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ないものねだり


東京にきてから週7日のうち、ほとんどを他人と過ごす日々を送ってきた。

平日には記事にあるように同僚たちとの交流、週末にはサマーインターンの面接や長期インターン先の営業イベントでの参加でこちらに来ていた彼との時間だった。

今まで家族以外の他人とこんなに長い時間を過ごしたことがなく、毎日遊び歩くような生活は自分には無縁だと思っていたし、向いていないとすら感じていた。だけどいざ蓋を開けてみれば、そんな日々は新鮮で刺激的で、楽しかった。


この2ヶ月でビルに見下ろされているようで窮屈だと思っていた東京は、無邪気に憧れていた頃のように私にとって楽しい街になった。パリでは1ヶ月で(なんなら1週間で) "私の街" と感じたのに、不思議なことに東京ではそれを感じない。池袋と職場周辺以外はいまだに観光客気分で、土日には家でじっとしていられずに、うろちょろと新宿や渋谷に出かけてしまう。街歩きのBGMは、ミスチルの Everything(it's you) から 東京 になった。東京 の歌詞が、メロディが、私のものになったくらいには私の中の「東京」という時代を生きているのだと思う。



7月から組織改変で、所属先が変更になる。

うちのチームは、営業&コンサルとして、生成AIのソリューション営業やXR のリサーチは引き続き担いつつ、会社全体としての新規事業を立案するというミッションが課せられた、らしい。

そこまで話し終えた後、課長は「コンサル※ とか サービス企画とかに興味ある(私)さんにとっては、まさにど真ん中の仕事になると思うよ。」と、微笑んだ。(※うちの会社では、営業とコンサルとサービス企画がごっちゃになっている面があるため。就活生時代、コンサルは特に志望していたわけではなかった。)

同時に、LOVOTちゃんたちが走る今のオフィスが引き続き勤務フロアで、彼女らともお別れせずに済む。学部や学年はちがうが、大学・研修クラス・部署・扱っている製品まで同じ、コダック仲間の同期も、職種は違うし、部署は変わるのに引き続き勤務フロアが同じようで、どこまでも縁があるなぁと思う。


ほんとうに人間ひとが良くて、頼り甲斐があって、優秀で、やさしい、同期や上司。

なぜか配属されればされるほど、やりたいことに近づいて、楽しいと思える仕事。

毎日のように予定がある日々。


東京暮らしで額面25万はジリ貧だ、と私は思う。税制や会社の制度に不満はあれど、なんだかんだ家賃補助があって、ほとんどなにも考えずにお金を使ったとしても一桁万円は常に手元に残る。貯金とも形容し難い口座の残高は、今月で二桁万円に到達するかもしれない。なんだかんだ1人だから、なんとでもなるらしい。


こんな日々を「充実」と形容せずになんと呼ぶのだろう、と思う。


なのに、2日に1度、無性に1人になりたくなる。


仲間内の数人、とかではなく、5〜10人の他人と過ごす日々の中で、それを素直に楽しいと思える自分がいることを知って、私は意外と「 I(内向)」ではなくて「 E(外向)」の性格なのかもしれない、と脳裏を掠めたりもした。元の特性としてはおそらく E で、それがいろんな人生経験を経て I になった、と自分では思っているから、E の自分が戻ってきたのかなぁ、なんて呑気に思ったりもした。

楽しんでいる気持ちは嘘ではないし、
PayPayからお金が消えていっても後悔がない日の方が多い。

だけどやっぱり「みんなと」ばかりは窮屈、らしい。


本を読みたい。テレビを見たい。泳ぎたい。
スイーツやパンを作りたい。

安い居酒屋のお通しではなくて、ちゃんとしたご飯を食べたい。料金を安く済ませるために薄いレモンサワーを飲むことになるのなら、家で缶ビールやワインや日本酒を飲みたい。


noteを書きたい。




そんなとき決まって思い出すのはパリでの日々のこと。1日たりとも忘れたことがないあの景色に、あの街に、もう一度会いたい。

インスタのリア垢をひらけば、パリを中心とした海外の人が投稿しているヨーロッパのリールや投稿ばかりが並んでいる。それを見てまた、うっとりとしながら、保存して、次行くときのために備える。


パリのことを考えて、現実に戻ると心が癒えていることに気づく。癒されるということは、それなりに疲れているということだ。


それでも、その次の1日ではまた、みんなといる楽しさを噛み締める。


バランスって、難しい。


それでも、8月に残業が解禁されたらここまで遊べなくなるだろう。2年も経てば、自分も含めてみんな同棲や結婚で徐々に遊べる人が減っていくだろう。そうすれば、お金だって貯まりやすくなるはず。

今はお金をケチることよりも、使って、経験と思い出を買うことを優先したい。スイッチが切れるまでは、「ひとり」よりも「みんなと」を優先してみたい。


だって、今の生活はいつかの私が願っていたはずのものだから。




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