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それさえできればもう、怖くない。




ドキッとした。

読んでいてここまで嬉しくなったエッセイは初めてだった。あまりに私が言いたいことを的確に伝えてくるものだから、私の脳内を覗いてパクったのではないかと思ったほどだ。(もちろん冗談です)


この記事の書き手は安原健太さんという。

私が記事の更新を楽しみにしているnoterさんの1人で、彼のnoteは1記事の文字量の多さも密度の濃さもかなりのものなのに、それを一切感じさせられることがなく、いつもあっという間に読んでしまうのだが、今回の記事は私の人生そのものだった。




小中高と、常にどこかしらで声の大きい誰かから嫌われ続けてきた。


中学受験の塾では、渡すよう頼まれたラブレターを渡した結果、嵌められて嫌われ、クラス学年では知らないうちに嫌われ、部活崩壊していた部活では、「水泳部なんだから練習中はサボらずに泳げ」と正論をいったら「被害者ぶっててうざい」と嫌われた。

私は私であるだけなのに、なぜか人と違ってしまうようで、それが周りは気に食わないらしかった。

もうこんな思いはしたくない、とビクビクして愛想を振りまく一方で、周りに合わせて自分を変えることはどうしてもできなかった。たとえみんながしていようとも、自分の中でおかしいと思うことはどうしてもできなかった。


それでも正しいことなら、みんなわかってくれるはずだ。いつか認めてくれるはずだ。そう信じていた私は、いつも自分の中で当たり前のことや正しいことを言ってきたつもり・やってきたつもりだった。真っ当に生きているはずなのに、いつも報われなかった。


正直、なにが悪いのかわからなかった。


私の周りには、私のことを間違っていないと思う、認めてくれる優しい人だけが集まってくるから、「何も間違ってないよ、大丈夫。」と言う。それに私の正義感は先生ウケするものだったから、先生に相談しても同じことを言われるだけだった。なぜ、自分がうまくやっていけないのかわからなかった。


だから聞いた。私のなにが、どこが、悪いのか。
誰も教えてはくれなかった。だからいい加減こんな経験はしたくなくて聞いたのに、そんなに不快ならそんな思いをさせたくなくて聴いたのに、返ってきた答えは


「自分のこと、変わってるって思ったことないの?ドットちゃん、変わってるよ。」。



何の答えにもなってへんやん。
私から見たら、あんたらの方が何百倍も変わってるよ。

今ならそう思うけどそのときの私にとっては、私は社会不適合者なのか、という絶望だった。


必死で考えたことが人と違ってしまうみたいだった。
 変でうれしいと思ったことはない。奇をてらおうとしてないのだから。
 ただ、変と散々言われてきたから「普通」については人一倍考えてきた。たくさんの客観視を手に入れようとしてきた。そうして手に入れた複数の視点で見たみんなは、それぞれに変わっていて変に見えた。


そういえばいつもそうだった。

楽しんで歌っているとき
テストで上位に入ったとき
読書感想文や作文コンクールで賞を取ったとき
水泳で努力しているとき
生徒会に入ったとき

ハブられている子を庇ったとき
お疲れ様会を企画したとき
その日決めた練習が終わらないレベルに部活崩壊して「水泳部なんだから部活の間はせめてサボるな」とキレたとき


私はいつも本気だった。一生懸命だった。自然だった。

だからあなたもそうしろ、だなんて強制してはない。水泳の時も本気でなくてもいいから、練習の邪魔はするなと言っただけの話。

それらの何が悪いのか、と思っていたし、今でも悪いことだとは思っていない。


だけど本気であればあるほど、「うざい」と人は離れていくし、「バカみたい」と陰で笑われた。

でもいつも本気だったし、本気の人に会いたかった。鼻で笑わないでほしかった。


部活を引退して迎えた球技大会。

クラスで予め誰が何に出るか決まっていて、全員1回は何らかに出ることになっていた。


すると女子サッカーだったか。


水泳部で一緒でマネージャーだった奴が急に出たくないと駄々をこね、補欠に変わってもらおうとしていたのだ。その補欠は2人中1人欠席、1人は正規メンバーの体調不良の埋め合わせで余裕がなく、誰かに代わって欲しいのなら彼女は自分で代理を立てるしかなかった。

しかし、彼女は自分で代理を立てようともせず他人任せにした挙句、直前まで試合に出ていた人に押し付けようとしていたのだ。


自己中にも程がある。
大体、なんでそこまで厚かましく、いつも人に迷惑ばかりかけていられるんだ。


部活の頃から彼女の自己中さに辟易としていた私がいい加減にしろ、と言いかけた次の瞬間、私と仲が良かった数人が私の口を封じ、言った。


「も〜、そんなこと言わんとさ、出てやぁ。みんなでやったらきっと楽しいよ〜?」

「自分が思ってる以上に運動神経いいんやからさ、出てほしい!頼りになるんよ、お願い!」


私はショックだった。

なんで自己中な奴に対して、私たちが下手に出て機嫌取りをしなければいけないのか。

やっぱり世界は残酷だ。

声の大きい人はやるべきことをやらずとも機嫌をとってもらえて、いい気分でいられる。に対して、そうでない真面目にやっている人ほど報われず、やらない人の機嫌取りや尻拭いをやらされるのだ。

きっと、ずっとそうなんだ。

そう思った。


また、みんなも腹が立っているはずなのにそんな風に許して、機嫌取りに回っている。その大人さを、私だけが持てていないこともショックだった。


さすがに結局彼女は競技に出ることにしたが、それは当たり前のことなはずだ。
なのに、しゃーないから出たるわ、的に出た彼女に
「出てくれてありがとう!!」と口々に言うみんなをみて、それもショックだった。


「ま、これで出んかったらただの自己中やけどな。」

ありがとう、と言わず、離れた場所でそう呟いた私に友人は言った。

「それは言っちゃあかんやつ」


なんで?と思った。

友人に怒りの矛先を向けるとかでなく、単純な疑問。なにが悪いのか、わからなかったのだ。そしてそれがわからないのは、私が"普通"ではないからだ。

だからこそ、ここで変わらなければと思った。
みんなにとっての"普通"がわからないままでは、私はきっとこれから先も人間関係で失敗し続けるだろう。

だから、友人に率直に尋ねてみようと思った。

しかし、その後のプログラム的に時間が合わず、尋ねる時間をとれそうになかったので、どうしようかと悩んでいるうちに気づいたのだ。


そうか、みんなが自己中女に向けた言葉は"ご機嫌取り"なんかではなかったんだ。もちろん、みんなも腹が立っていないわけでも、彼女を許しているわけでもない。でもだからこそ、彼女に出てもらえるように、みんな、遠回しにすこーしずつ、すこーしずつ、自己中女を説得する途中だったんだ。


「あの子は、ああいう子だから。」


誰かがそう言った。

それは悪口でも諦めでもなく、彼女の取説のようなもので、彼女を受け入れているからこその発言だ。


そのすべてを最初から理解できていなかった私は、彼女のことを真の意味で理解できていなかったのだ。

中途半端に3年間、部活で毎日一緒の時間を過ごしていたから知っていた気になっていた。

だけど、こちら側が正しいことを言っているからといって、「みんな出てるんだから、ワガママ言わずに出ろよ」と真正面からぶつけたところで、動いてくれるような奴ではない。

そんなこともわかっていなかった。


…いや、必要以上に彼女に期待しすぎていていたのだ。

正しいことなら伝わるだろう、と。
そこまで自己中なアホではないだろう、と。

だけど彼女にそんな期待は必要なかったのだ。
実際、そこまで自己中なアホだったのだ。


「バカのふりをするんだよ。バカのふりができると『あいつはそういうやつだから』って思ってもらえるようになるんだよね。〈かわいげ〉って言い換えてもいいかもしんない。それがあれば、少しの失敗は怖くなくなるよ」


こういうことができている時点で、彼女の方が一枚上手だった。

みんなの彼女をそういう人だ、と正しく評価し、でも、ちょっとばかし、大人になって、下手に回って軽ーく説得を試みてみれば動いてくれるかもしれない、と考えてみる、

それこそが正しい期待の仕方だったのだ。


仲良くなって、取り入って、わかってもらうなんて卑怯なやりかただと思ってたんだよ。訳もなく。


安原さんはそう言ったけれど、私は卑怯なやり方というより、「なんで正しいことを言っているはずのこちらが、そこまでしなければいけないんだ」という気持ちだった。「正しいことなんだから、伝わるでしょ?わかるでしょ?」そんな気持ちだった。


だけど、違うんだなぁ。違ったんだなぁ。

「どうしてわかってくれないんだよ!」
 顔面に意見を投げつけて「喰らえ!」と言っているようなものだった。
 でも、正しくても、怒っていいわけじゃない。
 自分に非のある遅刻や提出ミスでも、怒られると、恥ずかしくなったり腹を立てたりする。素直に反省する方がめずらしい。実際、有無を言わせないやりかたでは「じゃあもういい!」と思考を放棄されてしまうこともあった。
 いくら相手が未熟だと感じても、というか未熟だからこそ伝え方についてはもっと考えなくちゃいけない。そういう点で僕はとても未熟だった。考えたことのない意見を聞くこと、そして受け入れることは、そんなに簡単なことじゃない。


「そんな、難しいこと考えずにさ、とりあえず周りに合わせてればいいじゃん。いちいち気にせずにさ、流せばいいじゃん。」


そう思う人もいると思うけど、それは違う。
自分にとって本当に大切なことで、譲れないこと・許せないことであればあるほど、そうするべきではない。


1人1人が違う価値観を持っているのは人間なんだから当たり前のことで、私たちはそれを押し殺したりしなくていいし、かといって押し付けるべきでもない。


自分に正直に生きて、自分とソリの合わない人に対しても伝えればいい。でも、その時には相手が聴いてくれる形に伝え方を工夫する という、ちょっとした賢さが必要なだけだ。

自分も相手も心地よく関わることができる関係には、それがあれば十分なはずなのだ。


じゃあ頭のいい人ほど考えなくちゃいけないんじゃん。
 ときどきそう思うこともある。
 考えるのに加えて、伝え方まで気にしなきゃいけないんだから。
 不機嫌な人は不機嫌なまま、気分で「うるせえな」と威嚇してくる。ズルいじゃん。
 なんでこっちがその機嫌のことまで考えなくちゃいけないんだ。そう思うことも、本当は結構ある。
 だけど、頭のいい人ほど考えなくちゃいけないんだろうな。
 伝わらなかったら0と同じ。反感を生んだらマイナスと同じ。



これまでの人生は、私にとってなかなかに生きづらいものだった。

でもそれは、"変わっている"かもしれない私が、自分の意見の伝え方を工夫できるようになれば、変えることができるかもしれない。今後、もうそんなことを繰り返さずに済むかもしれない。


そう気づいた私は、人について理解するために大学で心理学を学ぶことに決め、今心理学部にいる。

はじめは、「自分も相手も我慢しなくていい、心地よい関係を作れる人になるため」のコミュニケーションを学ぶつもりだった。


+α、相手が好きなものに自分も興味を持てるように、色々なことを知ろうと思った。


だから苦手な理科や数学を必要とする国立大を目指して勉強したり、興味のない英語を使いまくるプログラムに参加したり、色々な分野の本を読んでみたり、触れてこなかったアニメを見たりした。

その中で、VRに関するアニメにハマり、VR開発に携わりたいと思うようになった。


あまりに畑違いすぎて、そう思った自分に驚いたけれど、自分に問いかけ続けているとそうでもないことに気がついた。


私は、人に受け入れられにくい人生だったからこそ、どんな人のことも受け入れられるようになりたい。

だけどそれには限界がある。人生で出会える人の数は限られているから、自分みたいな人を救えずに終わるだろう。

でも、自分みたいな人を救いたい。


わかってもらえないのはいつものこと。
大事だと思う意見ほどわかってもらえない。


そう思っている自分みたいな人に会って、そんなに間違ってないよって言ってあげたい。気づかせてあげたい。

自分でなくても、自分みたいな人同士が出会って、「大丈夫だ」と思い合えるような、真っ当に生きている人が報われるような、世界を作りたい。


そのために、ネッ友よりも確かで、それがなければ出会えなかったであろう繋がりを作れるような、ツールを作ろう。そのために、テクノロジーの力が必要だ。


直感がそう言ったから、コミュニケーションでなく、神経・生理心理学や知覚心理学系で、VRに活かすことができる分野の勉強をすることに決めた。




意見は正面からぶつけるものじゃなくて、隣に座って「これちょっと食べてみてください」っておすすめするものだったんだろうな。


「バカのふりをするんだよ。バカのふりができると『あいつはそういうやつだから』って思ってもらえるようになるんだよね。〈かわいげ〉って言い換えてもいいかもしんない。それがあれば、少しの失敗は怖くなくなるよ」


バカのふり、ちょっと変わったツッコミどころのある返し、意見を伝える時は冗談っぽく。

それは中高と人気者の観察を続けてきて気づいた私にもマネできる処世術だ。


これらを実践するようになってから、大学でも良い友人にたくさん恵まれて、人として最低限の自信を持って、やっと、納得できる自分で生きることができている。


正直昔受けた傷が癒えたわけではないし、これからも思い出せば、これまで書いてきたような当時の私を慰めるような文章を、これからも書くことがあるだろう。


だけど、私は確実に前に進めている。



大切な意見はぶつけないほうがいい。

安原さんのそれは伝えず我慢しろということではなく、自分が正しいと思うことは伝え方を工夫して相手に伝えようということだ。



それさえできればもう、怖くない。



【再掲とお礼】


今回の記事は、安原健太さんの記事を引用して書かせていただきました。


素晴らしい記事の引用を許可していただき、ありがとうございました😊

安原健太さんの記事は他にも素晴らしいものばかりです。ぜひ読んでみてください☺️






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