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片づけで人生が変わるのは「片づけた後、脳の『ぼんやりモード』が活性化し人生を軌道修正するから」説

今回も「片づけ」と「人生」の結びつきを解き明かすシリーズ。両者には「つながり」があるようだが、明確に説明するのが難しい。そこにミッシングリンクがある。その「見えないつながり」を探る。

今回は、部屋が片づくことで時間と空間、そして心に余裕ができ、ぼんやりすることで働きだす脳内の「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」の「人生軌道修正」作用によって人生が変わる説をご紹介。

1.デフォルト・モード・ネットワークとは?

デフォルト・モード・ネットワーク(以下「DMN」)とは、ワシントン大学のM・E・レイクル教授が発見したもので、ぼんやりした状態の脳の神経回路のことである。

面白いのは、「ぼんやりした状態」や「行動が自動化し、頭を使わない状態」の時に活発に動くこと。

この「ぼんやりした状態」で動くDMNの役割は「情報の整理」。五感から集めた情報をDMNが整理して、言葉や行動に出力する。

さて、私たちが仕事で息つく間もなく働くと、DMNの働きが低下し、脳内で情報があふれ、散らかり、整理できないので情報が定着しづらくなる。

逆に、ぼんやりし過ぎるとDMNが活性化し過ぎて注意力散漫となり、余計なことまで考え不安になる。脳の中で最もエネルギーを使う場所なので、疲れを感じやすくなる。

だから、ぼんやりする時間が「ない」のも「あり過ぎる」のもDMNにとってはよくない。

適度にぼんやりできる時間があると、DMNが正常に働き、情報が整理され、蓄えられた情報が結びつきやすくなり「新しいアイデア」が生まれる。

2.DMNで人生が変わる

精神科医・医学博士の西多昌規さんの「ぼんやり脳!」には、上記で見てきたDMNの働きが分かりやすく紹介されているが、その中に人生を変えることに関係しているものを発見した。それらが、こちら。

❶ひらめきやアイデアが生まれやすくなる
❷記憶力などの能力アップ
❸いまの自分が「やるべきこと」がわかる
❹人生や生活の軌道修正ができる

引用

上記の❶~❹を「人生が変わる」という観点で見ると、❶と❷は「能力が上がって人生が変わる」パターン。❸と❹は、「今の自分が集中して取り組むことが明確になったり、自分の人生の方向性が変わったりして人生が変わる」パターンである。能力向上と軌道修正は、どちらも人生が変わるパターンとしてはあり得る。

❶についてDMNは、「次の活動」をシミュレーションする機能もあり、散らばっている情報から必要な情報を選び、分析や統合が行われ、「次の活動」への対応を無意識に検討しているうちに解決策がひらめくようである。

❸と❹については、DMNには「自分を点検して内省を促す働き」がある。それは、「自分がどんな人間であるか」という自己認識、「自分がいまどこで何をやっているのか」という見当識からなる。

これらによって、自分の基本情報を振り返り、自分自身を点検する。西多さんは、DMNのことを「脳を基本状態に戻して、自分を立て直すためのシステム」と言う。

仕事ですごく忙しい時は「自分の心と人生」を置き去りにして働くことがあるが、時間ができたときに、ふと自分について考える。「自分の人生は、このままでいいのか?」「今の自分が本当にやりたいことは何か?」これらの問いが出てくるのは、DMNが活性化しているからではないか。

脳には、そのように考えるシステムが生まれたときからインストールされている。大事なのは、DMNが活性化する機会を作ること。

そこで次に大切なのは、本当に片づけによってDMNが活性化するのか?ということ。

3.片づけがDMNに影響を与える説

片づけによってDMNが活性化することが証明できれば、この説が正しいと言える。片づけがDMNに影響を与える仮説を2つ考えた。

(仮説1)
 片づけによってぼんやりできる時間と空間、そして心の余裕ができるためDMNが活性化する。

片づけによって部屋が快適になり、探し物をする時間、モノにかかわる時間、掃除をする時間などが少なくなり、時間に余裕ができる。空間についても、安心してぼんやりできる快適な空間ができる

この時間と空間、そして片づけが終わったという「心の余裕」によって、ぼんやりする時間が多くなり、DMNが活性化するというのが「仮説1」。

片づけた後、キレイになった部屋を眺めながら、ゆったりとした気持ちでコーヒーなどを飲んだ方は多いと思う。その時、脳内ではDMNが活発に動いている。

(仮説2)
 片づけた部屋が「美しい!」と感じ、DMNが活性化する。

仮説2は、マックス・プランク研究所の神経科学者のEdward Vesselさんの研究をベースにしている。

2012年、2013年の研究で、DMNは通常、ぼんやりしているときに活性化するもので、「何かをしているとき」や「外部の刺激」によって活性化することはないのだが、芸術作品が個人に対して感動を与えたときにDMNが活性化したことを発見した。

さらに、芸術作品に限らず建築物、自然の風景などの画像を被験者に見せたところ、画像の種類に関係なく、「画像に強く感動した場合」のみDMNが活性化したという。

よって、片づいた部屋を見て、「きれいになった!」「スッキリした!」と強く感動することで、DMNが活性化するのではないかと考える。これが、「仮説2」である。

4.まとめ

以上のように、片づけが「ぼんやりする時間」を増やし、「きれいになった!すっきりした!」と感動することで、脳内のデフォルト・モード・ネットワークが活性化する。活性化したDMNによって、ひらめきやアイデアが生まれ、人生の軌道修正が行われる。だから人生が変わるのである。

さて、「片づけ」と「人生」を考えていたら、脳の働きにまでたどり着いた。また、片づけて「ぼんやりする時間を作ること」や「感動するくらいきれいに片づけること」など「人生を変える片付けポイント」も見えてきた。

この記事を読んだ方には、この「片づけポイント」を意識した片づけを実践し、「人生が変わる」確率を上げてほしい。

あなたが「あなたの脳」を活性化し、「あなたの脳」があなたを助ける。

(参考文献)

・佐々木典士さんの以下の著作にもDMNについての記述があり、参考にさせていただきました。


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