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医師の勉強録;前澤さんもやった??宇宙飛行士の健康管理

フライトサージャン、バイオメディカルエンジニアを始め多職種で宇宙飛行士の健康は守られています。宇宙飛行前、飛行中、飛行後に大きく分かれて健康管理がなされています。海中滞在を行うNASA極限環境(NEEMO)ミッションや8G重力発生装置訓練なども行われているようです。

健康診断毎年受けています

身長体重、血圧、採血検査、尿検査。
私も毎年健康診断を受けています。
宇宙に行く場合は尚更、健康管理が重要になってきます。
地上とはどう違うのでしょうか??
早速見ていきましょう!!

概論

宇宙飛行士の健康管理体制は多職種のチームで構成されています。
フライトサージャン
バイオメディカルエンジニア
運動生理的対策要員
放射被曝担当
心理士
管理栄養士
看護師

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https://iss.jaxa.jp/med/images/191219_summary.pdf

宇宙飛行士の健康管理は、
宇宙飛行前、飛行中、飛行後に大きく分かれます。
そして、宇宙飛行士も労働者であるので、
労働衛生の三管理に基づいて、作業環境管理、作業管理、健康管理に、
分けることが可能です。


宇宙飛行前の管理


作業環境管理
NASAのJSCにある無重量環境訓練施設
(Neutral Buoyancy Laboratory: NBL)の巨大なプールを使用して行なう
船外活動訓練や、野外リーダーシップ訓練、
海中滞在を行うNASA極限環境(NEEMO)ミッション、
冬季サバイバル訓練、8G重力発生装置訓練など
多種多様な訓練を行なっています。

作業管理
訓練による様々なストレス負荷を行います。
ストレスは、寒暖、環境圧、物理ストレス、精神ストレスなどが
具体的に挙げられます。

健康管理
長期滞在要員は飛行中に筋肉や骨量が減ることがわかっているため、
飛行前のトレーニングによる筋力トレーニングは
戦闘機パイロットと同様に欠かせないものとなっています。
毎年実施する体力測定により評価し適切な指導を行なわれています。
飛行士が特定のミッションに任命されると、
今度は打ち上げ日を目標とした健康管理スケジュールが組まれます。
長期滞在クルーの場合は打ち上げ前6ヶ月から、
骨量・筋力測定、精神心理評価、
3ヶ月前、1ヶ月前、7日前、2日前、当日に
医学検査、フライトサージャンの診察などの健康管理が実施されます。
1ヶ月前の検査・評価項目が最多のため一番の鬼門とされているようです。
打ち上げ前には「検疫隔離」が実施されます。
クルーは専用の宿舎で起居し、
接触する人間は予め健康チェックを受けた大人に限られ、
感染源になりやすい子供との接触はさせないようにします。


宇宙飛行中の管理


作業環境管理
閉鎖空間、微小重力環境、放射線などに曝されるため微生物学的、
毒性学的に環境測定が行われます。
船内では地上同様に垢や髪の毛、埃など発生するため
週に一回は清掃が行われています。

作業管理
1日6時間半の作業時間が必ずあります。
実験や医学運用、広報イベントなど多種多様です。
地上管理室監督の元、手順書を用いて行われます。

健康管理
飛行中の健康管理は基本的に地上のフライトサージャンと
ISS内のクルーが通信を介して行なう遠隔医療です。
軌道上の宇宙飛行士の医学検査は、
長期滞在クルーの場合は1週間に1回はフライトサージャンとの問診、
2週間に1回は精神科医ないし心理士の面接を受けることとなっています。
宇宙へ行った最初の一週間は、微小重力環境による
心身変化が大きいためほぼ毎日面接、問診を行うようです。
一般的な採血、採尿検査、心電図、血圧計測定、超音波診断装置
などは搭載されており、これらの器材を使って定期的に検査が可能です。
クルー・メディカル・オフィサーという医療担当の宇宙飛行士が
地上と連絡しながら対応に当たります。
万が一のために点滴、気管内挿管、洗眼、小外科セット、
治療する際の固定装置(Crew Medical Restraint System)もあります。

宇宙飛行後の管理


作業管理
宇宙飛行後のスケジュールをコントロールすることも
健康管理運用の重要な役割となります。
なぜなら地上へ帰還後、様々な取材やイベント対応に
忙殺されるからです。

健康管理

短期フライトであれば飛行後に特化した健康管理は
帰還後3日ほどで終わります。
長期のフライトの場合、
帰還後3日ぐらいまでは、マッサージやストレッチ、
補助付き歩行を中心とし、
帰還2週後までは水中歩行、自転車エルゴメータ、
軽い歩行など多種の運動に移行し、
帰還45日まではランニングや筋力トレーニングの負荷を増し、
45日以降は個人の回復状況を見ながら通常の生活に復帰となります。
帰還後の精神衛生の管理も重要です。

終わりに

以上、健康管理について確認していきました。
非常に多くの人達が関わっていること、
長期間にわたっていること、特殊性など
知らないことばかりでした。今後宇宙開発が
進んでいく中で、この医学管理をどこまで簡素化できるか、
もしくは別のブレークスルーが生まれるか、
非常に重要な観点となりそうです。

【参考資料】
https://iss.jaxa.jp/med/images/191219_summary.pdf
https://humans-in-space.jaxa.jp/space-job/specialist/voice/03/
宇宙航空環境医学 Vol. 46, No. 1, 5-12, 2009
宇宙航空医学入門 単行本 – 2015/11/1 緒方克彦 (著), 藤田真敬 (著)

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