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2019年9月の記事一覧

「人が死ぬということはその存在が普遍化することだ」:読書録「希林さんといっしに。」

「人が死ぬということはその存在が普遍化することだ」:読書録「希林さんといっしに。」

・希林さんといっしょに。
著者:是枝裕和
出版:スイッチパブリッシング

遅ればせながら「万引き家族」を観て、その感動を引きずって、カンヌでのインタビュー動画を見て、希林さんの貢献を考えさせられ、読んでみることにした作品。
樹木希林さんに関する書籍は山ほど出てて、僕も一冊読んだけど、それ以上フォローする気はなかったんですけどね。

<万引き家族>感想

https://note.mu/suzuma

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すみません…:読書録「読みたいことを、書けばいい。」

すみません…:読書録「読みたいことを、書けばいい。」

・読みたいことを、書けばいい。 人生が変わるシンプルな文章術
著者:田中泰延
出版:ダイヤモンド社

まずは謝罪。
この本が出たころ、結構評判になってるのを知って、
「読もうかな〜」
と思ったんですよ。
その最中に、このツイートをめぐる炎上が…

僕の感想はほぼほぼこの方と重なります。

<マナーが「ない」と「知らない」は違う>

http://agora-web.jp/archives/2040

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結構深いけど、エンタメとして楽しめました:読書録「夢見る帝国図書館」

結構深いけど、エンタメとして楽しめました:読書録「夢見る帝国図書館」

・帝国図書館

著者:中島京子

出版:文藝春秋

前半の貴和子さんと主人公のゆる〜い日々が好きです。

上野近辺をぶらぶら歩き回って、露地の奥にある狭いけど居心地の良い部屋で語り合うような…

それだけに中盤以降の「ミステリー」的な展開は、興味を惹かれるし、先を読みたくなるんだけど、なんか急かされるような気がして、ちょっと残念な感じもしてました。

それが終盤になって、

「ああ、そうだったのか

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読書の仕方をちょっと考えようかな、と。

読書の仕方をちょっと考えようかな、と。

Netflixのオリジナル・ドキュメンタリー「天才の頭脳の中」を観て、
「ビル・ゲイツの本の読み方って、僕とはずいぶん違うなぁ」
とちょっと考えさせられました。

形的には、
「読む本をトートバックに詰めて、常に運びながら読み、
年に一週間、別荘に篭って、じっくりと読み込む」
って感じ。
この「トートバックに詰める」ってのが、単純だけど、結構いいな〜と思いました。
個人的には「積読」は「悪くない」

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このタッチで「大河SF」:コミック評「ロボ・サピエンス前史」

このタッチで「大河SF」:コミック評「ロボ・サピエンス前史」

・ロボ・サピエンス前史<上・下>
著者:嶋田虎之介
出版:講談社

想いは<人>が育む。
その想いをロボットが伝える
遥か、遥か、遠くへ…

新たな「種」としての<ロボ・サピエンス>
その誕生の狭間に、<人>の想いが過ってゆく。

その感傷を掬い取れるのは「人=読者」でしかないのだけど。
(ま、見方によっちゃ、勝手なモンやね。人間って)

朝日新聞の書評欄で紹介されてて、気になって購入。
…いやぁ

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クールな距離感の夫婦が面白い

クールな距離感の夫婦が面白い

仲良んだけど、絶妙な距離感のある夫婦の日常が面白いコミックエッセイ。

夫婦とは言え、<他人>。

<「他人行儀になれ」

ということではない。

長く関わる特別な他人だからこそ礼節を重んじ

丁寧に接したいということ。>

…と言うスタンスは僕は好きですね。

「そうありたい」

と自分でも思ってますが、ママならないもんです。

精進します。

続編も何冊か出てるようです。

まあ、気が向いたら

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「螺旋」から降りることはできるのか?:読書録「エレベーター」

「螺旋」から降りることはできるのか?:読書録「エレベーター」

・エレベーター
著者:ジェイソン・レナルズ 訳:青木千鶴
出版:早川書房

「螺旋」の概念を教えてくれたのは井上雄彦の「バカボンド」だったと思います。
「剣」を極める中で宮本武蔵が囚われた「殺しの螺旋」。
そこに囚われ続けるもの、降りるもの。
折に触れ、そのアナロジーが頭に浮かぶことがあります。

本書はアメリカの黒人少年が「ストリート」の<掟>に囚われ、その「螺旋」に取り込まれるのか、そこから

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「こう来るか〜」ではあります:読書録「屍人荘の殺人」

「こう来るか〜」ではあります:読書録「屍人荘の殺人」

・屍人荘の殺人
著者:今村昌弘
出版:創元推理文庫

映画化されるんですね。
映画館で予告編を見て、
「お、面白そうじゃん」
と思って、原作を読んでみる気になりました。
ホラー苦手なんで、敬遠してたんですよ。

<映画予告>
https://youtu.be/yzjS8bLrtIc

読んでみると、この予告編のテイストとはだいぶ違う気も…w。
ま、面白かったから良いんですけど。

本作はいわゆる「

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思った以上にエンタメで、ハードSF:読書録「三体」

思った以上にエンタメで、ハードSF:読書録「三体」

・三体
著者:劉慈欣 訳:大森望、光吉さくら、ワン・チャイ
出版:早川書房(Kindle版)

評判の中国SF。
作者は映画「流転の地球」の原作者でもありますね。(映画と原作はだいぶ違うようですが)

中国のSF小説というと、「ケン・リュウ」を思い出します。(ケン・リュウは8歳でアメリカに移住しているようですので、中国のSF作家とは言い切れないでしょうが)
で、ああいう繊細な(言い換えれば「文学

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題名はシニカルな意味合い:読書録「幸福な監視国家・中国」

題名はシニカルな意味合い:読書録「幸福な監視国家・中国」

・幸福な監視国家・中国
著者:梶谷懐、高口康太
出版:NHK出版新書

題名を見て、
「中国で進んでいるITを駆使した社会統制のあり方を肯定的に捉えてる本かな?」
と思ったんですが、そこまでノー天気な作品じゃありませんでしたw。
むしろ現在中国で進んでいるIT監視体制の実態、その背景・効果を紹介しつつ、それが決して「ビッグブラザー」的ではないだけに、日本や他の諸国でも進んでいく可能性が高いことを指

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竹本IT担当相に是非読んで欲しいw:読書録「テクノロジー思考」

竹本IT担当相に是非読んで欲しいw:読書録「テクノロジー思考」

・テクノロジー思考 技術の価値を理解するための「現代の教養」
著者:蛯原健
出版:ダイヤモンド社

いや、本当に読むべきは小泉進次郎氏かな?
「ポリテック」に賛同しながら、結局大きな思想につなげずにいる(本書に沿っていえば、「具体」ばかりを追っかけてて、「抽象」がない)ようですから。
彼のような若い政治家こそが身につけるべき思考だと思います。

作者はシンガポールを拠点とするベンチャーキャピタリ

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「ハッピーエンドじゃない」と歴史は語っているけど:読書録「サムライ・ノングラータ」

「ハッピーエンドじゃない」と歴史は語っているけど:読書録「サムライ・ノングラータ」

・サムライ・ノングラータ Ⅰ・Ⅱ
著者:矢作俊彦、司城志朗
出版:SB文庫(Kindle版)

先日、ホノルルに行った時、最高裁判所の展示を見て、何となく嫌な感じがしたんですよね。
「西洋の法制度をハワイの原住民にもたらした。凄いやろ〜!」
みたいな雰囲気で(まじめに展示の英語を読んだわけじゃないんで、あくまで「印象」w)。
で、外に出たら、カメハメハ大王が通りの向こうの「イオラニ宮殿」を指差

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<真実>かどうかはともかく:読書録「『家族の幸せ』の経済学」

<真実>かどうかはともかく:読書録「『家族の幸せ』の経済学」

「家族の幸せ」の経済学 データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実
著者:山口慎太郎
出版:光文社新書

僕の基本的なスタンスは、
「<社会>や<人間>を対象にした調査・統計は鵜呑みにしない」
ってのがあります。

「母集団」の取り方にバイアスが入りやすい
調査しようと考えている事象以外の要素が結果に影響するケースが少なからずある
データの「評価」の仕方に測定者のバイアスがかかったりする
長期

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