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子育て内省日記14〜成し遂げる〜

年末の朝。寒さで布団から出るのを何度もためらった後、何とか起き上がる。家の中は慌ただしい。今日は娘の初めてのピアノ発表会。「ちゃんとした服着てね!」と妻に言われ、ピタッとしたビジネスカジュアルな服を選ぶ。窮屈で動きにくそう…。息子も襟のあるシャツを着て、着心地悪そうにしている。娘は自分で選んだドレスを着て、髪飾りをつけ上機嫌。これから人前で一人でピアノを演奏することを分かっているのか…心配になる。

娘は妻と先に家を出たので、後から息子を連れ発表会の会場に向かう。会場は思いのほか広く、階段席のため後部座席からも舞台がよく見える。娘は会場からの多くの視線を感じ、緊張して固まるのでは…不安が頭の中をよぎる。娘を探すと舞台袖の入り口にある椅子に座り、足をブラブラさせながらニコニコしている。これから人前で演奏するのを分かっているのか…さらに不安が増し、頭がクラクラする。

いよいよ娘の出番。ヒールのある靴を履き慣れているような自然な足の運びで、舞台中央に向かって歩いていく。中央で立ち止まり客席に向いて、笑顔で手を前で重ねてお辞儀。無事に舞台に出てきてくれたことに、ホッとする。

ピアノに手をのせ、1曲目を弾き始まる。本番までスムーズに弾けたことはなかったが、それでもゆっくりと丁寧に弾いていく。すると一瞬演奏が止まる。音のない時間をすごく長く感じる。記憶がとんだのかとドキっとしたが、娘は今までの演奏はなかったかのように、また初めから引き直す。

先生の助けを受けながら、娘は2曲目も弾き終えた。立ち上がり、堂々と改めてお礼。会場が温かい拍手で包まれる。よくやった!妻と息子も笑みが溢れ、舞台をあとにする娘を見守る。堂々とやり遂げた。安堵とともにこれまでの苦労を思い出す。

娘がピアノを習い始めて2年近くが経った。人見知りが強く、先生が交代する度に、レッスンに行くのを嫌がる娘の機嫌をとりながら、何とか通わせ続けた。今はレッスンの時間になる前に「もう行きたい!」と言うようになった。レッスン中はピアノを弾かずに遊んでいるように見えるが…。

会場の外で待っていると娘が走って出てきた。頭をなでながら、「よくできたね!」と声をかける。娘は演奏前と変わらず笑顔。記念に息子と並んで、写真を撮る。娘はニコニコしながらピース。なぜか息子は表情がかたい。なぜ君が緊張しているのか…。

その日の夕食でささやかなお祝いをした。息子も刺激をうけたのか、発表会に出たいと言い出して、突然ギターの練習を始める。息子の荒削りな演奏を聴き、和やかな雰囲気包まれながら、暖かい夜を過ごした。

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