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1日1時間のリハビリ効果。PT・OT・STはそれぞれFIMを何点上げる?

📖 文献情報 と 抄録和訳

入院リハビリテーションの機能向上における治療時間の影響を示すレトロスペクティブ研究

📕Roberts, Pamela S., et al. "Retrospective study demonstrating therapy time impact on inpatient rehabilitation functional gains." Disability and Rehabilitation 44.17 (2022): 4639-4647. https://doi.org/10.1080/09638288.2021.1912836
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🔑 Key points
🔹 入院リハビリテーションプログラムでは、あらゆるタイプの患者において、治療時間の増加は機能的な向上と関連していた。
🔹 理学療法を1日1時間追加すると、機能的自立度評価(functional independence measure, FIM)ポイントが7.55ポイント増加した。
🔹作業療法を1日1時間追加すると、FIMポイントが1.16ポイント増加した。
🔹機能的な変化に影響を与えるには、その強度と関連する活動を決定する必要があり、これはリハビリテーションの実践を形成する上で重要な意味を持つ。

[背景・目的] このレトロスペクティブな研究の目的は、入院リハビリテーション施設(inpatient rehabilitation facility, IRF)に入院した患者の入院リハビリテーション中の総治療時間と機能的自立の獲得との関連性を評価することである。

[方法] 本研究は、2012年1月1日から2013年12月31日までのカリフォルニア州の3つのIRFの全IRF患者を対象としたレトロスペクティブデザインを利用した。通常のルーチン医療およびリハビリテーションケアの一環として収集された患者データを使用し、人口統計学、医療変数、機能的アウトカムのデータを含む。

[結果] 3つのIRFから退院した患者は3212人で、2777人が作業療法と理学療法とともに言語聴覚療法を受けていた。すべてのタイプの患者において、治療時間の増加は機能的な向上の増加と関連していることが裏付けられた。

■ FIM合計点の療法別の効果
・機能的自立度測定(functional independence measure, FIM)利得の合計では,モデル内の他の変数で調整した場合(1日当たり1時間の療法施行)
・PT療法7.55 FIMポイントの増加と関連し(p < 0.001)
・OT療法1.16 FIMポイントの増加と関連していた(p = 0.045)
・ST療法:FIMゲインモデルに残らなかった。
■ STの効果の特徴
・STは認知FIMの増加と関連していた
・1日あたり1時間のST療法は1.597 FIMポイントの増加(p < 0.001)と関連していた

[結論] 本研究の結果は、入院リハビリテーションプログラムにおける治療時間と機能的利得に関する理解を深めるものであった。治療時間の合計と機能的利得の間には正の関係がある。今後、機能的な変化に影響を与えるためには、提供される治療活動の強度と関連性を決定する必要がある。このことは、今後のリハビリテーションの実践を形成する上で示唆に富んでいる。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

この研究の結果をみて、どう思った?
PTは「うぉーっ!」と感じただろう。
OT、STは「う〜ん・・・。」と感じただろう。
今回の研究が明らかにしたことは、『FIMという評価尺度に対する各療法貢献度の違い』だ。
その違いは、PT は最大貢献でき、OT/STは貢献できるものの、量的な配分は小さかった。
重要なことは、医療保険下における最大顧客である『国』はFIMをもってリハビリテーションの質を測っていることだ。
その定規に対して、貢献しやすいPT、貢献しにくいOT/ST。
だが、それはただ単に特性の違いを反映しているに過ぎず、優劣ではない。

例えば、100mの選手に100m走のタイムで効果を見ることは適切だろう。
だが、マラソンランナー、走り高跳びの選手が、100m走のタイムで質を測られたら、どう思う?
「う〜ん・・・。」と思うだろう。
松の価値を、枝の真っ直ぐ度合いで測られた日には、松にとっては冷や汗ものである。
「俺のよさは、枝がまっすぐでないところにあるんだが・・・。」と。

そして、評価指標は、ただ測るにあらず、創造の役割も果たしている。
「すでにそこにある不変の質を測るか、測らないか」だけの問題ではない。
しかるべき定規で測られることで、そこから生まれる質もある。
国語は0点で、数学が100点だった生徒が、そのテスト結果を見て、感じて、それから数学に没頭するような感じで。
光があたって、はじめて気づく色がある。
その全く逆のループも存在しうる。
たとえば、今回の研究結果を受けた病院経営者が、こう考えたらどうだろう。
・OT/STはFIMをあげない
・回復期病棟のリハの質はFIMで測られる
・だったらOT/STはいらない、PTを増やそう
考えた方がいいのは、「これって、患者さんにとっていいことですか?」ということ。
FIMには反映されにくいが、ミクロな日常生活における上肢や手指の使い方、福祉用具の処方は不要だろうか?
FIMには反映されにくいが、食形態が1つステップアップすることは、不要だろうか?
その定規の選択が、ある者を繁栄させ、あるものを衰退させているかもしれないのだ。

量の配分(今回でいえば質全体を示すFIMに対するPT/OT/STの貢献度)。
そこは、その定規を選択している『国の意図』と受け取ることができる。
以上の結果を受けて、それぞれに次の一歩が示唆されている気がする。
■ 国はリハの質を考えた時に、その意図するところと、定規がしっかりマッチしてるかを確認し続けること
■ PTは勝って兜の緒めよ。さらに力をつけると同時に、定規がまだ最適化されきっていない可能性も模索すること
■ OT/STは自らの最重要専門領域がしっかり測ることのできる定規が使用されているか、そしてこれが重要なのだが、全体に対しての量の配分は適当か?、をモニタリングすること。不適切なら、売り込む必要があるだろう。

誰もが天才だ。
しかし、魚の能力を木登りで測ての木ったら、
魚は一生、自分はだめだと信じて生きることになるだろう。

アインシュタイン

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