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スイーツのお部屋

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#一度は行きたいあの場所

願いを叶える三つの塔

願いを叶える三つの塔

横浜港の大さん橋のデッキに立つウサギの長い髪が、海風に揺れていた。「そう。ここだったわね」と、彼女は足元のマークを見て小さく呟いた。

ウサギの見上げる視線の先には、横浜三塔である神奈川県庁のキング、横浜税関のクイーン、そして開港記念会館のジャックが、はっきりとその姿を見せていた。

「どうして三塔を一度に見ると願いが叶うのかしらね?」と、遠くに見える塔を眺めながら、ウサギはカメに問いかけた。

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好きなものを探しに

好きなものを探しに

その日、ウサギとカメは神田古本屋街をぶらりと歩いていた。靖国通りに面しているその場所は、時の重みを感じさせる書店が静かに軒を連ねていた。二人が足を運んだのは、ブックハウスカフェ」という絵本専門店だった。

「ここよ!」とウサギは言いながら、透明なガラスのエントランスを風のように駆け抜けた。カメはその場の空気を味わいながら、ゆっくりと後を追った。二人を出迎えたのは、香り高い特製カレーやさまざまな飲み

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美味しいものは半分こ

美味しいものは半分こ

「ソフトクリームを食べたあとだし、お土産は和菓子よね」というウサギのこだわりで、ウサギとカメは「つづみ団子」というお店の前で足を止めた。「あ、きびだんごがある」と静かにショーケースを見つめるカメの隣で、ウサギは「どれがお勧めですか?」と冷静に店員に聞いていた。

店頭に並べられた和菓子の中から、ウサギはようやく三つを選び出した。そしてカメに向かって少し申し訳なさそうに、「どうしても食べたいものが三

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幸せの名はかき氷

幸せの名はかき氷

「ここだわ! 」カメの手を引いたウサギは足を止めた。「人気店だから行列も覚悟していたけれど、今なら直ぐに入れそうだわ。私の日頃の行いのおかげね!」かき氷専門店の入り口で、彼女は満足そうに微笑んだ。

「私を悲しませた罰ね」と、ウサギに罰ゲームを言い渡されたカメは、全く心当たりのないまま、彼女の選んだかき氷専門店に連れてこられていた。ウサギが選んだのは『雪うさぎ』というお店だった。

「友だちが去年

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