#7 乳児死亡 世田谷区認可外保育施設での死亡事故について

2023年12月、認可外保育施設にて生後4カ月の男の子が午睡中に死亡するという事故が起きてしまいました。

両親は就労のため、認可施設を申し込んでいたがどこも枠がいっぱいで入所が叶わず、苦肉の策で事故の起きた認可外施設に我が子を預けていました。

この園は資格を持つ園長と無資格の臨時職員が2名で延べ9名の子どもを預かっていたということです。
入所申し込みの見学の際にも子ども達がうつ伏せで寝ており、うつぶせ寝を辞めるように強く要望したとのことだが、預けてしまうと園で何をしているか保護者は知る由がありません。
職員はうつ伏せで寝かした理由について「その方が寝つきが良い」という説明を受けたということです。(なんじゃそりゃ)

事故が発覚した際も園長の息子にあたる臨時職員は「泣いていた子がうつ伏せにしたら泣き止んだ。」当時の状態について「多分うつ伏せだったと思う。」「はっきりと覚えていない」という証言をしているとのことです。

ここまで読んで頂き、どのようなお気持ちになられただろうか?
悲しみや怒り、いたたまれないお気持ちになられたのではないでしょうか。
保護者の方の悲しみは計り知れないものがあることでしょう。外野の私が想像するのもおこがましいレベルの事故だと思います。

私は元保育士で現保育士養成校の職員として今回の事故の記事を読み、怒りの気持ちが湧きました。
保育所に通っている子ども一人ひとりは各家庭の保護者や親戚の命より大切な宝物です。
そんな子ども達を人手不足とはいえ、有資格者が1人しかいない状態で預かり、杜撰な保育をしていたことに怒りを覚えました。
午睡中に子どもをうつ伏せにしてはいけないのは常識であり、養成校でも必ずSIDSの予防のために指導する内容です。
自分の命より大切な我が子が亡くなっているのです。
「知らなかった。」で済む問題ではありません。

また臨時職員の証言からも反省の気持ちが読み取れませんでした。
「泣いていた子がうつ伏せにしたら泣き止んだ。」と言っているようですが、それは落ち着いて泣き止んだのではなく、物理的に声が出せなくなっただけで、泣き止んだのではなく、泣きたくても声を出せないようにされたのです。
当時を振り返っての証言でも「多分うつ伏せだった。」「はっきり覚えていない。」と曖昧な証言であり、日常的に他の子どもも泣き止まなければうつ伏せにさせられていたのでしょう。

では、今回の事件はどうすれば防ぐことができたか、ということについてですが、職員の知識が足りておらず、有資格者が1人しかいなかったことがまず挙げられると思います。
今は保育士の数が足りておらず、希望の施設に通うことができるように各施設で園児の定員を増やしたり、新しい施設を作りたくても、そこで働く働き手がいないのです。
その結果、資格のない職員を臨時職員という形にして保育に入ってもらわないと回っていかないのです。

保育士不足の解消は政府や行政が改革を行ってくれないと変わりません。
過酷で責任が多いにもかかわらず、お給料が少なすぎるので、なりたいと思う人が増えないのです。(学生時代バイトを頑張って入った月と、保育士1年目のお給料はほぼ同額でした。)

そういう意味ではこの施設も新しい資格のある職員を雇いたくてもそもそも職を探している人がおらず、苦渋の選択で臨時職員を雇っていた可能性もあります。

私達国民にできるのは選挙で、保育士不足の問題に真摯に向き合ってくれれそうな政党に投票することくらいです。そういう意味でも高齢者だけでなく、若年層ももっと選挙に行ってもらいたいです。

「任せられる政党がないからどこにも投票しない。」はかっこよく聞こえるかもしれませんが、無責任な考え方です。

私個人にできることとしては、保育士を目指している学生にいかに保育士が大切で責任のある仕事か、知識と共に思いを伝えていくことだと思っています。
今の学生さんを見ていると、中には本当に子どもの命を預かる仕事に就きたいと思っているのか、疑問に思う人も見られます。そのような学生が社会に出て重大な事故を起こしてしまわないように、私にも大きい責任があります。

保育士は子どもが好きなだけではできません。
子どもを楽しませるのは、資格がなくてもある程度できてしまいます。
それは子どもが楽しいことを見つける才能をもった天才だからです。
子どもを数名、おもちゃのない部屋に入室させて大人がくるまで待っていてね。と言ったとします。きっと子ども達はおもちゃがなくても何か遊びを探したり見つけたりして、何もない楽しくない状態を打破しようとします。

大人になっていくにつれてこの才能は徐々になくなっていってしまいます。(中にはこの才能を持ち続けている素敵な大人もいます。)
なくなっていく理由は、経験が多くなっていくことで見通しが付いてきてしまうからだと思います。

保育士資格を持つ者として、楽しませること+大事なのは、そこに安全性を加えられるかという点です。
安全な環境を提供するためには、子どもの活動を予想して先回りし、危ない要因を潰していかないといけません。
経験でこの予想は立つようになりますが、経験が浅い時には年齢に応じてどのような行動をするか知識に基づいた予想が必要になります。

なので、子どもと関わる上ではある程度の知識が絶対に必要なのです。
私は学生時代、正直ここまでは考えられていませんでしたし、学生にここまで理解してもらうのは酷かもしれません。
でも頭の片隅でも良いので知識がいるということを知って欲しいのです。

少しでも知識が豊富な学生が現場に出て、良い保育ができる保育士が増え、今回のような悲しい事故が無くなるように元保育士+保護者の視点を加えて講義を行う必要が私にはあり、保育の質が少しで上がるように尽力していきたいと今回の事件を受けて思いました。


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