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頭のいい人は”遅く考える”理由

日々、仕事柄(研修講師業)数多くの受講生と接していると、最近とくに痛感することがあります。

インプット力とアウトプット力が希薄化していることです。

ここでは、インプットを「情報を仕入れる・本質を読み解く読解力」と定義したとしましょう。アウトプットを「自分の意見を組み立てて伝える力」と定義したとしましょう。

いずれも、優秀と言われる人でさえ、インもアウトもどこか凡ミスが多く表面的でオリジナリティに欠けていることが多いのです。

理由を考えてみると、僕なりの仮説は1つの答えに行きつきます。

それは、頭の中が”切り取り思考”になっているということです。

「切り取り思考」とは、情報の表面を切り取って解釈し(インプット)、切り取った表面上の情報だけで切り貼りして伝える(アウトプット)思考のクセのことです。

いま、noteを書きながら勝手に名付けましたので一般用語ではありませんよ。(;^_^A

これは明らかにスピード社会でスマホ社会の弊害です。

何でも効率的に急げ!と社会や会社内で煽られ、スマホの画面を覗くと高速でスクロールすることで、情報を急いで切り取って高速でインプットした気になり、切り取った断片的な情報を組み立て、それっぽく伝える。。。

毒を吐きすぎでしょうかね?<m(__)m>

もちろん、全員というわけではありませんので、全体的な傾向のお話ですよ。それでも、年々この傾向が加速している肌感覚があるのです。

インプットとかアウトプットとか、それほど仕事の本質に入らない場面であっても、これは同じ様相です。

たとえば、何か紙に記入してもらう場面があったとします。氏名の後に「ふりがな」を”カタカナ”で振ってくださいと口頭でお願いし、間違えないようにサンプルを載せていても、一定数の人が”ひらがな”で記述してきます。

たとえば、講義をZoomでやるとします。どの事業所から参加しているのか分かりやすくするために、表示名は名前の後に「都道府県名」をつけてくださいと指示を出すときがあります。

間違えがないように念には念を入れて、サンプル文を「例 : 大谷翔平@宮城」のように見せても、一定数の人は「大谷翔平@仙台市」と市町村の表記をしてきます。

う~ん・・・

想定されるのは、ちゃんと説明を聞くことも読むこともなく、「きっと、こうに違いない」と切り取り思考で勝手解釈のインプットをし、「迅速にアウトプットしなければいけない」と考え、切り取り思考のままアウトプットするからミスが起きるのでしょう。

そんな細かいところは見逃してやれよ!と、僕にツッコミが入るかもしれませんね。

もちろん、この事例では些細なことなので致命傷には至りません。しかし、このレベルのことも確実にできずに、「イノベーションを起こそう!」などと鼻息を荒くしても、それ以前の部分でコケると思うんですよね。

だから、些細なことほど大切にした方がいいと思うのです。神は細部に宿りますから。

先日、ある講義の中で以下のようなクイズを出してみました。

あなたも考えてみてくださいね。ただ3秒以内に回答を出してください。

タロウは34歳。知的だが細かい点にこだわる傾向あり。また活発な人間という印象は与えない。学校では数学が得意だったが、社会科や人文系科目は苦手だった。
ーー それでは、次のABCのうち、タロウに当てはまる可能性が高いのはどれ?【3秒で挙手してください】

A : システムエンジニア(SE)
B : ゲームが趣味の人
C : ゲームが趣味のSE

『遅考術』 (植原亮著・ダイヤモンド社刊)P.64より引用

その答えは・・・

・・・

・・・

・・・

・・・

「B : ゲームが趣味の人」です。

理由はシンプルで、ゲームが趣味の人が人口の母数が最も多いので、確率から言ってBの可能性が一番高いからです。

ゲームが趣味の人より、SEの人口の方が少ないことでしょう。ゲームが趣味でなおかつSEの人はさらに数が絞られます。

したがって、Bが正解となります。

※ちなみに、この問題文が紹介されている引用元の本はとってもオススメですよ!

ところが、40名ほどの受講生に挙手で回答を求めたところ、A~Cまで3つに意見が完全に割れたのです。

B以外の人にAやCを回答した理由を聞くと、人物像のイメージにピッタリくるのが、なんとなくAかCに思えたからとのこと。

分かります!分かりますよ!そのお気持ち。

もしかしたら、人口の母数という切り口で冷静に考えれば本質が見えたかもしれないのに、イメージに引っ張られてしまうという感覚。

つまり、実際はどうなのだろうか?といくつかの要因や変数を熟慮しながら答えを導かずに、断片的な情報を切り取ってイメージだけで反応し答えを導き出したということでしょう。

すばやく答えを導き出したという点では褒められるのかもしれませんが、じっくりと冷静に考えれば、切り取り思考が発動することもなかったのではないでしょうか?

このように、スピーディーに物事をインプット&アウトプットしているつもりでも、表面上をなぞって切り取り思考で物事に向き合っているだけ。

言い方を変えれば、反射神経で”反応しているだけ”の思考パターンは、ミスも多く本質に迫れない危険性があるというわけです。

そこで、僕自身も痛感する教訓は、「ファーストシンキング(First thinking)」ではなく、「スローシンキング(Slow thinking)」も大切にしませんか?ということです。

スローとは”遅く”というニュアンスよりも、僕の解釈では”冷静に思考を整理して熟慮する”というニュアンスです。

スピードが最優先に求められがちな社会にあって、スマホによる切り取り思考が加速すると、反射神経だけが異常に鍛えられてしまうかもしれませんが、これは諸刃の剣という他ないでしょう。

自分なりに本質を読み解き考えているつもりが、ただ”反応”しているだけで実は考えられていない結果を招くリスクがあるからです。

切り取り思考は、結果として付加価値も生み出さず、本質にも迫れないノイズを頭の中に増やすだけ。これでは、逆に成果を出す上で遠回りになるかもしれませんよ。

便利でスピードが求められる時代ほど、逆にひと手間かけて”遅く”考える思考パターンを持つことの方が、付加価値を生み出すことになるのではないでしょうか?

速さも大事だけど、遅くとも整理して熟慮する姿勢が大事!というわけです。

おしまい。

さて、今回の内容は
いかがだったでしょうか?

少しでもお役に立てば幸いです。

それでは、また会いましょう!

著者・思考の整理家® 鈴木 進介

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