「がんばって、最愛の人」
大事な企業の選考会があった。
第1志望じゃない、というよりも、自分が入れるわけない、と思っていたから眼中になかった、というような企業。通ると思っていなかった書類が通ったときから、企業理解のための本を読んだり説明会に出たりしているうちに、急激に志望度が上がっている。
選考会は金曜日、丸1日使って行われた。
午前はGD、13:00〜18:00の中のどこかで45分面接。「14:30-16:30は授業なので避けてもらえるとありがたいです」と不躾なお願いをした私の要望を「できるだけ配慮します。もしできなかったらご連絡しますね。」と言いながらも叶えていただいて感謝しかなかった。
前日、彼の先輩(彼と面識はない)の内定者の方から「ドットさんは受かりそうな気がする」と言っていただいたものの、自信を持って「明日いける気がする!」と言える状態ではなかった。
そんな私を見て彼は前日の夜、面接対策にと模擬面接をしてくれた。気恥ずかしくて、変な答え方をしたり、典型質問であるガクチカなのに「成果を出したのなら生徒会の話、ただ頑張ったなら水泳…でも…」と考える私にヘソを曲げながらも、最後まで「スイミングスクールのアルバイトが好きで頑張っている」私の話と、一言で言うと「VRに携われそうだから」な志望理由を語る私に付き合ってくれた。
模擬面接を終えて「あした頑張れそ?」と聞いてきた彼に「彼くんから愛の言葉をもらえたらがんばれちゃうよー」という私に、
「がんばって」「(受かったら2ヶ月東京なので期間限定の同棲をしようと話しているので)受かったら毎日いちゃいちゃしよーね」「ガンバッテー」と色んなエールを送ってくれた。1つ1つにご機嫌で応じながらも決して引かない私にトドメの1発、というように彼は言った。
「がんばって、最愛の人」
こんな言葉で次の日カンペキに頑張れてしまった私は、我ながら単純なものだと思う。
GDは、まさに私のためのテーマともいえるテーマがきたし、だからこそ1人で突っ走らないように意識したし、なにより面接がすごく楽しかった。
想定していたような深掘りや経験について問われることはなく、逆質問の時間もなかったけれど、禅問答のような意見を交換する感じの面接。「こう答えればよかったな…」とあとから反省する質問もあったけれど、1問1問にしっかり自分で考えた自分の答えを出せたと思う。受かっている、と信じたい。
***
そんな日から一夜あけて、今日少し早く彼の誕生日を祝うために、昨日はバイトの後の時間全てを今日の準備に充てた。過去3回の誕生日を超えたお祝いをしたくて、がんばった。
夜は電話しながら寝落ちして、3:30ごろに起きて寝支度と今日の準備を軽くして、おにぎり用のごはんを炊く予約をして寝た。
6:10に目を覚ました。最近買ったラロッシュポゼの化粧下地にBIDOLのピンクアイシャドウ。2年目の誕生日に渡したおそろいのTシャツに身を包んで、1つめのプレゼントであるお弁当の仕上げに入る。
昼ごはんのお弁当のための捨てられる容器や保冷剤、持っていくための保冷バックなどを、母や父と「ああでもない、こうでもない」と試行錯誤しながら、なんとか家を出て、彼が来る時間に彼が来る駅にお出迎えすることに成功した。
昨日作っておいた誕生日ケーキは、冷蔵庫で保管していたらトッピングのラズベリーチョコガナッシュが固まっていて、いい感じ。
お弁当はあなたが作ってほしい、と言っていたメニューをメインに据えたけど、喜んでくれるかな。
***
彼はいつになくデレデレで、優しくて、甘くて。
私を見守るような柔らかい笑顔といつも以上に私を求める様子から、ただでさえ喜んでいることが伝わっていたのに、お弁当もケーキも「おいしい」とあっという間に食べてくれた。
そんなあなたを見られただけで十分で、愛おしくて仕方がなくて、「愛してるよ」という言葉が口から溢れた。その言葉に彼はいつも通り、でもいつもより丁寧な優しい声で「ありがとう」と言った。
少し間が空いた。
そしてもう1度口を開き、彼は言った。
「俺も愛してるよ」
そのあとも「ありがとう」や「大好き」と伝えてくれた。それらを伝える事が、今日の私への精一杯のお返しだそうだ。
今までなら嬉しくてもっと頻繁に言ってほしいと思っていたけれど、今回は同じ嬉しいでもこの数回で満たされた。
「好きかどうかわからない」と言って以降、それでも私と一緒にいるワケを、私への感情を、彼は「愛」と結論づけたのだ。
そんなあなたなら、きっとこれからも大丈夫だと私は信じた。
***
夜ご飯中、彼はいつもより生き生きと就活の話を語っていた。私はそんな彼の話にいつもより心を軽くして耳を傾ける。
苦手だった自己分析。自分と向き合って、少しずついろんなことがわかってきたらしい。
その調子。その調子で、あなたにとっての最適解が、みつかりますように。
心の中でそう願いながら、瞳で投げかける。
「がんばって、最愛の人」
(6/7 追記)
最愛のひと
お誕生日おめでとう。
21歳のあなたの1年が、素晴らしいものになることを心から祈っています。
あなたを祝うのは4回目。21歳以降もあなたのそばに居られることを願っています。
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