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「人が死ぬということはその存在が普遍化することだ」:読書録「希林さんといっしに。」

・希林さんといっしょに。
著者:是枝裕和
出版:スイッチパブリッシング

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遅ればせながら「万引き家族」を観て、その感動を引きずって、カンヌでのインタビュー動画を見て、希林さんの貢献を考えさせられ、読んでみることにした作品。
樹木希林さんに関する書籍は山ほど出てて、僕も一冊読んだけど、それ以上フォローする気はなかったんですけどね。


<万引き家族>感想

https://note.mu/suzumaro/n/n50107a90d27e?magazine_key=mada57deb66d3

<カンヌ・インタビュー動画>

https://note.mu/suzumaro/n/n0a3305359680?magazine_key=mada57deb66d3


雑誌「SWITH」で行われた07年から18年までの6本のインタビューを収録した作品。
最後のインタビューが「万引き家族」についてのもので、カンヌのインタビューで触れられたエピソードにも言及されています。


インタビューは「演技論」を中心にしながら、希林さんの過去の作品や経歴なんかにも言及しつつ進められています。
「樹木希林」が<名優><大女優>ではないこと(ご自身では<芸能人>たらんとされています)、人格的には相当に<難>のある人であったこと(自覚的ですが)等がよく分かります。
まあ、僕もそう思ってたんで、なんか亡くなる前後の「礼讃本」には違和感があったんですけどね。
ただテレビ時代から今に至るまでの「演技」をめぐる<人>や<技術>の話やら、希林さんが関係された諸作品の話、<演技>に対する考え方、<人>との交わり方等、「樹木希林」の視点に沿って、かなり面白い話が聴けるのは確かです。


是枝さんは弔辞の中でこうおっしゃっています。


<人が死ぬというのはその存在が普遍化することだと考えています。私は母を失ったあと、逆に母という存在をあらゆるものの中に、街ですれ違う赤の他人の中に発見できるようになりました。そう考えることで、悲しみを乗り越えようとしました。>

<今回のお別れは、あなたという存在が肉体を離れ、あなたが世界中に普遍化されたのだと、そう受け止められる日が遺された人々にいつか訪れることを心から願っています。>


それは例えば、「科学的に」見ればこういうことなのかもしれません。


<「このコップ一杯の水には、ニュートンの脳細胞を作っていた原子が4000個も含まれているんだぞ」>
https://note.mu/satonao310/n/n65fcd096bf90


僕も昨年父を亡くし、先日は友人が世を去りました。
僕自身は是枝さんやさとなおさんの考えよりも、もうちょっと「俗」な感じ方をしていますが(「仏様になる」とか)、それを言語化するとそういうことなのかな、と思ったりもしました。


そういう意味でも「このタイミング」でこの映画を観、この本を読んだことには何かの意味を感じてしまいます。


<偶然>に意味づけしてしまうのが、人のサガかもしれませんが…。

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