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本屋が急に閉店するということ

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2002年2月から2023年まで上野の本屋で働いてきた書店員が閉店してからの心境や環境の変化を綴った日記のようなエッセイです。
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本屋が急に閉店するということ

本屋が急に閉店するということ

「働いていた本屋が閉店するらしい」
2022年3月23日
社長が「大事な話がある」と店に顔を出した。いつも大事な話があると言ってもたいしたことではないので(コラ)いつものように気楽にS店長とハードロックでコーヒーを頼み3人座った。「5月で店を閉める。6月からJRの耐震工事が入る。契約は先だが採算が取れなくなったので閉める」という内容。寝耳に水…うそでしょ!?冷静を装いつつ納得出来なかった私も店長も

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本屋が急に閉店するということ(2)

本屋が急に閉店するということ(2)

2.次々に襲うメンタル攻撃

3月25日金曜日
1月から受講していた斉藤徹先生のhint!ゼミ21期冬期イノベーションクラスの卒業式だ。イノベクラスは課題が難しいので脱落者が多く金曜日ということで卒業式も出席できる人が日曜クラスでは私だけだった。…本当に!?急に閉店が決まり気持ちが不安定な私が日朝クラスの代表で一言話す…なんということでしょう…マジで。イノベの日朝チーム~!!!
今も少しだけ恨んで

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本屋が急に閉店するということ(3)

本屋が急に閉店するということ(3)

3.俺たちのモチベは売り場の商品とお客様の笑顔

3月28日以降、スタッフにも閉店することが大分広まった。
みんな閉店とあからさまに口に出さない。私は口に出したら本当になりそうだから(本当だけど)嫌だった。
2022年1月からコミックチームは私がイノベーションの授業で習った事(イノベやリーダークラスを受講した話はまた別の機会に)に応えてくれてSlackを始めたり売り場のサインをすぐに大きくしたり頑

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本屋が急に閉店するということ(4)

本屋が急に閉店するということ(4)

何度確認してもダメでした…

4月6日…そうこの日は本屋のお祭りの日…

2022年本屋大賞受賞は『同志少女よ、敵を撃て』
逢坂冬馬さんでした(おめでとうございます)

閉店するなんて夢にも思っていない文芸スタッフが
「…〇〇〇冊注文したんだけど…」と愕然としていた。

仕方ない…仕方ないよ…こうなれば売るしかないじゃない?
誰もこんな状況読めないよ…重版からの出荷だもんね。

そういえばこの時に

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本屋が急に閉店するということ(5)

本屋が急に閉店するということ(5)

とうとうお知らせをする日になった

4月上旬JRの耐震工事の調査が入る…。天井の水漏れ対応は遅いのにこういう時は早いんだな…とぼんやり考えていた。コロナも勢いが凄くスタッフも自宅療養者がいたり心配することが多かった。

4月18日月曜日はお休みだったがTLがざわついてる。私のSNSのDMも荒れ狂っていた…。

atre 公式から閉店が発表されたからだ。

しかし明正堂からのアナウンスは19日と決ま

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本屋が急に閉店するということ(6)

本屋が急に閉店するということ(6)

5月7日ファイナル座談会

5月7日(土曜日)明正堂ファイナル座談会
この店での最後のトークイベントを閉店後に開催することにした。
メンバーは大変お世話になっている中村航先生、椹野道流先生、中村先生の担当編集さんとS企画だ。

この時期、なかなか参加してくださいとは言えないのが苦しい所でしかも直前のお知らせ。私は20人か30人くらいかと考えていたが、S企画は沢山押し寄せてきたらどうするのかと心配し

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本屋が急に閉店するということ(7)

本屋が急に閉店するということ(7)

2022年5月10日営業最終日

朝礼で閉店まで頑張ろうという内容の挨拶があった。

9日もお世話になった方が沢山来店されたので忙しくなりそうだ。    寂しい気持ちと本当に閉店するのかと信じられない気持ちがあった。

そして閉店しようが新刊は発売される。
文春文庫ディーヴァーの『死亡告示 トラブル・イン・マインドⅡ』の発売

瀬尾まいこさん『傑作はまだ』

佐伯泰英さんの『風に訊け空也十番勝負七

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おまけ 撤去作業

おまけ 撤去作業

閉店で悲しむ間もなく我々が一番恐れている撤収作業が始まる…初日。

閉店のお知らせから時間がなく在庫もあまり返品出来ずこの日を迎えた(実際にはお客様が沢山ご購入してくださったので段ボールが余りました)

店は速やかに囲われ解体するぞ!という気概が感じられる…寂しいけど仕方がない。

【1日目】
5月11日は終日、棚詰めからの地下スペースへ下ろす作業を分担で行った。
お弁当は美味しかった。自分が思う

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本屋が急に閉店するということ(8)

本屋が急に閉店するということ(8)


独立系書店まさかのバッドエンド!?

5月10日に閉店し6月から明正堂と独立系書店を立ち上げるために専務の所に行ったりオンラインで打ち合わせをしたり事業計画書を作るためにステキブンゲイチームや椹野先生にもご助力をいただき本当に本当に頑張った。

しかしどうしても専務の課題をクリアできず(収益を上げるシステム作り、物件探し、事業計画書、モノに価値を付けるには)クリアしてもクリアしても新たな課題を出

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本屋が急に閉店するということ(9)

本屋が急に閉店するということ(9)

クレイジー京都編①(前回までのあらすじ)
明正堂と独立系書店を目指していたが収益を回す仕組みを作ることが出来ず泣く泣く断念し絶望で心が疲れてしまった鬼瓦だった…

とにかくその時は、独立系書店が出来ない!という焦りと不安から混乱しており色々な人の意見を聞いてはそれを実行しようとしていた。

私はもう一度一人で独立系書店を開業しなければと躍起になっていた。

そんな中、以前声をかけてもらっていた神保

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本屋が急に閉店するということ(10)

本屋が急に閉店するということ(10)

京都ミステリーツアー開幕!前回のあらすじ

心が疲れて思考が鈍くなっている鬼瓦はフリーの編集「ゴトゴト」さんから「京都行かない?」と誘われたのでした。

【ここで回想】
人には「とりあえず宿を押さえておく」という派閥があるのを知らなかった。
今年(2022年)は祇園をするか分からないが、もしかしたらやるかもしれないので宿を押さえていた。2人ひと部屋だが、特に決めておらずいざとなったら倍払うもしくは

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本屋が急に閉店するということ(11)

本屋が急に閉店するということ(11)

京都ミステリーツアー②
2022年7月17日

我々は斜め屋敷と早々にお別れしイノダコーヒー本店で朝食を取ることにした

外観はかわいらしく、中は素敵空間だった。
セットの朝食を食べた。むちゃウマだった。
クロワッサン最高…。

中庭には鳥がケージに入っていて可愛かった。

お土産のコーナーもどれも欲しくなるところだった(師匠はやたらと絵葉書を購入していた)その後、中京区に戻り丁度、山鉾も見ること

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