
その本を読んで、2.3日してから、ある職員が「この本読んだ?」と聞いてきた。
「はい、読みました」
「透きとおってたよね」
「はい、透きとおってましたね!私、ラストで鳥肌たっちゃいました」
「でしょ?この気持ちを共有したくて、置いていたの」
あ、そうだったんだ。
この感動を共有したくて置いてたんだ!
実を言うと、この職員さんは私にとっては緊張してしまう雰囲気があって、苦手だった。
けれど、この人の選ぶ本は、私が好きなテイストばかりで、感動ポイントが自分と近いんだろうなと親近感を覚えてしまった。
職場に置かれた本。
まさか、こんな効果があったなんて。
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